マンドラゴラ (mandragora) が神秘的たる所以は、その根 (根茎, こんけい) にあります。
人間の形をし、雌雄の区別まであるといわれるマンドラゴラの根茎には、不老不死をはじめとする人類垂涎 (すいぜん) の魔力が秘められていると信じられていたからです。
しかし、マンドラゴラの根茎を手に入れるには自分の命をかける覚悟が必要です。
それはなぜか?
というのも、マンドラゴラの毒はあまりに凄まじく、その茎に触れただけでも全身に毒が駆け巡り命を落としてしまうことになるからです。
運よくマンドラゴラを見つけたからといって容易に手出しは出来ない所以です。
それゆえマンドラゴラの採取には生贄が使われました。
生贄は罪人であったり、犬のような動物であったりしました。
犬を使って掘り出す場合は特に黒犬を好んで使ったといわれています。
生け贄に使われた人や動物は毒が回り死んでしまいますが、引き抜かれたマンドラゴラの根茎から毒はすっかり抜けきっており、マンドラゴラの根茎を手に入れようと企てた人物は、まんまと手に入れることが出来るのです。
しかし、罪人や犬がマンドラゴラを引き抜くのをただ見ていればいいというわけではありません。
というのも、マンドラゴラは地中から引き抜かれる際、断末魔にも似た大きな叫び声を上げるといわれており、この叫び声を聞いたものたちもまた、生け贄と同様、命を落とすといわれているからです。
そのため、まわりで見ている人々もこの叫び声を聞かぬよう、手で耳を覆う必要がありました。
このような信じがたい特性を兼ね備えたマンドラゴラ、一番驚くのはこのマンドラゴラが実在する植物ということではないでしょうか。
その特性だけでなく、名前も神秘的な響きを持つマンドラゴラは、英名マンドレイク (mandrake) の別称です。
さすがに上記のように「触れただけで死ぬ」「断末魔の叫び声をあげる」というのはフィクションです。
しかし、実在のマンドラゴラが非常に強い毒をもち、また、根茎が人間の手足のように枝分かれし、ときとして人間のような姿になるのもまた事実です。
マンドラゴラの毒は少量であれば麻薬と同じ効果を得られ、かつて麻酔として使用されていた時代もあったようです。
ただし、前述のように毒性が強く一歩間違えれば死に至るため、現在ではマンドラゴラを薬として使っている国はあまりないようです。
ちなみに、マンドラゴラの毒性分はアトロピン、スコポラミンで、アトロピン200ミリグラムが大人の致死量といわれています。
そしてマンドラゴラのもう一つの特徴、引き抜かれる際にあげる断末魔のような叫び声。
これはまったく根も葉もない話に聞こえますが、マンドラゴラの根茎からは細い根がたくさんに出ており、地中から引き抜く際にこの根がブチブチと切断される音が元となり、叫び声の逸話が誕生したのではないか、ともいわれています。
このように実在のマンドラゴラも伝説の魔力こそ秘めていないものの非常に興味深い植物であることは確かでしょう。
(関連記事)
■ 触れた者は痛みに耐えかね自殺する ~ ギンピ・ギンピ (ギンピー・ギンピー)
■ 史上最強生物?ライオンゴロシ
0 件のコメント:
コメントを投稿