ギリシャ神話に登場する、3つの頭を持つ冥界の番犬ケルベロス (Kerberos)。
猛毒植物トリカブト (Aconitum) を地上にもたらしたのはケルベロスだという伝説があります。
そんなケルベロスの名を学名に冠した植物が存在します、ケルベラ・オドラム (オドラン) (Cerbera odollam) です。
ケルベラは和名をオオミフクラギといい、英語でスーサイド・ツリー (suicide tree)、つまり「自殺の木」とも呼ばれる猛毒植物です。
(ケルベロスと戦うヘラクレス)
茎も葉も実も全身毒まみれといわれるケルベラですが、特に毒性が強いのは実の中に潜む種子です。
この種子にはケルベリン (cerberin) と呼ばれる毒が含まれており、致死量はイヌで1.8mg / kg、ネコで3.1mg / kgといわれ、種ひとつで人間も十分殺せる量を含有しているといわれています。
以前に紹介したギンピ・ギンピ (ギンピー・ギンピー) も「スーサイド・プラント (suicide plant)、つまり「自殺植物」という物騒な別称を持ちます。
これはギンピ・ギンピの毒に冒された人があまりの苦痛から自殺してしまったことに由来します。
こちらはつまり自殺「させる」植物の意です。
今回紹介するケルベラが「自殺の木」と呼ばれる所以は、この植物の毒を使い自殺する人が後を絶たないことからこう呼ばれます。
(ケルベラの巨大な種子)
ケルベラが自生するインドのケーララ州はインドの中でも自殺率が高く、1989~1999年の調査で、ケルベラによる自殺は分かっているだけで5000人を上回ります。
単純計算で毎年50人近い人、つまり週に1人はケルベラを使って自殺していることになります。
またかつてマダガスカルでは、魔女狩り等でいわゆる神明裁判 (「しんめいさいばん」trial by ordeal) にケルベラが使用されました。
罪人か否かの判断を「ケルベラの種」に委ねるというのです。
被告はケルベラの種を飲み込み助かれば無罪であり、有罪であれば刑をまたずに死が訪れます。
全弾装填された拳銃でロシアンルーレットをさせられるようなもので、毎年数千人がケルベラによる神明裁判で命を失ったといいます。
「自殺の木」とはいってもそれは人間の使いみち次第、ケルベラの種を砂糖やスパイスで味付けすれば容易にその味を偽装できるため、人を殺 (あや) めるためにも用いられるといいます。
「自殺の木」のまたの名は「マーダー・ツリー murder tree)」つまり「殺人の木」です。
(参照サイト)
WILD SINGAPORE
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10センチの種飲み込んだら死因は中毒じゃなくて窒息だと思うわ。しかし園芸屋で売ってるのねー!
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