2023年4月24日月曜日

襲った獲物は水中に引きずり込む!水棲の大型ネコ科動物 ~ アイパ


■水棲の大型ネコ科動物 ~ アイパ

少し更新間隔が開きました。

これには理由があり、書き置きしていた記事がなぜかすべて消えてしまうというスペシャルな不幸が起きてしまい、ちょっとばかり心が折れましたw

しかし気を取り直して書いております。

さて、今回紹介するUMAはアイパ (Aypa)。

ブラジル最北端、アマゾン川の河口がある大西洋に面したアマパー州 (Estado de Amapa) に伝わるUMAです。

アマパーの北部はブラジルの国境でフランス領ギアナとスリナム共和国と接します。

このギアナとスリナムの国境となるマロニ川 (Maroni) ではつい先日紹介したマイポリナ (Maipolina) と呼ばれるUMAが目撃されていますが、地理的に近いこと、そして特徴も似ていることから同一視する考えもあります。

つまりアイパは日本や中国で水虎 (すいこ) と呼ばれるウォーター・タイガー (Water tiger) の一種です。

今回はマイポリナの時とはちょっと違う角度でアイパを見ていきましょう。

(スミロドン・カリフォルニクス (Smilodon californicus))
(image credit by Wikicommons)

アイパもマイポリナもウォーター・タイガーと呼ばれつつも、現生のトラというよりはサーベルタイガーに似ており、ウォーター・サーベルタイガー (水剣歯虎 - すいけんしこ) といった方がいいぐらいです。

ただそうなるとサーベルタイガーは絶滅種である上に、大型ネコ科動物が水棲 (もしくは半水棲) であるという二重苦を克服せねばならず苦しい状況です。

というわけで、アイパは取り敢えずサーベルタイガーに拘らず、名前 (水虎) の通り水棲の大型ネコ科動物という視点で考えていきましょう。

基本、大型ネコ科動物は水中をあまり好みませんからその時点で厳しいことは厳しいのですが、その中では少しばかり都合のいい大型ネコ科動物がいます、ピューマです。

日本では学名 (属名) そのままにピューマ (Puma concolor) と呼ばれることが多いですが、英語圏ではクーガー (Cougar) であったりマウンテン・ライオン (Mountain lion) と呼ばれます。

またピューマは南北アメリカ大陸に広く分布するのも都合がいいです。

大型ネコ科動物といえば現在ではアフリカや東南アジア、南アジアにしか棲んでいないものと日本では思われがちですがピューマは南北アメリカにしか生息していません。

尚、ピューマは「アメリカライオン」とも呼ばれるという記載も見受けられますが、バーバリーライオン (Panthera leo leo) 等と並び史上最大のライオンと呼び声の高い絶滅種のアメリカライオン (Panthera atrox) が存在しますので、ここでは混同を避けるため呼び名はピューマで統一します。

(ピューマ)
(image credit by Wikicommons)

さてこのピューマ、GPSタグをつけて生態調査をしたところ、とても興味深いデータが得られました。

特にオスの個体の一部に、非常に有能なスイマーが存在するのです。

水を嫌うどころか一部のオスのピューマは自ら海に飛び込みかなり離れた島まで泳ぐことができることが分かったのです。

以前よりピューマは目撃情報やその生息域より遊泳力が高いのではないかと考えられていたのが実証される形となりました。

これはすべてのピューマが水中を厭わないという意味ではなく、あくまで一部のオスの個体にその傾向があるという意味です。

特にノーラン (Nolan) という名で識別されていたオスの若年個体は2/3マイル (約1キロ) 以上を途中休憩なくして一気に泳ぎ切ったそうです。

またGPSタグはつけていないものの、ピューマが繁殖している島から1.2マイル (約2キロ) 離れた孤島にもピューマがいたことから、個体によってはその程度の距離を泳ぎ切ることが可能であることが示唆されています。

アイパやマイポリナは獲物を水中に引き込む、なんていわれているものの、ピューマは泳ぎが得意だからといって襲った生物を水中に引きずり込むとは考えにくいです。

単に水中で目撃したピューマからそういった逸話が創られた可能性もあるでしょう。

たまたま泳いでいる最中に小型の獲物に出くわしたら、もしかすると襲うこともあるかも?ただ遊泳中にそんな余裕があるかどうかはわかりませんけどね。

いずれにしても現実的な視点からアイパを考えた場合、ピューマが関係している可能性は高そうです。

ウォーター・タイガー系UMAの逸話を提供してくれるであろうピューマですが、その中でも前出の個体、ノーランには期待がかかります。

彼の子孫であればきっと有能なスイマーを遺してくれるに違いありません。

そしてその子はマイポリナやアイパの伝説をつなぐことになるでしょう。

しかし、、、残念なお知らせがあります。

運悪くノーランはハンターによって撃ち殺されてしまいました (合法的なハンティングによる)。

(参照サイト)

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2023年4月17日月曜日

人を喰うタホ湖の怪鳥 ~ オング


■人を喰うタホ湖の怪鳥 ~ オング

アメリカ、カリフォルニア州とネバダ州に跨る楕円形の湖、タホ湖 (Lake Tahoe)。

北米31番目に広い表面積を誇る湖で、なんといってもその特徴は深いこと。

最大水深594メートル、平均水深350メートルを誇るオレゴン州のクレーター湖 (Crater Lake) に続き深い湖で、最大水深501メートル、平均水深300メートルもあるとてつもなく深い湖です。

海において水深200メートル以上を深海と定義されますが、まさに深海といえる深い湖です。

タホ湖という名はこの地の先住民族ワショ族 (Washoe people) が使うワショ語で "Da owaga" と呼ぶことに由来します。

ワショ族に伝わるレイク・モンスターは2種類、ひとつは典型的な水棲のレイク・モンスター、タホ・テッシー (Tahoe Tessie)、そしてもうひとつがモンスター・バードと形容される巨大な怪鳥オング (Ong) です。

今回はオングを取り上げましょう。

オングは具体的な大きさを語られることはあまりないようですが、ワショ族の男性を持ち上げるほどの怪力ということなのでかなり大きいことが分かります。

(ハクトウワシの幼鳥、頭部がまだ白くありません)
(image credit by Wikicommons)

というのも現在確認されているもっとも重い重量を持ち上げた記録はハクトウワシ (Haliaeetus leucocephalus) がミュールジカ (Odocoileus hemionus) の子供を持ち上げた15ポンド (約6.8キロ) が最高だからです。

ハクトウワシの最大クラスの個体の翼開長は8フィート (約2.4メートル)、体重は15ポンド (約7キロ) であり、自分の体重とほぼ同等の物体を持ち上げることができるということになります。

(ミュールジカ。シルエット的には見慣れた日本のニホンジカ (Cervus nippon) と大差ないです)
(image credit by Wikicommons)

人間の生後間もない赤ちゃんであれば連れ去ってしまうことは可能ですが、子供ですら1歳を超えた辺りで既に平均で10キロに達しはじめ、2~3歳ともなるとほぼ確実に10キロ以上になります。

人間の成人ともなると小柄だったり痩せている人でも40キロはあるので、オングがいかに巨大であるか想像がつくでしょう。

日本でも最も見慣れたカラスのひとつ、ハシブトガラス (Corvus macrorhyncho) が自重の1.5倍のものを持ち上げることができるという研究結果もありますが、とはいえ、です。

(北米最大の猛禽、カリフォルニアコンドル (Gymnogyps californianus))
(image credit by Wikicommons)

さてオングとはいかなる鳥なのか。

オングはタホ湖の中央付近にある島に生息していると考えられています。

ワショ族には人食いとして知られ、かぎ爪で連れ去られ巣に運ばれ生きたまま貪り食われると信じられています。

その翼も強力で、羽ばたく力で木が曲がってしまうほどだといいます。

ワショ族に伝わるこんな逸話があります。

毎年夏になるとワショ族はグループでタホ湖周辺に遠征し食料を集めていました。

かれらはオングの奇襲を回避するため、野営地はグループで行動することを規則としていました。

しかしある年の夏のこと、この規則を破り、ひとりの青年がグループを離れ単独で森の中へ分け入りました。

そしてワショ族の間ではパカーガ (pacaga) と呼ばれる黒曜石で矢じりを作ることに夢中になっていたときのことです。

オングは物音ひとつ立てず空から奇襲し、青年を鋭いかぎ爪で掴むと空へ舞い上がりました。

オングはタホ湖の中央にある営巣地へ青年を運ぶと、そこには半ば喰われた状態のワショ族の無残な死体があったといいます。

青年にとどめを刺さず、オングはその場に残っている死骸を食べ続けていたといいます。
青年を殺さなかったのは獲物を新鮮な状態で保存しておきたかったからかもしれません。

しかし青年は逃げることができませんでした。

逃げたとしてもすぐに捕まり今度こそ殺されてしまうに違いありません。

黙って仲間たちの死骸が喰われているおぞましい光景を見ているだけでした。

しかしその光景を何度も見ているうちに青年は気付きました、オングは獲物を食べるときに目を閉じる癖があることに。

青年は目を閉じている隙を狙い、矢じり用のパカーガをオングを投げつけ殺しました。

青年はその島から脱出するために簡易的なカヌーを作り、オングの巨大な羽根をその体から引き抜き櫂 (オール) として仲間たちの元へと戻ったといいます。

部族に伝わる民間伝承以上のものではありませんが、もしかすると巨鳥に子供などが本当に連れ去られたり、連れ去られないまでも急襲されたりしたことが元になっている可能性もあります。

11万年ほど前の巨鳥の巣にネアンデルタール人の子供の人骨が発見されたことから、人間は鳥に食べられていた証拠は実際のところ残っています。

子供の年齢は推定で5~7歳、消化後の骨であり巨鳥に食べられていたことは疑いようがないということですが、その子供が巨鳥によってハンティングされたものか、単に子供の死体 (もしくはその一部) を持ち去って食べたものかは分かりません。

ところでこの話を聞いたら是非そのオングの棲む島に言ってみたいと思う人もきっといるはず。

その島はタホ湖のどこにあるのか?

ワショ族の伝承によれば、残念ながらその島はこの深い湖に沈んでしまったいうことです。

ですが湖底に沈んだその島には、かつてオングが生息していた痕跡が残っているそうです。

(参照サイト・文献)

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2023年4月15日土曜日

19世紀に捕らえられ標本化された恐竜がいるらしい ~ マディディ・モンスター


■南米ボリビアの恐竜 ~ マディディ・モンスター

南米中部に位置するボリビア。

自分的にはボリビアと聞けば「ボリビア共和国」と思ってしまいますが、2009年より「ボリビア多民族国」と国名が変わったんですね。

さて、このボリビアにはアマゾン川が流れますが、その上流には2万平方メートル近い広大なマディディ国立公園 (Madidi National Park) が広がります。

日本ではよく広い土地を東京ドーム何個分、なんて表現しますが、40万個分ですw

東京ドームと比較するのがそもそもの間違いで、日本では北海道以外、マディディ公園以上の面積を持つ都道府県は存在しません。

さてこの国立公園が設立されたのは20世紀も終わりに近い1995年ですが、それよりも100年ほど前、19世紀後半からこの地で目撃されているマディディ・モンスター (Madidi Monster) が今回の主役です。

アフリカ大陸の次に恐竜系のUMAの目撃が多いのは南米大陸、実際、巨大な竜脚類の化石は南米から毎年わんさかと発見されています。

(アルメニアで発行されたアルゼンチノサウルスの220ドラム切手 (「ドラム」とはアルメニアの通貨単位)、日本だと80円切手ぐらいの価格)
(image credit by Wikicommons)

史上最大の陸生生物のひとつとして名高いアルゼンチノサウルス (Argentinosaurus huinculensis) は名前の通り、南米アルゼンチンで発見された竜脚類でその体長は30~35メートル、100トン近い体重と見積もられています。

化石の発見者は我こそは史上最大の竜脚類を発見した!という思いが強いのでしょう、30メートル、40メートル、50メートルとその (発見者によって独自に) 復元された大きさはニュース紙を賑わせます。

生きている本物の姿を見たことがないので、実際それぐらい大きさがあった可能性もありますが、まぁたいていの場合、発見から時間と共にその体長は縮小傾向にあるのがふつうです。

恐竜ではありませんがメガロドン (Otodus megalodon) なんてその典型でしょう、軟骨魚類のため、基本的に歯の化石しか見つかっていないメガロドンは初期は40メートル近いサメと推定する科学者もいましたが、30メートル、20メートルとその推定値は下がり、現在では10~15メートルが無難なところです。

実際のところ10メートルオーバーのサメなんてとんでもない大きさですが、最初の推定値がデカすぎたために拍子抜けしている人も多いかもしれません。

完全に話が逸れましたが、マディディ・モンスターは前述した史上最大の生物、竜脚類に似た姿をしたUMAです。

知名度的にはまったく話になりませんが、UMAファンにしてみればモケーレ・ムベンベの南米バージョンといえば分かり易いでしょうか。

(北米に生息していたスーパーサウルス・ヴィヴィアナエ (Supersaurus vivianae))
(image credit by Wikicommons)

この怪物のもっとも初期の情報はなんとアメリカの大衆科学雑誌、サイエンティフィック・アメリカン (Scientific American) の1883年7月7日版 (Vol.49) に掲載されたものです。

この時代のサイエンティフィック・アメリカン誌が現在ほどの科学的根拠に基づいて執筆されていたかは分かりませんが、取り敢えずは掲載されていたこと自体は事実のようです。

ボリビアのベニ川 (Rio Beni) 付近で殺されたマディディ・モンスターの死体はボリビアの隣国パラグアイの首都アスンシオン (Asunción) に保存されていたといい、ボリビア大統領の命でラパス (La Paz) に移送されたといいます。

乾燥標本の大きさは驚異の12メートル、生前の姿をどこまで維持しているかは分かりませんが、長い首に地面につきそうなほど丸々と太った胴体、四肢は短く先端にはかぎ爪がついていました。

さらに驚くべきは長い首の付け根の両側にも頭部のついた短い首が生えていたということ。

つまり、ファンタジーでもおなじみ、冥界の番犬ケルベロスさながら3つの頭部を持っていたということになります。

これはマディディ・モンスターが複数の頭部を持つ生物というよりは、多頭症による遺伝的な疾患によるものと考えられています。

ただその乾燥標本がその後どこに行ってしまったかは謎でございます。

地元住民たちの話によればマディディ・モンスターと思われる首の長い生物はベニ川やその近辺の沼沢地で目撃があり、カヌーに体当たりといった攻撃を受けた事例もあるそうです。

陸棲動物とは考えられているものの、水中での目撃も少なくなく半水棲、リバー・モンスター的側面もありそうです。

これは竜脚類が水棲と考えられていた名残が影響しているのかもしれません。

「ここにはまだ科学者に知られていないヘビや昆虫が生息しており、マディディの森林地帯には未知の巨大な生物が頻繁に人々に恐怖を与えているのは確かなようです。

おそらくこれはアフリカ等、他地域で報告されている太古の生物に違いありません。

確かにいかなる既知生物にも当てはまらない足跡が発見されており、我々が知っているいかなる生物の足跡よりも巨大です」

1907年、この地に派遣された英国陸軍中佐パーシー・ファーセット (Percy Fawcett) 氏が遺した発言です。

(参照サイト)

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