2020年3月10日火曜日

触れた者は痛みに耐えかね自殺する ~ ギンピ・ギンピ (ギンピー・ギンピー)


■触れた者は痛みに耐えかね自殺する ~ ギンピ・ギンピ (ギンピー・ギンピー)

摂取すれば時として死に至るような猛毒植物、トリカブトストロファンツス等が有名ですが、触れただけで死を覚悟しなければいけない猛毒植物が存在します、ギンピ・ギンピ (or ギンピー・ギンピー, Gympie gympie) です。

ギンピ・ギンピ (Dendrocnide moroides) はオーストラリアに自生するイラクサ科の植物です。

ギンピ・ギンピというちょっと変わった名前ですが、これはオーストラリアの先住民族、グッビ・グッビ族 (Gubbi Gubbi) の言葉のギンピ・ギンピ (gimpi-gimpi) に由来し、「刺す木 (stinging tree)」を意味します。

ギンピ・ギンピは多くの別称を持ち、スティンギング・ブラッシュ (stinging brush)、マルベリー・リーヴド・スティンガー (mulberry-leaved stinger)、ギンピ・スティンガー (gympie stinger) 等、多くの場合「刺す (sting)」という単語を含みます。

この呼称からも想像できる通り、ギンピ・ギンピの葉や茎はまんべんなく刺毛で覆われており、触れたものはその無数に生える刺毛によって突き刺され、強力な神経毒を注入されることとなります。

(見た目はなんの変哲もないギンピ・ギンピ)
(image credit by Cgoodwin/Wikipedia)

クイーンズランド・パークス・アンド・ワイルドライフ・サービス (Queensland Parks and Wildlife Service) の高官であるアーニー・ライダー (Ernie Rider) 氏は顔・腕・胸をギンピに刺された1963年のことをこう回顧します。

「刺されて2、3日の間は絶えられないほどの激痛を感じたよ。

仕事も眠ることも何もできなかったからね、2週間かそこらは激痛が続いたよ。

その後も刺すような痛みは2年間も続いてね、冷たいシャワーを浴びるたびに激痛が戻ってくるんだよ。

こいつと比べられるものはないね、他のなによりも10倍はひどいよ!」

ギンピ・ギンピに刺されたときの激痛は半ば伝説化していると言っても過言ではありません。

多くの別称を持つギンピ・ギンピには「スーサイド・プラント (the suicide plant)」、つまり「自殺 (させる) 植物」という物騒この上ない呼び名もあります。

これはオーストラリアの元軍人シリル・ブロムリー (Cyril Bromley) 氏がギンピ・ギンピを研究する科学者マリーナ・ハーレイ (Marina Hurley) 氏に宛てた手紙の内容がその由来となっているかもしれません。

第二次大戦中、演習の際に自身もギンピ・ギンピの上に転落し3週間もの間、激痛のためベッドでのたうち回った経験をもつブロムリー氏ですが、ある将校は何も知らずにギンピ・ギンピをトイレットペーパー代わりに使ってしまい、その後、永続する激痛に耐えかね銃で自殺してしまった話もその手紙に記していたからです。

他にもギンピ・ギンピに刺された馬が「発狂して2時間以内に死んだ」「痛みに耐えかね崖から飛び降りた」といった実話なのか都市伝説なのか判断のつかないようなものもあります。

また、職業柄ギンピ・ギンピに刺される確率の高い林業労働者たちは刺された後の痛みを少しでも和らげようと潰れるまで酒を飲んだといいます。

ギンピ・ギンピに顔を刺された経験のあるクイーンズランドの野生動物生態学局のオーストラリア連邦科学産業研究機構 (CSIRO Division) に所属するレス・ムーア (Les Moore) 氏はいいます。

「Mr.ポテトヘッドみたいに顔が腫れ上がりましたよ。

アナフィラキシーショックに陥って、視力が回復するまでに何日もかかったんです。

刺されて数分もすると刺痛と焼け付くような感覚に襲われ、それはまるで誰かに酸をかけられたような感じでしたね。

口と舌が腫れ上がって呼吸困難に陥り、衰弱して茂みから抜け出す術すらわからなくなってしまい彷徨 (さまよ) うほかありませんでした」

刺された人たちの話はどれもこれも恐ろしいものばかり。

しかしこの刺毛、一部の動物には全く効果なく、ポッサムや鳥、昆虫の中にはギンピ・ギンピの葉を好んで食べるものも存在します。

ところでギンピ・ギンピは野イチゴのような赤い実をつけますが、ご丁寧にこの実すら刺毛で覆われており、実なら大丈夫だろう!と直接触ろうものなら激痛が待ち受けます。

ただしトゲさえ取ってしまえば人間にもこの実は食べられます、そこまでして食べる価値のある味なのかどうかは分かりませんが。

(参照サイト)
Australian Geographic



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