2019年11月10日日曜日

8メートルの巨大淡水エイ ~ ウロギムヌス・ポリレピス (ヒマンチュラ・チャオプラヤ)


■8メートルの巨大淡水エイ ~ ウロギムヌス・ポリレピス (ヒマンチュラ・チャオプラヤ)

日本でエイといえばマンタやアカエイなど「海の生き物」というイメージが強いですが、実際は南米や東南アジア、アフリカ (ほとんどは南米) で多くの淡水エイが河川に生息しています。

淡水エイはほぼ円形の輪郭で、細長い尾と合わせてウチワのような体型をしてるのが特徴で、尾には毒針を持ちます。

淡水エイの多くは大きくても数十センチ程度、やはり海生のエイと比べると小型のものが多いです。

もっとも淡水エイが繁栄している南米では、アルゼンチンやウルグアイの河川を中心にはアハイア・グランディ (Ahaia Grandy, Potamotrygon brachyura 「ポタモトリゴン・ブラキュラ」) という巨大なエイが生息します。

一説には直径1.5~2メートル、体重200キロ以上 (公称208キロ) に成長するといわれている超大型の淡水エイで、大きな円盤状のからだに比して極端に短い尾を持つことから「ショートテイルド・リバー・スティングレイ (Short-tailed river stingray, 「短い尾の淡水エイ」)」と呼ばれます。

しかし、この南米の巨大エイをははるかに凌駕する東南アジアの淡水エイがいます、ヒマンチュラ・チャオプラヤ (Himantura chaophraya) です。

 → ヒマンチュラ・チャオプラヤは既知種の ウロギムヌス・ポリレピス (Urogymnus polylepis) と同一ということが判明しました。(注1)

英名はそのまんまジャイアント・フレッシュウォーター・スティングレイ (giant freshwater stingray 「巨大淡水エイ」) です。

和名をメコンジャイアントタンスイエイといい、主にメコン川やその支流の大きな河川に生息します。

ヒマンチュラ・チャオプラヤは淡水エイに多い完全なディスク型ではなく、正面を底辺とした逆正三角形の各々の角を丸めたような姿をしており、吻部が尖り尾も非常に長いのが特徴です。

ドキュメンタリー撮影時、自然保護活動家のジェフ・コーウィン (Jeff Corwin) 氏が捕らえた、幅8フィート (約2.4メートル)、全長14フィート (約4.3メートル)、重さ800ポンド (約363キロ) が公式的記録としては最大といわれています。

しかし、生物学者ゼブ・ホーガン (Zeb Hogan) 氏が地元漁師らからヒマンチュラ・チャオプラヤの聞き込みを行ったところ、過去に幅14フィート (約4.3メートル)、体重1100ポンド (約500キロ) を捕獲した前例があるといいます。

毒針ひとつ物理的証拠が存在しないだけに、この話を鵜呑みに出来るかどうかは難しいところですが、この大きさから推測される尾を含めた全長は25フィート (7.62メートル) にも及びます。

大いに夢のある話です。

ところでこの巨大淡水エイ、保護を行っているものの乱獲に歯止めが利かず、今までヒマンチュラ・チャオプラヤの生息が確認されていた支流で次々と絶滅が宣言されています。

生態はなぞが多く、寿命やら性成熟するまで何年かかるか等も不明です。

ですが大型の生物は概して性成熟までに時間がかかる上、産まれたてですら通常の淡水エイの成体並みの直径30センチもあることから、性成熟するまでにそれなりの年数がかかると思われます。

このまま減少の一途を辿るようであれば、遠くない未来、本当に「幻の」巨大淡水エイになってしまうかもしれません。

(注1)
ヒマンチュラ・チャオプラヤ は既知種の ウロギムヌス・ポリレピス と同一種であったことが判明したため、文中のヒマンチュラ・チャオプラヤ ウロギムヌス・ポリレピス に置き換えてお読みください。
世界最大の淡水エイ = ヒマンチュラ・チャオプラヤ が一般的であると思われるため、この記事ではそのままにしています。

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