今回はそのキモカワの特異なルックス、露出系変質者を想起させる和名で人気のハダカデバネズミ (Heterocephalus glaber) です。
ハダカデバネズミは東アフリカに分布し、英名のネイキッド・モール・ラット (Naked mole-rat,「ハダカモグラネズミ」の意) からも分かるとおり地中性のネズミです。
その生態は見た目以上に圧倒的に特異です、いくつか見ていきましょう。
まずは哺乳類でありながら体温調節が出来ない変温動物という点です。
気温変化の小さい地下だからできる芸当ですが、地下といえど気温がまったく変化しないわけではありません、寒くなると毛皮を持たないかれらは集団で集まり身を寄せ合って暖を取ります。
狭い地下の一箇所に集団で集まったら酸欠が気になりますがそれついては後述。
また哺乳類でありながらアリやシロアリ、ハチのような女王を頂点とする真社会性を営む稀有な存在でもあります。
真社会性を営む哺乳類は本種とダマラランドデバネズミ (Fukomys damarensis) を置いて他に存在しません。
ハダカデバネズミは平均75匹ほど、最大約300匹でコロニーを形成し、女王ハダカデバネズミを頂点に、小型の個体はトンネル掘り・採餌 (さいじ) 業務を、大型個体はコロニーの防衛業務を担います。
体毛がないことによりしわくちゃの皮膚がむき出しで四肢や尾も貧弱、小さな目に出っ歯と、見た目こそ貧相この上ないですが、実際は不死身といえるほどとんでもない強靭な体質です。
まずはハダカデバネズミ、がんに耐性を持ち、がんにかかりません。
また老化に対しても耐性を持ち、女王ハダカデバネズミの平均寿命は17年、飼育下では32年というとんでもない記録を保持します。
同サイズの齧歯目の10倍以上の長命で、人間でいったら800歳の別な人類が存在しているようなものです。
ちなみに女王以外の個体寿命は2~3年程度です。
この老化に対する耐性ゆえ加齢に伴う死亡率の上昇もなく、寿命を全うするまで健康を保ち続けます。
そして数ある能力の中でも低酸素環境に対しての能力は驚異的です。
集団で暖を取る際に酸欠が気になりますが、酸素濃度0%の状態で最大18分耐え (気を失います)、しかも後遺症なしで復活するほどタフなため少々の酸欠などものともしません。
ちなみに酸素濃度5%もあれば4時間も生存可能です。
また毛皮のない皮膚は弱々しく見えますが、皮神経に神経伝達物質を持たないことから痛みに対しても耐性があります。
これほどの不死身体質を備えるハダカデバネズミは哺乳類界のクマムシといってもいいでしょう。
(クマムシに関してはこちらの記事をどうぞ)
ただし、この不死身さは驚くほど「健康」という意味で、決して「喧嘩が強い」というわけではないので普通にヘビや猛禽類に捕食されてしまいます。
さて夢のような健康長寿を続けるハダカデバネズミ、古来より不老長寿を夢見る人類が興味を示さないはずがありません。
その秘密を探るべく、地中から引きずり出され実験室に送り込まれるハダカデバネズミたち、不死身といえど人類の暴挙にはなす術ありません。
(参照サイト)
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