■発光する目をもつレイク・モンスター ~ 铜山湖の怪物
今回は中国のレイク・モンスター、铜山湖の怪物 (Lake Dozan monster)。
「铜山湖」は日本の漢字を当てはめるとたぶん「銅山湖」ではないかと思うので「どうざんこ」でいいのかな。
铜山湖 (中国語読み: ほんしゃんふー) は河南省の駐馬店市 (ちゅうばてんし) にある湖で、漢江 (かんこう) 経由で長江水系と繋がっています。
1980年代から現在まで目撃が続く巨大魚系の水棲UMAです。
夏場のレジャーによる観光客の絶対数によるものなのか、この怪物の生態 (活発になる時期 or 回遊している等) によるものなのか、なぜかすべての目撃が5~9月に集中しています。
多くの目撃から铜山湖の怪物は全身が真っ黒でヘビのような長大な体を持つ生物と考えられ、その大きさはおよそ4~5メートルぐらいと推測されています。
中には体長100メートルの生物を見たという目撃もありますがあまりに常軌を逸しているためこれは含めないことにしましょう。
典型的なレイク・サーペント (ウミヘビ) 系のUMAかというとそうではなく、頭部に二本の角を持っていたというものや、かぎ爪を持っていた (つまり前肢もしくは四肢がある) というものも含まれます。
そのため铜山龍の異名を持ちます、つまりドラゴン的なUMAということです。
もっとも初期にこの怪物を目撃したこの湖の漁業組合に属す馬海利 (马海立) なる人物の話を見てみましょう。
1980年9月のとある夜のこと、馬海利さんは寝付くことができずボートを出して湖に入ったといいます。
すると不思議なことに緑色に明滅する二つの光に気付きました。
不思議に思った馬海利さんは光の方へとボートを進めると、それは謎の生物の「目」であることに気付いたのです。
体長は4~5メートル、頭部はヘビに似るもののウシほどの大きさで、口はフラットで大きく、鼻の穴はクルミほどの直径がありました。
漆黒の湖で目だけが緑色にギラギラと輝いていました。
夜間ということもあり体色については心許ないですが灰色もしくは黒に見えたといい、全身鱗に覆われているようだった証言しています。
怪物は馬海利さんのボートを襲おうとはせず悪臭を残しそのまま水の中へと姿をくらましましたが、怪物に驚いた馬海利さんは急いでボートを岸によせたといいます。
この生物は一体何だったのでしょう?
ヘビのような頭部という目撃で最も考えられるのは鰭脚類でしょうか。
しかし誤って遡上するには铜山湖はあまりに内陸過ぎて海からは遠すぎるかもしれません。
レイク・モンスターの正体として定番であり最有力のチョウザメはどうでしょう。
この湖でチョウザメの放流実績もあり、また前述の通り長江とも繋がっていることから長江流域の生物が湖に入り込む可能性も考えられます。
(ハシナガチョウザメ)
(image credit: Wikicommons)
つい最近になって絶滅が宣言されたヘラチョウザメの最大種、ハシナガチョウザメ (Psephurus gladius) はかつて長江に棲息していました。
体長3メートル超、300キロに達する巨魚であり湖に万一入り込めばUMA騒ぎを起こすに違いありません。
またこちらも既に絶滅してしまっている可能性がありますが、ヨウスコウカワイルカ (Lipotes vexillifer) も候補に入れておきましょう。
(ヨウスコウカワイルカ (奥) とスナメリ (手前))
(image credit: Wikicommons)
但し、ハシナガチョウザメ、ヨウスコウカワイルカ共に大きさは申し分ないものの吻が長く目撃証言の「ヘビに似た頭部」と大きく異なるのが玉に瑕。
そこで候補として挙げたいのがスナメリ (Neophocaena phocaenoides)。
湖南省の洞庭湖ではスナメリが確認されていることから地理的にも近い铜山湖に入ってくることもひょっとするとあるかもしれません。
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