このブログを検索

2024年7月31日水曜日

マダガスカルの殺人スカンク ~ ブーキーブーキー (ボキボキ)

 


■マダガスカルの殺人スカンク ~ ブーキーブーキー (ボキボキ)

今回は不思議の島、マダガスカルの西部、特にキリンディ・ミテア国立公園 (Kirindy Mitea National Park) を中心に棲息するといわれるUMA、ブーキーブーキー (Bokyboky)。

これはマダガスカル語であり、このスペルにしてボキボキではなくブーキーブーキーと発音するのが正しいようです。

この生物の姿はジャコウネコに似ているといいますが、習性はスカンクに似ており、肛門腺から強烈な悪臭を放つといいます。

大きく異なる点はこの悪臭で狩りをするという点です。

スカンクの悪臭はあくまでディフェンス専用で狩りには利用しません。

そもそも、通常は白黒の警告色でスカンクを襲おうとする生物はいませんが、それを無視して襲って来たとしても、鳴いて威嚇したり爪で応酬したりと実はなかなかあの必殺技は出しません。

5~6回分のスプレーを携帯しているものの、枯渇すると再生に10日もかかり、その間は無防備になってしまうためどうしてもという場合以外使いたくないのです。

無敵に思えそうですが実は天敵もいます。

そもそも襲われることを想定していないため視力は驚くほど弱くわずか3メートル先も見えず、更に臭いに鈍感な猛禽類に対しては全く効果がありません。

結果として、猛禽類が頭上から急襲してくるのに視覚では気付けず、捕まった瞬間に毒ガスを噴出しても効果がないためあっさりと狩られてしまいます。

特にアメリカワシミミズク (Bubo virginianus) はスカンクを常食とするほどで大の苦手としています。

また前述の通り、視力の弱さが災いしてロードキル (車に轢かれること) の多い動物としても知られています。

さて今回のブーキーブーキー、スペルこそ違うものの、実はマダガスカル固有のマングース、ホソスジマングース (Mungotictis decemlineata) もブーキーブーキー (bokiboky) と呼ばれ、生息域もマダガスカル南西部と重なっています。

UMAじゃないじゃん、とお思いでしょう。

確かに呼ばれ方こそ実質同じですが、UMAのブーキーブーキーとマングースのブーキーブーキーは身体的特徴や習性が異なり、かといってUMAの方に特にスーパーナチュラルな力が備わっているわけでもないことから、ホソスジマングースと異なる種が存在するのではないかと期待されています。

正式な名称でない場合、似たような姿の生物を区別せずに同じ名で呼ぶことは多々あることなので、十分可能性はありそうです。

体長は犬ほどでジャコウネコに似ているものの体はもう少しふっくらとしており長いフサフサの尾を持ちます。

体に黒い斑点があり、もっとも顕著な身体的特徴は縞模様のある鬣 (たてがみ) をもつことだといいます。

目撃情報が少なく詳しくは分かっていないものの、穴の中にいる生物のみを狩りの対象としているといいます。

巣穴に獲物が逃げると入り口を尾で塞ぎ、スカンクのような強烈な悪臭を肛門腺から分泌し獲物を殺すか気絶させて狩ると考えられており、これが本当であれば悪臭で狩りをする初めての動物ということになりますが果たして存在しているのか?

もうひとつ考えられるのは実際にその生物がスカンクの仲間であるということ。

スカンク科はほぼそのすべてが南北アメリカ大陸、一部が東南アジアに棲息しているのみでマダガスカルを含むアフリカには生息していません。

滅多に目撃されないブーキーブーキーであり、その悪臭を放つ習性を知った目撃者が、きっとその匂いで生物を狩るに違いない、と考えたのかもしれません。

いずれにしても新種であることには間違いありません。

(参照サイト)











2024年7月30日火曜日

ゾンビ化の犠牲者ばかりではない!戦うイモムシ ~ ハエトリナミシャク


■ゾンビ化の犠牲者ばかりではない!戦うイモムシ ~ ハエトリナミシャク

寄生バチや寄生バエによるイモムシへの寄生は凄惨なものが多いです。

体に卵を産み付けられたら一巻の終わり。

孵化した幼虫たちに体を体内から貪り食われるうえ、それどころかマインドコントロール (いわゆるゾンビ化) によりに死ぬまで寄生虫たちを守ろうとする姿は健気というか悲哀の極みというか。

チョウやガは成虫になれば翼を持ち捕食者からも逃げ回ることができますが、如何せんイモムシのときは草木の上を這いずり回るだけ、平和に草を食んでいるだけなので簡単に寄生されてしまいます。

弱いイモムシたちは擬態や毒を持つことでなんとか天敵の目から逃れようとします。

今回はやられてばっかのそんなイモムシ業界において異端児であるハエトリナミシャクを紹介しましょう。

カバナミシャク属 (エウピテシア,Eupithecia) は23,000種知られる (おそらくもっと多い) シャクガの仲間 (Geometridae) の最大のグループで世界で1,400種以上も知られています。

成虫は大きくても翼開長は3センチ程度、小柄で地味なものも多く、シャクガのコレクターでもない限り、あまり一般人の人目を惹く存在ではありません。

その99%は幼虫時代、花や種、そして葉といったイモムシと聞いてみんなが思い描く植食性、なんの不思議さも持ち合わせていない昆虫です。

ところがその例外のほんの僅かな4~5種 (?)、すべてハワイ諸島に生息するのですが、かれらは完全な肉食です。

ハエトリナミシャクの中で特に有名なものにエウピテシア・オリクロリス (Eupithecia orichloris) がいます。

幼虫の見た目はシャクガの仲間なので体型は細長く体長は2.5センチ程度、いわゆる日本語で「シャクトリムシ (尺取り虫)」と呼ばれる由来となった、体をアーチ状に曲げながら前進する独特な動きをする点も他のシャクガの幼虫と変わりません。

しかし彼らは他のシャクガの仲間とは全く異なる生態で、草の茎や葉、細い枯れ枝に擬態し、獲物が近づくのを待ちます。

(植物の茎だと思って通り過ぎようとしたら)

(背中がスイッチなので瞬殺)

(あとはゆっくりと生きたまま食べられるだけ)

(image credit by Nature on PBS)

背中の剛毛がトリガーとなっており、獲物が背中の剛毛に触れ刺激が伝わると0.1秒以下 (1/12秒) の超高速で3対の爪 (棘) のある胸脚でかっちりつ掴まえます。

獲物は小柄な昆虫、ハエ、コオロギ、クモ等で、ハチも捕食する可能性もあるといいます、というか背中の剛毛がトリガーなので自動でイッてしまうだけかもしれませんが。

振り向いたらとんでもなくでかいヤツが立っていて、返り討ちに遭うこともあるかもしれません。

視覚に頼らないため、光の全くない夜間でも狩りができる極めて有能なハンターです。

ハエトリナミシャクの爪は鋭く、昆虫の外骨格を突き破ることができるため取り押さえられると体格差が無い限り決して逃れることはできません。

ハワイ諸島においてハエトリナミシャクはその捕食方法から他地域のカマキリのニッチ (生態的地位) を占めていたともいわれますが、現在はハワイでもカマキリがいるようでこの先肉食性のハエトリナミシャクはどうなるでしょう?








2024年7月29日月曜日

著名な鳥類学者が目撃した幻の猛禽 ~ ワシントン・イーグル


■著名な鳥類学者が目撃した幻の猛禽 ~ ワシントン・イーグル

リョコウバトの記事で軽く触れたことのある画家にして鳥類学者、博物学者のジョン・ジェームズ・オーデュボン (John James Audubon)。

野鳥が好きだったことが影響しているのか自然を愛し、フロンティアスピリットなる言葉で自分ら移民たちがアメリカの大自然を破壊し、先住民族を虐げることに憂いを感じていた稀有な人物です。

さて、1826年に発表された彼の最も有名な著書「アメリカの鳥類 (The Birds of America)」で紹介される435羽の一羽にワシントン・イーグル (Falco washingtonii) なる鷲が登場します。

(オーデュボンの描いたワシントン・イーグルの挿絵)
(image credit by Wikicommons / Public Domain)

オーデュボン氏は五大湖周辺で4度この鷲を目撃したといい、体長4フィート7インチ (約1.4メートル)、翼開長10フィート2インチ (約3.1メートル) と本には記されており、北米で知られているいかなる鷲よりも大きかったといいます。

しかし学名まで記載しているものの、この鷲はオーデュボン氏以外、現在まで誰の目にも触れたことがなく現在は無効とされている幻の鳥です。

属名「Falco」はハヤブサ属、種小名の「washingtonii」はアメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントン (George Washington) への献名です。

その理由をオーデュボン氏はこう述べています。

「この鳥の名に、祖国の救世主であり永遠に愛されるであろう高貴な人物の名を冠することが許されると信じております。

なぜなら、新しい世界はわたしに誕生と自由をもたらし、この独立を保証した偉大な人物はいつもわたしの心に寄り添っているからです。

この鷲のように彼は勇敢で、敵軍にとっては恐怖の的であり続けました。

彼の名声はアメリカの隅々までいきわたりました、それは羽を持つ種族の中で最も強者で威風堂々としたこの鷲の飛翔そのものです。

アメリカという国がワシントン大統領を誇りに思う理由があるのであれば、同様にこの偉大な鷲を誇りに思う理由があるでしょう」

鷲の説明というよりワシントン大統領への賛辞が止まりません。

オーデュボン氏はその画家としての才能も鳥類学者としての実力も高く評価されている人物ですが、このワシントン・イーグルに関してだけはあまり評判がよくありません。

発売当初は広く信じられていたものの、その後全く目撃情報がないからで、既知の鳥、ハクトウワシ (Haliaeetus leucocephalus) の幼鳥を誤認したか、本を売るために捏造して紛れ込ませたんじゃないか説もあります。

しかし、あまりに希少な種のため現在まで目撃がないだけ、もしくは当時 (19世紀初頭) すでに絶滅寸前にあり、現在では絶滅してしまった幻の鷲という説もあります。








2024年7月28日日曜日

19世紀まで目撃が続いたマダガスカルの巨鳥 ~ ヴォロンパトラ


■マダガスカルの巨鳥 ~ ヴォロンパトラ

今回はヴォロンパトラ (ボロンパトラ, ヴォロムパトラ, Vorompatra)。

マダガスカルで目撃される飛べない巨鳥系のUMAです。

マダガスカルの巨鳥系のUMAといえばロック鳥 (Roc) が有名ですが、こちらは飛翔系、しかも完全な民間伝承上の生物で目撃があったわけではなく、実在する (した) 生物とは考えられていません。

ヴォロンパトラはマダガスカル語で「沼地の鳥 (巨鳥)」を意味し、その名の通り湿地帯での目撃が多い巨鳥です。

フランス人入植者が母国に伝えたことでその存在が知れ渡り、特に17~19世紀半ばぐらいまで目撃があり、「ヴォロンパトラの卵」と伝えられる巨大な卵も報告されています。。

現在でも少ないながら目撃情報が続いているといいます。

(エピオルニスの全身骨格)
(original image credit by Wikicommons)

マダガスカルには巨大な走鳥類 (平胸類)、エピオルニス (Aepyornis) が棲息ていたことからヴォロンパトラの正体は当然のようにエピオルニスの生き残りと考えられています。

エピオルニスはとにかく重く、「史上最も背の高い鳥」という勲章こそ最大身長4メートルのジャイアント・モア (Dinornis maximus) に譲るものの、モアより (最大300キロ) も遥かに重く600キロ (最大個体は1トンを超える説もあり) にも達しました。

また、モアよりも背は低いといっても大きな個体は3メートルに達し、その卵は巨大で最大のものは直径25センチ、高さ40センチ、殻の厚さ4ミリ、重さは10キロもありました。

(エピオルニスの卵。ダチョウの卵が鶏卵に見えます)
(image credit by Wikicommons)

エピオルニス科 (Aepyornithidae) にはいくつかの属があり、その中のヴォロンベ属の最大種ヴォロンベ・ティタン (Vorombe titan) は体重700~800キロと推測されています。

しかし、DNAの分析からエピオルニス属の最大種、エピオルニス・マクシムス (Aepyornis maximus) と遺伝的に差異が見られずエピオルニスに再分類されるかもしれません。

まあいずれにしてもエピオルニス科はすべてマダガスカル島に棲息していたので、今後の分類がどうなるかはともかくヴォロンパトラの正体はエピオルニス科のいずれかに違いありません。

ただし、おそらく現在から1000年ほど前には人類により滅ぼされていると考えられており、19世紀まで生き残っていたとしても大変なことです。

先にエピオルニス科にはいくつかの属があると書きましたが、この中の最小種、ムレロルニス属 (Mullerornis) のムレロルニス・モデストゥス (Mullerornis modestus) は身長1.5メートル、体重90キロしかありませんでした。

そこで、未確認動物学者ロイ・P. マッカル (Roy P. Mackal)  博士はヴォロンパトラの正体にこのムレロルニスを挙げています、というのもこれぐらいの大きさであればなんとか発見されずにマダガスカルに生き残っているかも?という淡い期待からです。

但し、当然のことながら体が小さいと卵も小さくなり、ムレロルニスの卵はエピオルニスの1/10以下である1キロ未満、「ヴォロンパトラは卵も巨大だった」という19世紀までの証言とはずれてしまうところがちょっぴり難点です。