2020年4月30日木曜日

スピノサウルスは遊泳が得意であった説

(image credit by National Geographic)

■スピノサウルスは遊泳が得意であった

ティラノサウルスほどではないにしろ、巨大な獣脚類としてスピノサウルス (Spinosaurus aegyptiacus) の知名度はかなり高いものと思われます。

特に「スピノサウルス (Spinosaurus「棘トカゲ」の意)」という学名の由来ともなった背中の巨大な棘状の突起はインパクト絶大で、恐竜に興味のない人でもその姿を一度見れば忘れることはないでしょう。

しかし知名度の割に、見つかっている骨格は不完全であり、その復元された姿はその時代や復元した研究者によりかなりばらつきがあります。

そんな中、2014年頃からニザール・イブラヒム (Nizar Ibrahim) 博士らが提唱しているスピノサウルスは泳ぎが得意であった (= 半水生恐竜) という自らの仮説を大きく前進させる研究論文を発表しました。

これが有力な説と認められれば、スピノサウルスの復元もまた手を加えられることになるでしょう。

長きに渡り謎であったスピノサウルスの尾の形状ですが、イブラヒム博士らで構成される国際研究チームによりほぼ完全な形で発見されました。

(image credit by CNN)

その尾は上下に幅広く、非常に独特な形状をしています。

当然ながら尾の付け根から先端に向かって断面積は縮小していきます。

しかしそれは左右に扁平していくだけで上下の幅は付け根から先端までほとんど変わらず幅広を維持します。

つまりはパドルのような形状をしており、付け根の太さはパドル状の尾を動かすに十分な筋肉量をもつということを意味します。

この形状で尾を復元し水中内で実験を行ったところ、他の獣脚類の尾に比べスピノサウルスの尾のほうが8倍以上の推力を生み出し、2倍以上効率がよいことが分かりました。

スピノサウルスは頭部や歯の形状から以前より魚食性の強い獣脚類という位置づけでしたが、今回の研究結果により、イブラヒム博士はスピノサウルスが魚食性の半水生恐竜という自らの見解にさらに自信を深めたことでしょう。

(20世紀初頭から長らく君臨したスピノサウルスの旧復元図)
(image credit by Dinosaur-discourse)

2年ほど前、カナダ、アルバータ州のロイヤル・ティレル古生物学博物館 (Royal Tyrrell Museum of Palaeontology) の学芸員、ドン・ヘンダーソン (Don Henderson) 氏らの研究グループはイブラヒム博士のスピノサウルスが半水生生活を送っていたという説を真っ向から否定しています。

コンピューターを使った最新のシミュレーションにより、スピノサウルスは水中に潜っても浮力が強すぎ体が浮いて横倒しになってしまい到底水中で安定した姿勢を保てなかった、つまり「泳ぎが下手 = 半水生恐竜ではない」これがヘンダーソン氏ら研究グループの結論です。

魚食性が強かったことは否定しておらず、足のつくような浅瀬で魚を獲っていたに違いないが陸生の有能なハンターであった、というのがヘンダーソン氏らの見解です。

しかもヘンダーソン氏は非常に挑発的でした。

「わたしたちの見解に対し新たな証拠をもって反証できないのであれば、イブラヒム氏らの説は『暗礁に乗り上げている』ということになります」

当時、ヘンダーソン氏の見解に対し電話インタビューで多くを語らなかった (「真実はつまるところ、コンピューターの中ではなく骨の中にある」) イブラヒム博士でしたが、今回の新説はこの挑発的メッセージへのアンサーともいえるかもしれません。

ヘンダーソン氏は今回イブラヒム博士らが示した「新たな証拠」におそらく腸 (はらわた) が煮えくり返っていると思われ、近いうちに真っ向から否定してくるでしょう。

まだまだこの論争は長引きそうです、アナログ派 (イブラヒム氏) vs デジタル派 (ヘンダーソン氏) という興味深い対決です。

みなさんはどちら派?

----- おまけ -----

(この初期復元図はおそらくフェイク)
(image credit by )

上記のスピノサウルスの初期復元図はただのゾウアザラシにしか見えませんがおそらくフェイクでしょう。

レトロ調に描かれていますが岩や波の模様、からだのシルエットの切り出しがデジタル調なのでペイントのようなもので描いたものと思われます。(違ってたらごめんなさい)

(参照サイト)
CNN
PeerJ
National Geographic
THE READER OF WIKIPEDIA

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2020年4月29日水曜日

超巨大ナメクジ 系UMA~ ムリーロ

(image credit by FANDOM)

■超巨大ナメクジ ~ ムリーロ

中部アフリカのコンゴ共和国、コンゴ民主共和国 (旧ザイール)、ザンビアの湿地帯では巨大なナメクジに似た生物が目撃されるといいます、ムリーロ (or ムリロ, Mulilo) です。

ちなみに世界最大のナメクジはヨーロッパに生息するクロコウラナメクジ (Limax cinereoniger) やマダラコウラナメクジ (Limax maximus) といわれ、全長20センチをオーバーします。

クロコウラナメクジは最大で30センチに成長するといったサイトもありますが、公式的な記録かどうかは分かりません。

取り敢えず、現世最大のナメクジは30センチとしておきましょう。

ヨーロッパ原産ですが世界各地に外来種として侵入しており、おそらくアフリカにも渡っているものと考えられます。

見慣れない巨大なナメクジを見たことからUMA騒ぎとなり、ムリーロの伝説が生まれたのではないか?

しかし、残念なことにムリーロは体長6フィート (約1.8メートル)、幅12インチ (30センチ) ととんでもない大きさをしています。

ムリーロは巨大ゆえあまりに重く、陸では自重に耐えるのが困難であるため、多くの時間を水中で暮らすといわれています。

これは明らかにナメクジらしからぬ習性です。

(謎の写真)
(image credit by imgur)

水中に生息するナメクジのような生物といえばヒル、ムリーロの正体はヒルではないでしょうか?

世界最大のヒルは南米に生息するアマゾン・ジャイアント・リーチ (Haementeria ghilianii) で、なんと45センチもあります。

(アマゾン・ジャイアント・リーチ)

ぶら下げると自重でかなり伸びるのでナメクジよりも遥かに巨大に見えるはずです。

このヒルは希少種であり、一時は絶滅したと考えられていたほどですからアフリカにいるとすれば別種のヒルということになるでしょう。

(image credit by Jacob.jose)

個人的には現実的かつ夢のある未発見の巨大ヒル説を推したいところですが、さらに現実的な説もあります、ガボンアダー (Bitis gabonica) です。

体長は最大クラスで1.8メートル、非常に太い体をしているのが特徴で、目撃証言のサイズ・プロポーションと一致します。

また中央アフリカに生息、ふだんは木々の間にいるものの降雨量の多い熱帯雨林に生息することから水中も厭 (いと) いません。

生息域、体長、生態はムリーロとほぼ一致します。

ただし水中にいるガボンアダーを見たところで、それが巨大なナメクジに見えるものなのか?といった根本的な問題はあります。

(ガボンアダーの骨格)
(image credit by Stefan3345)

ガボンアダーは英語で通常ガボンバイパー (Gaboon viper) と呼ばれることからも分かる通り毒蛇であり、一匹の持つ毒の量はキングコブラに次ぐ世界第2位。

一咬みで人間の致死量を遥かに上回る毒を注入させることができます。

しかし動きは緩慢で攻撃性も低く咬傷事故は少ないといわれています。

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2020年4月28日火曜日

毛皮も頭骨もあるんだが、、、いない ~ マロジ

(image credit by F.W. Frohawk)

■いるのは確実にわかっている、だが見つからない ~ マロジ

(ライガー (1904年))

オスのライオンとメスのトラから生まれたハイブリッド個体はライガー (Liger) と呼ばれます。

オスメスが入れ替わり、オスのトラとメスのライオンから生まれたハイブリッド個体はタイゴン (Tigon) と呼び方が変わります。

上記のライガーやタイゴンなどはわりと有名かと思います。

(レオポン)
(image credit by TRJN)

ではオスのヒョウとメスのライオンから生まれたハイブリッド個体は?

答えはレオポン (Leopon)、オスメスが入れ替わるとライパード (Lipard) となります。

下表がヒョウ属、トラ、ライオン、ジャガー、ヒョウの異なる種同士のハイブリッド個体の呼び方一覧です。

(image credit by Wikipedia)

ハイブリッドは12パターン存在し、メスの呼び名を (+ness) 含めれば24パターンの呼び名が存在します。

名前の規則は原則に「オスの英名の前半部分」+「メスの英名の後半部分」です。

冒頭の例で言えば、

オスのライオン (Lion) x メスのトラ (Tiger) = Liger
オスのトラ (Tiger) x メスのライオン (Lion) = Tigon

さて本題であるUMAの話に移りましょう、西アフリカで目撃される大型猫科系UMAにマロジ (Marozi) という生物がいます。

マロジはまたの名をスポッテッド・ライオン (spotted lion 「斑点のあるライオン」) といい、その正体をライオンとハイエナのハイブリッドだといいます。

スポッテッド・ライオンというのがこのUMAの特徴を端的に言い表しています、すなわち斑点 (斑紋) のあるライオンです。

とはいえライオンとハイエナは属が異なる上に敵対関係にあるこの2種間で交雑 (属間雑種) が起きるとは到底考えにくいところです。

そこで考えられるのが冒頭に掲げたヒョウ属同士のハイブリッド個体です。

冒頭のヒョウ属のハイブリッドの例に従えば、マロジレオポンもしくはライパードのいずれかのはずです。

これにて一件落着、めでたし、めでたし、、、とはなりません。

ライオンとヒョウは野生下において敵対関係にあるだけでなく、力関係に圧倒的な差があり、野生下でいままでに両者のハイブリッド個体は確認されたことがないからです。

レオポンやライパードは動物園のような人工飼育下においてやっとこ誕生できる個体と考えられています。

とはいえ非常に少ないながら、マロジの生きている姿の目撃情報も存在します。

目撃情報によれば、マロジが生息しているのは標高10000フィート (約3000メートル) 以上の高所で、その姿は簡単に言えば体に斑点を持つライオン、ヒョウより大柄でライオンより小柄であるといいます。

オスライオンのトレードマークであるタテガミはオスであっても持たないといわれています。

(マロジの毛皮)
(image credit by Escobarbarian)

しかしマロジは目撃証言だけでなく、実際にマロジのものといわれる毛皮や頭骨といった「物的証拠」も存在します。

DNA鑑定すればより詳しい情報が得られると思われますが、未だにそのような動きはありません。

それではマロジの正体はなにか?

まず、ライオンとハイエナのハイブリッドはまず考えられません、シルエットが大きく異るハイエナの誤認もまずないでしょう。

有力視されるものとしてライオンの幼体には斑点があることから、単に幼体を誤認したというもの、もしくは成体になっても斑点が取れない (消えない) 突然変異個体では?といった説があります。

また確率はかなり低いものの山岳地帯に適応したライオン (の亜種)、そして冒頭に挙げたライオンとヒョウのハイブリッド (レオポン・ライパード) 等が挙げられています。

1930年代以降、地元住民以外での目撃は完全に絶えていることを考えると、未発見のライオンである可能性はかなり低そうです。

ちなみに未確認動物学者ベルナール・ユーベルマン (Bernard Heuvelmans) 氏はマロジに対し新種の生物としてレオ・マキュラトゥス (Leo maculatus) という学名を提唱しました。

なお毛皮はあるのに実物は見つかっていない同様のUMAにはアンデスオオカミマクファーレンズ・ベアがいます。

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