2023年3月31日金曜日

南米ギアナに伝わる水棲の虎! (水虎) ~ マイポリナ


■南米ギアナに伝わる水虎 ~ マイポリナ

南米大陸北西部に位置するフランス領ギアナ、西はマロニ川 (Maroni) を隔てスリナムが、南はブラジル最北端のアマパー州 (Estado de Amapa) が隣接します。

このギアナとスリナムとの国境に位置するマロニ川にはマイポリナ (Maipolina) と呼ばれる奇妙な半水生の生物が目撃されます。

中南米のUMAもアフリカと同様、呼び名に混乱が生じており、同一の生物を目撃した先住民族たちの単に言語の相違から呼び名が違うだけなのか、実際別種を指しているのか定かでないものもいます。

マイポリナもまたそういった生物で、南米で目撃されるマイポリナとアイパ (Aypa)、それにヤカル (Yaquaru) とイエミシュ (Iemisch) はとても特徴が似ておりいずれも「水棲の哺乳類」系UMAと考えられています。

マイポリナ、アイパ、イエミシュはいずれもウォーター・タイガー (水虎) の一種と呼ばれますが、実際のところイエミシュとヤカルはトラというよりはカワウソに似ているといわれています。

(体長約2メートル、絶滅種の巨大カワウソ、シアモガレ・メリルトラ (Siamogale melilutra) )
(image credit by Mauricio Antón/Journla)

マイポリナもまた巨大なカワウソとも似ているといわれる場合もありますが、現在ではウォーター・タイガーと考えるほうが一般的なようです。

そういうわけで旧サイトでマイポリナを巨大なカワウソ系UMAとして紹介しましたが、今回はヤカルやイエミシュとの差別化を図るためウォーター・タイガーとして紹介します。

さて、マイポリナですが、さらに混乱させるようなことを敢えて書くと、このアマパー州近隣ですらポポケ (Popoké) やママディロ (Mamadilo)、それにウォーター・マザー (Water mother) なる別称が存在します。

あまりに複雑なので、取り敢えず、ここら辺は全く同一生物の別称と考えおきましょう。

マイポリナの体長は3メートル、「現生種のトラ」よりもはるかに大きく顕著な身体的特徴はその口から大きくはみ出た巨大な犬歯で、ウォーター・サーベル・タイガーと呼んだ方がむしろイメージしやすいかもしれません。

そしてもっとも謎な生態はトラでありながら水棲ということ。

1962年にマロニ川で起きた7歳の少年の溺死事件は遺体の損傷が激しく、また特異な傷跡を残していることから既知動物によるものとは考えにくく、地元ではマイポリナによるもの考えられているとか、、、

話を戻しましょう。

一般的にトラは森林に生息しており湿地帯にも棲息するものも存在しますが、さすがに水中をメインとしているものはいません。

更に悪いことにトラの多くはアジアに生息 (一部はロシア) し、アフリカ大陸、そして南北アメリカ大陸には棲息していません。

しかしご安心あれ、確かにトラは生息していませんが、マイポリナが「サーベルタイガー」に似ていることを思い出してください。

(スミロドン・ヴィエナ (Smilodon Vienna) の全身骨格)
(image credit by Wikicommons)

サーベルタイガーはむしろ南北アフリカが真骨頂、おそらくサーベルタイガーの中で最も有名と思われるスミロドン (Smilodon) は南北アメリカに生息していました。

体長は大きくても2メートルを超す程度ですが、そのサーベル状の巨大な犬歯を見れば圧倒されて実際よりも大きく感じてしまうのは致し方のないこと。

南米では今のところ発見されていませんが、サーベルタイガーのひとつマカイロドゥス (Machairodus) はサーベルタイガー随一の巨体を誇り、中国の龍家溝盆地で発見されたマカイロドゥス・ホリビリスMachairodus horribilis)はマイポリナほどの3メートルに達したといいわれています。

特徴も大きさも問題なし、マイポリナはサーベルタイガーで決まり!

問題はとっくに絶滅していることと、、、いやいやそれより水中で生活できるのかってことです。

(関連記事)







2023年3月30日木曜日

ヴァン湖の怪物 ~ ジャノ (ジャノアール)


■ヴァン湖の怪物 ~ ジャノ (ジャノアール)

さて今回は日本のUMA本でも大御所のヴァン湖の怪物 (Lake Van Monster / Van Gölü Canavarı)、ジャノです、UMAファンで知らない人はいないでしょう。

トルコ語からジャノアール (Canavarı) とも呼ばれますが、これは固有名詞ではなく単に怪物 (モンスター) の意です。

ヴァン湖 (Lake Van) はトルコ最大の湖で、驚くことに淡水ではなく塩湖 (塩水湖) です。

もともと実在するには敷居の高いUMAたちですが、その中でも塩湖のUMAはさらに敷居が高いですが見ていきましょう。

表面積は3755平方キロメートル (琵琶湖の約5.6倍)、平均水深171メートル、最大水深451メートル (琵琶湖104メートル) と大きいだけでなくとてつもなく深い湖でもあります。

この湖には古くから怪物が生息しているという民間伝承がありますが、なんと元になっているのはトルコではなく東の国境で隣り合う隣国アルメニアの神話です。

(この上なく美しいヴァン湖の夕暮れ)
(image credit by  Wikicommons)

もともとは神話らしくヴァン湖に生息しているのは「人を喰うドラゴン」のような存在でしたが、実際に目撃されるようになると生物らしくなっていきます。

巨大なレイク・モンスターとして語られ、日本のUMA本等で一般的にジャノの体長は15~20メートルぐらいといわれますが、海外サイトを見る限り大きさに関して具体的な数字を挙げられることは少ないようです。

やはりジャノもネッシー (Loch Ness monster) の影響を多大に受けているのでしょう、その姿は絶滅した海生爬虫類のプレシオサウルス (Plesiosaurus) やモササウルス (Mosasaurus)、それに加え絶滅した海生哺乳類としてゼウグロドン (Zeuglodon) ことバシロサウルス (Basilosaurus) 等に似ているもといわれています。

(バシロサウルス・ケトイデスBasilosaurus cetoides))

水棲UMAの正体として定番のものばかりですね。

クジラ (バシロサウルス) が候補に挙がっているのはその体型が似ている (細長い) ばかりでなく、潮を吹いている姿の目撃があったからと思われます。

但し、バシロサウルスは現生のクジラのように頭頂部ではなく目と鼻先 (吻) の中間ぐらいに噴気孔が位置しており、現生のクジラのように吹き上げられたかというと少々疑問です。

遅くとも19世紀末ごろから目撃情報はあるようですが、ジャノの目撃が増え始めたのは1980年代以降で、特に1997年、ヴァン大学 (Van University) の教育助手ウナル・コザック (Unal Kozak) 氏がジャノの動画撮影に成功、動画の公開により世界中からヴァン湖に注目が集まりました。

コザック氏の撮影したビデオは1分にも満たない短いものでしたが、水中 (ヴァン湖かどうか判断できない) から頭部付近 (と思われる一部) を水面から出したままゆっくりと泳ぐ生物の姿がはっきりと捉えられていました。(動画は本文最下部にあります)

水生生物にしてはあまり滑らかそうに見えないゴツゴツとし茶褐色の皮膚、窪みは目でしょうか、また頭部ほどはっきりはしていませんが、頭部後方の背中の一部も見えているようです。

コザック氏は全長は15メートルほどだったと証言しています。

その頭部から背中まで驚くほど直線的でまるで流木が浮いているように体全体の浮き沈みが連動しています。

「遊泳中のゾウ」なんじゃないか?という意見もありますが、さすがにそれはありそうもありません。

(遊泳中のゾウ)
(image credit by Wikicommons)

しかしこの動画でもっとも不自然と指摘されているのが「呼吸」です。

頭部前方からブクブクと泡が出ているのですが、これが絶え間なくずっと出続けているのです。

これが呼吸だとすれば大変不自然であり、それに加え生物としてのしなやかさの欠如、直線的な遊泳 (浮遊) 等、仕方ないことですがかなりフェイクを疑われている動画です。

とはいえ、コザック氏がフェイクを告白した事実はなく、あくまで「疑わしい」というだけです。

そして、そもそもとしてヴァン湖に巨大生物が生息することができるのか?という疑問を持つ人もいますが、その辺はどうでしょう?

というのも冒頭に紹介した通り、ヴァン湖は塩湖であり、しかも塩分濃度が濃いためめぼしい魚といえばコイ科のアルブルヌス・タリキ (Alburnus tarichi) ぐらいしか生息していないからです。

(image credit by Wikicommons)

どうでもいいことですが、UMA本でヴァン湖に生息するのはニシン科の魚との記載が散見されましたが、実際はどうもコイ科のようです。

アルブルヌス・タリキは塩水に適応しヴァン湖にしか生息していないトルコの、というかヴァン湖の固有種です。

ヴァン湖に生息する (確認できる) 魚類はこの一種のみというのはなんとも心許ないですが、アルブルヌス・タリキのみで漁業が成り立つほどのそれなりの漁獲量があり、まあエサとなるものもギリ存在すると考えていいでしょう。

まとめると、コザック氏の動画は怪しい、けど真偽は不明、塩湖でエサとなる魚は乏しいものの全くないというわけではなくそれなりにある、10メートルを超すような巨大生物は無理にしろ、2メートル程度のなんらかの巨大生物ぐらいなら生存できるかも?

こんな感じでしょうかw

(ケープコッドで撮影されたシーサーペントを想起させる魚影)
(image credit by The Charlette observer)


(関連記事)
 1922年、群衆が見た怪生物 ~ リムリック・シー・モンスター






 中国、洛陽で3メートルのレイク・モンスター撮影される





2023年3月29日水曜日

タスマニアタイガーはつい最近 (2000年代) まで生きていた可能性があるらしい

(最後のタスマニアタイガー、ベンジャミン)

■タスマニアタイガーはつい最近 (2000年代) まで生きていた可能性があるらしい

「野生の個体が生き残っていたとしてもそれはせいぜい1950年ごろまでだったでしょう。最後のタスマニアタイガーは森の中で人知れずひっそりと息を引き取ったのではないでしょうか。

タスマニア島では膨大な数のロードキル (轢死する野生動物) があり、その数は年間293,000匹ほどにもなります。

ですが、何十年もの間、ロードキルにタスマニアタイガーはただの一匹も含まれていないんですよ」


タスマニアタイガーの和名はフクロオオカミで稀に日本ではタスマニアオオカミとも呼ばれる場合もあります。

背中の縞模様を除けばタイガーというほど虎っぽくはなく、形態は犬 (オオカミ) に似ていますが、虎でもなければ犬でもなく、カンガルーやコアラと同じ有袋類です。

英語圏では日本同様タスマニアタイガーもしくはタスマニアウルフとも呼ばれますが、一般的にはその学名 (Thylacinus cynocephalus) からサイラシン (Thylacine) と呼ばれることが多いです。

タスマニア島は本土オーストラリアが大きすぎるため小さく見えますが、60,637平方キロメートルと想像するより大きいです。

北海道 (78,073平方キロメートル) ほどはありませんが、四国と九州を足した (55,294平方キロメートル) よりも大きいのです。

人口は50万人を超えるぐらい、北海道 (500万人超) の約1/10です。

ロードキルの数は人口に迫るほどで人口に対して随分と比率が高く、いかに多くの自然が残されているか分かります。

冒頭のコメントは、このサイトでも何度か引用しているものですが、オーストラリアのクイーンビクトリア美術館アートギャラリーの館長、デビッド・メイナード (David Maynard) さんがタスマニアタイガーが現在生存している可能性はあるか?という質問に対してのものです。

野生の個体は1930年に射殺されたのが最後、タスマニアの首都ホバートの動物園で生き残っていたベンジャミンが1936年に亡くなったのをもって絶滅したものと考えられています。

しかしそれ以後も毎年何十という目撃が報告されることからひょっとしてまだ生き残っているのでは?

こういった絶滅した (はずの) 生物が目撃されるのもUMAとして数えられますが、このタスマニアタイガーの絶滅は思っているよりもずっと後だったのではないかという研究結果が発表されました。

公式的には1936年に絶滅、しかし冒頭のメイナードさんのように1940~50年代までは少数ながら野生の小さな個体群が生き延びていた可能性を指摘する人も少なくありません。

このほどタスマニア大学の研究グループは科学ジャーナル誌、サイエンス・オブ・ザ・トータル・エンバイロメント (Science of The Total Environment) にサイラシンの絶滅時期についての新見解を発表しました。

グループは1910年から現在までの100年以上に及ぶ期間の政府の持つアーカイブ記録、公開レポート、新聞記事、博物館のコレクション、個人のコレクション、書籍等を隈なく調査し、信頼に足る1237件の目撃情報を集めました。

これらのデータを場所や日付、さらに目撃した人物が専門家であるか否か (つまり一般人) でさらに細かくデータベース化することにより目撃地点・目撃数を評価しそれらの収束値から絶滅場所や絶滅日を導き出しました。

この結果、それらの収束値は1999年と2008年の2つが出来上がり、研究グループの見解では1999年が可能性がより高いと判断しました。

これは特に1940~1999年の60年間は安定した目撃数が報告されていたものの、2000年以降は極端に数が減り、この時期から現在に至るまで携帯やスマートホンの普及によって、より写真に収めやすいにも関わらず目撃情報が減少していることを理由としているようです。

UMAの世界ならまだしも、一般的にはとっくの昔に絶滅したと考えられていたタスマニアタイガーが思っていたよりも60年先まで生き延びていたとしたらこれは驚愕の事実です。

1999年あたりといえばわずか20数年前、収束値のもう一つの山である2008年を採用すればわずか15年前、いずれにしてもつい最近まで人知れず生き延びていたなんていうのは夢があります。

そのぐらいまでもし本当に生き残っていたと考えるのであれば、それこそ小さな個体群がいまだにどこかで生き残っているかも?と期待したくなります。

(参照サイト)

(関連記事)



2023年3月28日火曜日

モケーレ・ムベンベの従兄弟? ~ ジャゴ・ニニ


■モケーレ・ムベンベの従兄弟? ~ ジャゴ・ニニ

今回はアフリカの恐竜系UMA、ジャゴ・ニニです。

ジャゴ・ニニは大西洋に面した中部アフリカのガボン共和国に伝わるUMAで、一般的にはコンゴ共和国で目撃されるモケーレ・ムベンベと同一視される傾向があり、同国で目撃されるニャマラ (N'yamala)と同じとする説もあります。

ガボンは東はコンゴ共和国、北はカメルーン共和国と接しており、UMAは国境を理解して棲み分けているわけではありませんから、複数国に渡って同一のUMAが目撃されることは不思議ではありません。

モケーレ・ムベンベ (Mokele-mbembe) がリンガラ語 (Lingala) で「川の流れを堰き止めるもの (one who stops the flow of rivers)」を意味し水中に入るこが示唆されますが、ジャゴ・ニニ (Jago-Nini) もまたプヌ語 (Punu) で「水に潜る巨大なもの (Giant diver)」を意味します。

その姿はやや漠然としており、単に「恐竜」的 (竜脚類) であったり「恐竜に似た大型爬虫類」であったりします。

象牙商人のアルフレッド・アロイシャス・スミス (Alfred Aloysius Smith) 氏が著書「トレーダー・ホーン (Trader Horn)」に記したことでジャゴ・ニニが西洋に広く知られるなりました。

ジャゴ・ニニは人間にとってアンフレンドリーな存在であり、人間をそして人間よりはるかに大きなマナティーを捕えて食べるといいます。

半水棲 (沼や川) と思われるこの生物は19世紀末ごろより目撃されており、おそらくは待ち伏せ型なのか水中で息を殺し獲物である人間を含めた生物が水辺近くに現れるのを待ちます。

決して敏捷とはいえないものの巨体のマナティーを捕えて食べるというのだから人間など造作もないでしょう。

せっかくマナティーが登場したので少し触れましょう。

(アフリカマナティ―)
(image credit by Wikicommons / Public Domain)

アフリカでみられる世界で3種いるマナティーの中のアフリカマナティ― (Trichechus senegalensis) です。

アフリカマナティ―は西アフリカの河川および西海岸沿いに生息し、ジャゴ・ニニの故郷、ガボン共和国にももちろん生息しています。

マナティーの最大種はアメリカマナティー (Trichechus manatus) で、最大の個体は体長4.6メートル、1655キロというとんでもない記録があります。

アフリカマナティ―はアメリカマナティーの次に大きくなる種で、最大の個体はアメリカマナティーに引けを取らない4.5メートルという記録があります。

通常は大きくても3メートル前後、550キロぐらいなので上記の個体はとんでもない大きさということがわかるでしょう。

さてジャゴ・ニニに話を戻しましょう。

と言っても、残念なことにここ最近はその目撃したという話は皆無のようです。

アフリカに多い獣脚類系UMAで恐竜の生き残りと考えるのはいささか無理がありますが、同系のニャマラは最近になっても目撃はありますし、まだまだ期待できるUMAです。

(関連記事)