2020年2月12日水曜日

イカがとんでもなく知能が高いことが判明してしまう


■イカは知能が高い

頭足類は非常に知能が高いと言われています。

頭足類にはタココウモリダコツツイカコウイカオウムガイ等が含まれますが、その中でもタコ、ツツイカの知能が高いと言われます。

にもかかわらず、思えば生きている姿が撮影される以前のダイオウイカ像はひどいものでした。

ダイオウイカのような巨大なイカはその巨体を持て余しきっと深海でぐったりとしているだけろう、マッコウクジラに襲われてもなすすべなく無抵抗にただ食べられているに決まっている、なんて説を平気で提唱する学者もいたぐらいです。

ただ生きているだけ、だらし無く、知的の「ち」の字も感じさせないダイオウイカ像です。

しかし実際に初めて生きているダイオウイカの撮影に成功すると、そこには活発に獲物を追いかける生き生きとしたダイオウイカの勇姿があり、上記の学者の説は全くもって的外れだったことが分かっています。

最近のニュースでもダイオウイカ (Architeuthis dux) のゲノム解析を行ったところ、100以上のプロトカドヘリン (protocadherin) 遺伝子が特定されましたが、プロトカドヘリンは複雑な脳神経を相互に接続するのに重要な役割を果たす遺伝子と考えられています。

プロトカドヘリンは同じく頭足類の中で超絶知的と考えられているタコのゲノム解析でも100以上発見されています。

つまりこれをもってダイオウイカも非常に知的なのではないか?と推測されるのです。

そんな折、さらにイカの知能が高いという仮説を補強する論文が発表されました。

今度はアオリイカを使い、MRIと染色技術で神経回路をマッピングしたところ、5億個以上のニューロンを持つことが分かったのです。

この数は犬に匹敵し、ネズミの2億個、ネコの2.5億個を遥かに凌ぐものです。

上記のプロトカドヘリンと同様、その数が多い=知的とはなりませんが、少なくともポテンシャルは凄まじいものがあります。

ちなみに頭足類以外の軟体動物 (巻貝や二枚貝等) のニューロンは2万程度だそうで、頭足類のニューロンの数は「異常」といえます。

この知能に関してさらに興味深いのが「楽しみをあとにとっておく」という嗜好です。

実験に使われたのは29杯のヨーロッパコウイカ (Sepia officinalis)。

彼らの食の好みを調べるため、用意されたエサは次の5種類、ゴーストシュリンプ (Palaemonetes paludosus)、ヨーロッパエビジャコ (Crangon crangon)、ヒメハマトビムシ (Platorchestia platensis)、ヨーロッパミドリガニ (Carcinus maenas)、イソガニ (Hemigrapsus sanguineus)。(前者3種をエビ、後者2種をカニと便宜上分類しているようです)

まずはイカから等距離に2種のエサを投下し、いずれか1つを選択させる方法により、それぞれのイカたちがどのエサを好むのかを調べました。

5日間に渡って実験した結果、全員エビ好きということが判明、ここが大事です、かれらはエビが大好物なんです。

実験の詳細を事細かに書くと長くなるので要点だけ書きますが (実験の詳細を知りたい方はこちらをどうぞ)、イカたちを2つのグループに分け、一方は昼間にカニを食べさせ、夜の決まった時間に大好物のエビを、もう一方は昼間にエビを与えるのは同じでも、エビの投下時間を乱数で決め、つまり毎日異なる時間に与えてみたのです。

どうなったのか?

エビがいつ投下されるかわからないグループは投下されたカニを腹いっぱいなるまで食べます。

ま、野生の生き物ですし当然です、食えるときに食っておかないといけませんからね。

しかし夜の決まった時間に大好物が貰えると学習したイカのグループは昼間に食べるカニの量を減らし、大好物のエビが食べられるようお腹に空きをつくることが分かったのです。

それでは各グループのエビ投下時間をまったく逆にするとどうなるか?

つまり決まった時間にエビもらっていたグループにはランダムに、ランダムにもらっていたグループには決まった時間にエビを投下するのです。

エビの投下時間が不確実でカニを腹いっぱい食べていたグループはカニの食べる量を大幅に減らし、エビの投下時間が決まっておりカニの食べる量を調整していたグループはカニの食べる量を徐々に増やしていきました。

つまり各々のグループは柔軟に採餌パターンを変化させたことが分かります、いずれも後の楽しみのために腹八分目で我慢するようになっていくのです。

確実に後で美味いものが食えると記憶しており、昼間に食事をセーブして腹一杯にしないなんてまるで人間のようです。

(参照サイト)
Science Daily
FINDERS
THE ROYAL SOCIETY

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