アメリカ、ノースカロライナ州にある小さな町、ブラデンボロ (or ブレイデンボロ, Bladenboro)。
現在でも人口は1万人に満たない、どころか1600人程度、今回の舞台である1950年代はさらにその半分、800人ほどしか住んでいませんでした。
そんな小さな小さな町で起こった奇妙なUMA事件、ブラデンボロのビースト (Beast of Bladenboro) です。
1958年12月29日、まもなく新年を迎えるブラデンボロの隣町、クラークトン (Clarkton) から物騒な噂が流れてきました。
猫に似た5フィート (約1.5メートル) もある黒光りする獣が飼い犬を襲って殺したというのです。
もちろん捕まえて体長を測ったわけではないですから誇張されている可能性はあるにしろかなり大きな生物の可能性があります。
町と町の境界線があるわけではありませんが、隣町とはいえブラデンボロの住民はおそらく他人事 (ひとごと) に感じていたことでしょう。
しかしそれから2日後、12月31日、ブラデンボロの住民の飼い犬2匹が何者かに惨殺されます。
飼い主であるジョニー・ヴァース (Johnny Vause) 氏はこういいます。
「犬たちはよく戦ったと思います。
ポーチは至るところが血にまみれ、大きな血溜まりもできていました。
唾液すら溜まっていました。
それは午前10時半のことで死んだわたしの犬はポーチにそのまま横たわっていました。
父はブランケットで亡くなった犬をくるみました。
しかしヤツは戻ってきたようです、くるんでいた犬がいなくなっていたのです、その後、その飼い犬を二度と目にすることはありませんでした。
そして夜中の午前1時半、ヤツはまたも来たのです、もう一匹の犬が連れ去られてしまいました。
連れ去られてから3日後、生垣で死体を見つけましたが酷いものでした。
頭頂部は引きちぎられ、まるで体全体が咬み砕かれたように潰れ、そして唾液でびしょ濡れだったのです」
どうやらヤツがブラデンボロに乗り込んできたようです。
新年を迎えた1959年の1月1日に2匹、3日に1匹の飼い犬の惨殺が報告され、5日にはペットのウサギが殺されているのが発見されました。
犬は首が引きちぎられていました。
しかし正体は分かりません。
この町の人口の少なさも影響しているのでしょう、騒がれた割には目撃情報が乏しいのです。
小さな町で起きたセンセーション。
ローカル新聞は大げさに書き立てることによりブラデンボロのビーストの噂は全国区へと広がっていきます。
人口の少ない小さな町ではビーストの恐怖よりも町が注目を浴び人が集まってくることに注力を注いだようです。
マスコミは実際の目撃証言にはなかったような特徴、例えば死体には血が残っていなかった、というようなパラノーマルな特徴を加えたりしたともいわれています。
とはいえ「注目を浴び人を集める」ということには成功したようです。
ブランデンボロには連日人口以上のハンターたちが集まったからです。
1月だけでものべ数千人 (もしかすると数万人) のハンターがブランデンボロに集結していたようです。
但しその余波で無意味な野生動物の殺傷も行われていたようですが。
目撃情報はあるものの襲っているところを見たという人は少なく、またその目撃証言に共通天が少ないことから犬たちを襲った生物の種類を特定することができず、ハンターたちが「ブラデンボロのビースト」を狩ったといって持ち込む動物がその正体である可能性を確かめる術がありません。
(ボブキャット)
(image credit by Wikicommons)
ブラデンボロのビースト (Beast of Bladenboro) の頭文字をとってB.O.B (ビー・オー・ビー、「ボブ」) という別称を持ち、名前の類似性からも北米全域に生息するボブキャットもその正体として候補に上がりました。
ボブキャットはオオヤマネコの仲間の中型ネコ科動物 (体長最大1メートル) で大きさ以上の獰猛さを兼ね備えており、実際に人間の子供も殺されたこともあることからその正体としては筆頭候補ですが、犬の頭部を丸呑みして砕いたり首を引きちぎったり、といったような芸当はその体格からできるはずもなくおそらくは違うでしょう。
マスコミが書き立てブラデンボロのビーストが全国区となって盛り上がったころにはすでにその姿はなく、「猫に似た」という目撃情報も頼りなく現在に至るまでその正体は全くの不明です。
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