■かつてバルト海で目撃されたモンスター巻貝 ~ サルマティアン・シー・スネイル
今回はサルマティアン・シー・スネイル (Sarmatian Sea Snail)。
サルマティア (Sarmatia) とは紀元前3世紀から紀元後4世紀にかけて存在した遊牧民サルマタイの活動地域で黒海沿岸部を指します。
ということは黒海のUMAということになりますが、実はバルト海のUMAで、これはバルト海と命名される以前にサルマティア海と呼ばれていたことに由来し、そのことからも分かる通りかなり古いUMAで、16世紀から伝わります。
シー・スネイルは海棲巻貝のこと、つまりサルマティアン・シー・スネイルとは「バルト海に生息する海棲巻貝 (腹足類)」という意味となります。
「バルト海のカタツムリ」と言った方が分かり易いですね。
さて、カタツムリとは名ばかりで、本当に訳の分からないUMAです。
まず大きさは「樽ほど」もあるといわれ、まあ0.6~1メートルぐらいといったところでしょうか。
大きな螺旋を巻いた殻を背負うのは確かにカタツムリのトレードマークといえますが、顕著にカタツムリらしいといえるのはこの殻ぐらいです。
まずは頭部。
カタツムリの目が先端についている長い触角 (後触角) が鹿の角のように細かく分岐しており、その先端は球状の突起がついていました。
そのどれが目かというと実はそのいずれにも目はなく、目はその分岐した触覚とは別に生えている短い触角の先端についています。
吻 (鼻先) は猫に似ており、その下には大きな口があり髭も生えていました。
最もカタツムリらしくないのは「四肢」をもつこと、短いながら先端にかぎ爪のついた手足を持っているというのです。
まあクリオネ (ハダカカメガイ) も海棲の巻貝ですが殻を完全に失い、「流氷の天使」と呼ばれる所以の翼に似た足、翼足 (よくそく) を持ちますから、進化次第では四肢っぽいもつことも不可能ではないでしょう。
そのおかげで海の中だけではなく上陸も可能、陸で草を食 (は) み海に戻っていくといいます。
奇妙な姿をしているものの性質は極めて穏和、恐ろしいのはその見た目だけ、捕らえられて食べられていたといい、その味は大変美味で薬効もあったといいます。
(アラフラオオニシ)
(image credit by Love Nature)
んで、こんな訳の分からない生き物いる?
まあこの生物、頭部のシカのように分岐した触覚は説明不可ですが、触角と殻を取ればアシカやアザラシ等の鰭脚類 (ききゃくるい) そのものです。
逆に殻を脱ぎ捨てなければカメの可能性もあります、その場合は頭部の特徴が全く似ていません。
個人的にはおそらく伝聞により鰭脚類とウミガメがごっちゃになってハイブリッド化したように思われます。
まあこんな生物が居たら面白いですけどね。
ちなみにこれを鰭脚類やウミガメではなく伝えられるように巻貝のUMAとして考えた場合、そんなでかいカタツムリが存在できるのかというと実は大きさ的には全然可能です。
(ダイオウイトマキボラ)
(image credit by Wikicommons)
世界最大の腹足類、オーストラリアン・トランペットことアラフラオオニシ (Syrinx aruanus) は最大殻長72センチ、北米に生息するダイオウイトマキボラ (Triplofusus papillosus) も最大殻長60センチと大きさ的には全然いけちゃうのです。
絶滅種のキャンパニレ・ギガンテウム (Campanile giganteum) に至っては殻長が120センチ以上もありました。
もちろんいずれの種も四肢はありませんけどね。
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