2019年12月31日火曜日

4メートルの絶滅巨大アカマンボウ ~ メガランプリス・ケエシ


■4メートルの絶滅巨大アカマンボウ ~ メガランプリス・ケエシ

今回はアカマンボウ (Lampris)。

まずは現世のアカマンボウを見ていきましょう。

うっすら赤みを帯びた金属光沢のシルバーボディに真紅のヒレがとても映えます。

シルエットはほぼ円形、左右に極端に扁平で名前の通りマンボウのような姿をしています。

しかしマンボウとはまったく異なるアカマンボウ目と呼ばれる種で、リュウグウノツカイアカナマダフリソデウオなどと同じ仲間です。

姿こそ違えど、上記の魚たちと配色はそっくりです。

よく目にするアカマンボウはせいぜい体長1メートル程度でしかありませんが、アカマンボウの最大種ランプリス・グッタトゥス (Lampris guttatus) は最大で2メートル、270キロにまで成長する巨大魚です。

生態は謎だらけでほとんど何も分かっていませんでしたが、最近の研究で魚類唯一、血液温度を一定に保つ機能を有していることが分かっています。

この機能のおかげで脳と目が体温より2度ほど高く保つことが可能であり、生息域の最大水深である水深500メートルの低水温においても脳と目を正常に機能させることができるといいます。

日本では利用されることはまだ少ないようですが、赤身部分は見た目だけでなく味もマグロそっくりなためネギトロに利用したり、切り身としてマンダイとして売られたりしているようです。

さてアカマンボウの絶滅種、メガランプリス・ケエシ (Megalampris keyesi) です。

メガランプリス (Megalampris)」という属名ですが、現世のアカマンボウの属名「ランプリス」に「メガ」をくっつけたもので「巨大なランプリス」の意です。

ちなみにランプリス自体は「ブリリアンス (鮮明)」の意です。

メガランプリス・ケエシは2600万年前の漸新世後期の地層から発見された魚類で、断片しか見つかっていないものの完全であれば驚愕の体長4メートルに達すると考えられています。

ただしまわりはもっとでかい魚がうようよの時代ですし、現在のアカマンボウの食性 (イカ、クラゲ等) から考えて、凶暴な魚だったとはとうてい考えられず、この大きさにして大型魚にやすやすと捕食されていたかもしれません。

ちなみにメガランプリスという属名は現在は無効になっており、この巨大魚の分類は実は不明なんですね。

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2019年12月30日月曜日

マジックマッシュルーム ~ ミナミシビレタケ


■マジックマッシュルーム ~ ミナミシビレタケ

笑顔は周りを幸せな気分にさせてくれます。


この笑顔の主はアメリカ、ペンシルバニア州出身のデイヴィッド・カルブ (David Kalb) 氏、41歳。

「ペンシルバニアのスマイル・コンテスト、40代の部で優勝」

自分が審査員であればカルブ氏に投票することを厭 (いと) いません、しかし違います。

宝くじで当たった?

違います。

結婚が決まった?

違います。

それとも、もしかしてお孫さんが生まれた?

違います。

すべて外れです。

実はこれ、マグショットです、そう逮捕時に撮影されるアレ。

「史上もっとも幸せそうなマグショット」といわれています。

注意しないんかい。

容疑は70鉢のマジックマッシュルームと麻薬器具の不法所持です。

マジックマッシュルームの影響か否かはわかりませんが、今から待ち受ける自分の境遇をまったく理解しているとは思えない屈託のない笑顔。

今回はこの流れでマジックマッシュルームの一種、ミナミシビレタケを紹介します。

マジックマッシュルームとは幻覚作用のあるシロシビン (Psilocybin) やシロシン (Psilocin) を含む毒キノコの総称で、英語圏ではシロシビン・マッシュルーム (Psilocybin mushroom) と呼ばれるのが一般的です。

ミナミシビレタケの学名シロシベ・クベンシス (Psilocybe cubensis) は属名が「細い頭 (thin head)」、種小名が発見されたキューバにちなみ「キューバから (coming from Cuba)」という意味をもちます。

ミナミシビレタケが含む幻覚成分は上記に挙げたシロシビン、シロシンとベオシスチン (Baeocystin)、ノルベオシスチン (Norbaeocystin) の4種でマジックマッシュルームの中でももっとも強い幻覚作用があるもののひとつといわれています。

ミナミシビレタケはアメリカ、中南米、東南アジア、オーストラリアと世界中に広く分布し、同種か亜種か分かりませんが日本でも沖縄にも自生します。

このキノコは自然下では特に牛の糞 (他に馬や水牛、象なども) を好みますが、栽培キットも販売されており堅牢で成長が早く (菌糸の培養から収穫までわずか1ヶ月半)、素人でも容易に栽培できてしまうことで問題化しています。

ミナミシビレタケに限らずマジックマッシュルームの摂取それ自体で命を落とすことはないといわれていますが、摂取後の幻覚作用により事故等を引き起こす事例が数多く報告されており、高所からの飛び降り等で間接的に命を落とす可能性は否定できません。

そもそもマジックマッシュルームの輸入・栽培・所持等は違法で、厳罰は免れません。

デイヴィッド・カルブ氏のような笑顔になりたい!な~んて理由でマジックマッシュルームに近づかないように。

(参照サイト)
101.54 WPDH

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2019年12月29日日曜日

酸素なしでも18分生きる ~ ハダカデバネズミ


■酸素なしでも18分生きる ~ ハダカデバネズミ

今回はそのキモカワの特異なルックス、露出系変質者を想起させる和名で人気のハダカデバネズミ (Heterocephalus glaber) です。

ハダカデバネズミは東アフリカに分布し、英名のネイキッド・モール・ラット (Naked mole-rat,「ハダカモグラネズミ」の意) からも分かるとおり地中性のネズミです。

その生態は見た目以上に圧倒的に特異です、いくつか見ていきましょう。

まずは哺乳類でありながら体温調節が出来ない変温動物という点です。

気温変化の小さい地下だからできる芸当ですが、地下といえど気温がまったく変化しないわけではありません、寒くなると毛皮を持たないかれらは集団で集まり身を寄せ合って暖を取ります。

狭い地下の一箇所に集団で集まったら酸欠が気になりますがそれついては後述。

また哺乳類でありながらアリやシロアリ、ハチのような女王を頂点とする真社会性を営む稀有な存在でもあります。

真社会性を営む哺乳類は本種とダマラランドデバネズミ (Fukomys damarensis) を置いて他に存在しません。

ハダカデバネズミは平均75匹ほど、最大約300匹でコロニーを形成し、女王ハダカデバネズミを頂点に、小型の個体はトンネル掘り・採餌 (さいじ) 業務を、大型個体はコロニーの防衛業務を担います。

体毛がないことによりしわくちゃの皮膚がむき出しで四肢や尾も貧弱、小さな目に出っ歯と、見た目こそ貧相この上ないですが、実際は不死身といえるほどとんでもない強靭な体質です。

まずはハダカデバネズミ、がんに耐性を持ち、がんにかかりません。

また老化に対しても耐性を持ち、女王ハダカデバネズミの平均寿命は17年、飼育下では32年というとんでもない記録を保持します。

同サイズの齧歯目の10倍以上の長命で、人間でいったら800歳の別な人類が存在しているようなものです。

ちなみに女王以外の個体寿命は2~3年程度です。

この老化に対する耐性ゆえ加齢に伴う死亡率の上昇もなく、寿命を全うするまで健康を保ち続けます。

そして数ある能力の中でも低酸素環境に対しての能力は驚異的です。

集団で暖を取る際に酸欠が気になりますが、酸素濃度0%の状態で最大18分耐え (気を失います)、しかも後遺症なしで復活するほどタフなため少々の酸欠などものともしません。

ちなみに酸素濃度5%もあれば4時間も生存可能です。

また毛皮のない皮膚は弱々しく見えますが、皮神経に神経伝達物質を持たないことから痛みに対しても耐性があります。

これほどの不死身体質を備えるハダカデバネズミは哺乳類界のクマムシといってもいいでしょう。

(クマムシに関してはこちらの記事をどうぞ)

ただし、この不死身さは驚くほど「健康」という意味で、決して「喧嘩が強い」というわけではないので普通にヘビや猛禽類に捕食されてしまいます。

さて夢のような健康長寿を続けるハダカデバネズミ、古来より不老長寿を夢見る人類が興味を示さないはずがありません。

その秘密を探るべく、地中から引きずり出され実験室に送り込まれるハダカデバネズミたち、不死身といえど人類の暴挙にはなす術ありません。

(参照サイト)

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2019年12月28日土曜日

殺人猛毒伝説は本当か? ~ セアカゴケグモ


■猛毒伝説は本当か? ~ セアカゴケグモ

独りの女性がひどく落ち込んだ様子で公演のベンチに座っています。

少しやつれてはいますが目鼻立ちの整った若く美しい女性です。

心配になり思い切って話しかけてみると、つい先日結婚したばかりなのに旦那さんに先立たれてしまったというのです。

それは落ち込むはずです。

おそるおそる旦那さんの身になにが起きたのか尋ねてみると、空腹のあまりついつい殺して食べてしまったというのです。

さて今回はセアカゴケグモ (Latrodectus hasseltii)。

ヒアリに続けとばかり、猛毒の外来種でマスコミがバンバン取り上げたおかげで一般的にもかなり浸透しました。

タランチュラコモリグモの記事でも少し触れましたが、セアカゴケグモという和名はこのクモの英名レッドバック・ウィドウ・スパイダー (Redback widow spider) を直訳したもので、「旦那さんに先立たれてしまった背中の赤いクモ」の意味です。

ちなみに英語圏では単にレッドバック・スパイダー (Redback spider) と呼ばれるほうが一般的です。

セアカゴケグモの「ゴケ」とは差別用語 (不適切用語)に指定されている「後家」さんのこと、つまり「旦那さんに先立たれてしまった女性」のことです。

この名はセアカゴケグモのメスが交尾後にオスを食べてしまい、自己責で「後家」さんになってしまうことに由来します。

メスは体長1センチほどありますが、オスはわずか3ミリ程度しかなく襲われたらひとたまりもありません。

ただし、伝えられるほどメスに捕食される率は高くないといいます。

セアカゴケグモはオーストラリア原産の毒グモですが現在では世界中にその生息域を拡大しつつあり、日本各地でも繁殖が確認されています。

猛毒を有しており、特に日本では当初「咬まれれば死ぬ」ぐらいの勢いで報道されていましたが、本当でしょうか?

セアカゴケグモの毒はゴケグモ属 (ラトロデクトゥスLatrodectus) から見つかったα-ラトロトキシン (α-Latrotoxin) という神経毒です。

毒性がかなり強いのは本当で、セアカゴケグモに咬まれ実際に死亡した人も存在するといわれています。

しかし、セアカゴケグモのふるさと、オーストラリア本土では年間推定1万人ほど咬まれているものの、現在では血清も存在し死に至るほどの重篤な患者は出ていません。

(背中の赤い砂時計マークが特徴)

ちなみに北米原産のゴケグモの仲間、クロゴケグモ (Latrodectus mactans) はセアカゴケグモよりも遥かに危険で、血清が存在しなかった時代には60人以上の死者を出したといわれています。

しかしそれも1930年代以前の話で、現在では健康な成人が咬まれて命を落とすことはまずないといわれています。

クロゴケグモの特徴は背中の赤い砂時計マーク、セアカゴケグモより一回り大きく1.3センチほどに成長します。

クロゴケグモについてはそのうちいつか紹介するのでこの辺で。

セアカゴケグモクロゴケグモ共に現在では致死性の毒グモではありませんが、毒性が強い事実に揺るぎはなく、咬まれないよう気をつけるに超したことはありません。

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2019年12月27日金曜日

はりつけ専門!拷問植物 ~ ロリドゥラ


■はりつけ専門!拷問植物 ~ ロリドゥラ

ロリドゥラ (Roridula) は南アフリカ共和国のケープに自生する"半"食虫植物です。

ロリドゥラ・ゴルゴニアス (Roridula gorgonias) と ロリドゥラ・デンタタ (Roridula dentata) の2種のみ知られています。

細長い葉全体からびっしりと腺毛が生えており、この腺毛から属名の由来 (ラテン語で「結露」の意) にもなっている粘液を分泌します。

この腺毛、よく見ると3種類の長さ (ロング・ミディアム・ショート) があり、それぞれに役割があります。

何も知らずにこの葉の上に乗ってしまった昆虫は、まずは粘着性が弱い代わりにもっとも長い腺毛 (ロング) で自由を奪われ、ロングから逃れようともがけばもがくほど粘着力の高いミディアムとショートによって葉に固定されてしまいます。

(ロリドゥラに捕獲されたハエ)
(image credit by YouTube )

粘着力はかなり強く、ハエのような小型のものからスズメバチのような大型種まで捕らえることが出来ます。

ロリドゥラ・ゴルゴニアスゴルゴン・プラント (Gorgon plant) とも呼ばれ、おそらくこの種小名はギリシャ神話のゴルゴンから来ていると思われます。

これは粘着性の腺毛をゴルゴンのヘビの髪の毛に、昆虫を固定してしまう様 (さま) をゴルゴンが見たものを石化させてしまう様に例えたのではないかと思われます。

ちなみに昆虫が潤沢な場所ではひとつのロリドゥラに数え切れないほどの昆虫が貼り付いています。

ここまでだとよくある食虫植物で、特に同地域に生息する食虫植物アフリカナガバノモウセンゴケ (Drosera capensis) とまったく同じといっても過言ではありません。

(アフリカナガバノモウセンゴケについてはこちらの記事を参照ください)

しかし、ロリドゥラはアフリカナガバノモウセンゴケとまったく違う特性を持っています。

というのも、ロリドゥラにはこれら昆虫を直接分解して消化する能力がないからです (プロテアーゼをもたないため)。

捕らえたはいいが、さてここからどうするか?

この捕らえた昆虫たちを代わりに消化してくれるのが共生関係にあるカメムシパメリデア・ロリドゥレ (Pameridea roridulae) です。

(パメリデアの一種)
(image credit by YouTube )

パメリデアは体長はわずか数ミリ程度、からだも細く到底自分の力では捕まえることが出来ない自身の体よりも大きな昆虫たちをロリドゥラが固定しておいてくれるおかげで「ノーリスク」で「新鮮なまま」食べることが出来ます。

パメリデアはロリドゥラに代わって捕らえられた昆虫を食べ、ロリドゥラの葉の上で排泄します。

この排泄物の栄養をロリドゥラは葉から吸収するという仕掛けになっています。

アフリカナガバノモウセンゴケと拷問アリことアロメルス・デケマルティクラトゥスをミックスした感じです。

(拷問アリについてはこちらの記事を参照ください)

これがロリドゥラが半食虫植物と呼ばれるゆえんです。

それはそうと、パメリデアたちはロリドゥラの粘液にくっついてしまわないのか?という疑問があるでしょう。

パメリデアはロリドゥラの粘液に巻き込まれない油脂に覆われた特注の毛を足に生やしており、これのおかげで自身のクチクラ (外皮) とロリドゥラの粘液が直接触れない仕様になっているためロリドゥラ上を自由に歩き回ることが出来るというわけです。

(参照サイト)
Wikiwand

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