出世魚と呼ばれるものがいます。
成魚になるまでその大きさで呼び名が変わっていきます。
その筆頭はやはりブリ (Seriola quinqueradiata) でしょうか。
地方によって呼び方も変わりますが、40~60センチぐらいのときはハマチやイナダと呼ばれるのはご存じでしょう。
コノシロ (Konosirus punctatus) のように出世途中のコハダのほうが有名なものもいます。
実はマグロも稚魚から成魚になるまで呼び名が変わったりしてます。
一般的には出世魚とは呼ばれませんが、出世魚に含める・含めないの定義がはっきりしないので含めてもいいんじゃないかな、なんて個人的には思ってますけどね。
さて今回は海外の出世魚 (?)、ピライーバを紹介しましょう。
ブラキプラティストマ・フィラメントスム (Brachyplatystoma filamentosum) ことピライーバ (Piraíba) はアマゾン川やオリノコ川流域に生息する南米最大のナマズで、現地ではクマクマ (Kumakuma) とも呼ばれます。
南米の魚にはピライーバ以外にも現地でピラニア (Piranha 「歯のある魚」) やピラルクー (Pirarucu 「赤い魚」) のように「ピラ (Pira~)」が付く魚が多いですがこれは現地で使われるトゥピ語で「魚」を意味します。
(19世紀に描かれたピラルクー、個体数の多かった当時はもしかすると今よりも大柄な個体が生息していたかもしれません)
(image credit by Wikicommons)
ちなみにピライーバの意味はトゥピ語で「母なる魚 (or すべての魚の母)」もしくは「邪悪な魚」の二通りの解釈があり、いずれが正しいかは判断するのが困難です。
前者である可能性が高いものの、当然?のようにその巨体から人喰いの噂があり、成人男性でも丸呑みする、なんて言う不確かな情報もありますので、そういった意味では後者の意味である可能性もあります。
ブラキプラティストマ属自体がゴライアス (ゴリアテ)・キャットフィッシュ (Goliath catfish)、つまり「巨大ナマズ」と総称されるぐらいなので大柄な種が多いのですが、ピライーバはその中でも群を抜きます。
最大体長は9~12フィート (約2.7 ~ 3.6メートル)、400ポンド (約180キロ) とかなり大雑把な数字で信憑性に欠けますが、画像や動画などからそれなりに巨大であることは確かで、南米において前出のピラルクーに次ぐ巨大魚と考えられています。
さて冒頭で出世魚の話をしましたが、それはピライーバが幼魚時代は別の名で呼ばれるからです。
ピライーバの幼魚時代は「フィリョッチ (filhote)」と呼ばれます。
「フィリョッチ」という単語自体はポルトガル語で「動物 (生物) の子供」を意味する一般名詞ですが、ピライーバの幼魚に対しては固有名詞のように使われます。
幼魚といっても100~150ポンド (約45~68キロ) 以下を指し、十分過ぎるほど巨大な「幼魚」も含まれます。
確実ではないですが、フィリョッチはピライーバよりも肉質がやはり美味しいために区別されているようで、コノシロとコハダの関係に近そうです。
ピライーバの見た目の特徴として、背中が隆起しナマズとしては体に比して大きな背びれを持つことです。
背ビレだけを水面から出して泳ごうものなら川に侵入した巨大なオオメジロザメ (Carcharhinus leucas) と見紛いそうです。
産卵のために2000マイル (約3200キロ) 以上の旅をするナマズとしても知られています。
地元民はこの大物を巨大な針に「牛の心臓」をつけて釣りあげるといいます。
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