インドネシアのリンチャ島 (Rinca) には、全身がウロコで覆われた「馬ほど」もあるヴェオ (Veo) と呼ばれるUMA (未確認生物) の目撃情報があります。
その姿は巨大なセンザンコウやアリクイに似ているといわれています。
空腹になると山から下りて来るもののヴェオはアリやシロアリを食べる大人しい性質ため、人々はヴェオを恐れないといいます。
と、この時点でヴェオの特徴は大きさを除けばセンザンコウそのものです。
センザンコウはアジアやアフリカに生息し、その姿は「鎧を身にまとったアリクイ」といった感じの生物です。
ヴェオの問題はその大きさで、「馬ほど」という表現がイマイチはっきりしないのですが、おそらく体長が2メートル以上という意味ではなく、ボリューム的に馬を思わせるほど大きいということでしょう。
中央・西アフリカに生息する現世種最大のオオセンザンコウ (Smutsia gigantea) は最大体長2メートル、体重33キロに達しますが、体高は低く体長の半分は尾であるため決して「馬ほど」と表現されるような生物ではありません。。
さらに、東南アジアに生息するセンザンコウは1メートルを超す程度でこれほど大きくなりません。
日本で動物園から逃げ出した場合、見慣れないだけに大騒ぎになりUMA化する可能性は十分考えられますが、リンチャ島には元々センザンコウが生息しており野生のセンザンコウを目撃しただけでUMA化する可能性はまずないでしょう。
UMAの正体として恐竜もしくはその時代の海生爬虫類が候補に挙げられるのが常ですが、たとえば鎧を身にまとい体型の似ているノドサウルスなどが候補に挙がってもおかしくないですがヴェオについてはそういったことはありません。
その代わり、ヴェオの正体として挙げられるのは、地理的に近所であるジャワ島などで化石が発見されている巨大センザンコウ、マニス・パレオジャバニカ (Manis paleojavanica) です。
マニス・パレオジャバニカは4万年以上前にアジアに生息していた巨大なセンザンコウで、英名はそのものずばりアジアン・ジャイアント・パンゴリン (Asian giant pangolin, 「アジアの巨大センザンコウ」の意) といいます。
体長はアジア現世種の2倍以上の体長2.4メートルほど、地元では見慣れたセンザンコウでもマニス・パレオジャバニカをもし目撃したら驚くこと間違いなしです。
ヴェオの正体として現実的なものとしてはUMAの特徴のひとつと、現存種のハイブリッド化が挙げられます。
UMAは複数の異なった生物の目撃情報が1つの生物として語られることにより体の部分部分が異なった生物で構成されてしまうことがあります。
もともとセンザンコウ、そしてコモドドラゴン (コモドオオトカゲ) が生息する地域であり、これらの2つ、つまり「センザンコウの外見」と「コモドドラゴンの大きさ」のハイブリッドです。
通常よりも大きめのセンザンコウを目撃したものと、その噂を耳にした住民が夜間などコモドドラゴンを巨大なセンザンコウと誤認することが融合されることによりヴェオは完成します。
とはいえ、ヴェオの目撃はここ何十年と更新されることもなく、目撃も完全に途絶えているようです。
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