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2024年5月31日金曜日

バルト海で目撃された四肢を持つモンスター巻貝 ~ サルマティアン・シー・スネイル


■かつてバルト海で目撃されたモンスター巻貝 ~ サルマティアン・シー・スネイル

今回はサルマティアン・シー・スネイル (Sarmatian Sea Snail)。

サルマティア (Sarmatia) とは紀元前3世紀から紀元後4世紀にかけて存在した遊牧民サルマタイの活動地域で黒海沿岸部を指します。

ということは黒海のUMAということになりますが、実はバルト海のUMAで、これはバルト海と命名される以前にサルマティア海と呼ばれていたことに由来し、そのことからも分かる通りかなり古いUMAで、16世紀から伝わります。

シー・スネイルは海棲巻貝のこと、つまりサルマティアン・シー・スネイルとは「バルト海に生息する海棲巻貝 (腹足類)」という意味となります。

「バルト海のカタツムリ」と言った方が分かり易いですね。

さて、カタツムリとは名ばかりで、本当に訳の分からないUMAです。

まず大きさは「樽ほど」もあるといわれ、まあ0.6~1メートルぐらいといったところでしょうか。

大きな螺旋を巻いた殻を背負うのは確かにカタツムリのトレードマークといえますが、顕著にカタツムリらしいといえるのはこの殻ぐらいです。

まずは頭部。

カタツムリの目が先端についている長い触角 (後触角) が鹿の角のように細かく分岐しており、その先端は球状の突起がついていました。

そのどれが目かというと実はそのいずれにも目はなく、目はその分岐した触覚とは別に生えている短い触角の先端についています。

吻 (鼻先) は猫に似ており、その下には大きな口があり髭も生えていました。

最もカタツムリらしくないのは「四肢」をもつこと、短いながら先端にかぎ爪のついた手足を持っているというのです。

まあクリオネ (ハダカカメガイ) も海棲の巻貝ですが殻を完全に失い、「流氷の天使」と呼ばれる所以の翼に似た足、翼足 (よくそく) を持ちますから、進化次第では四肢っぽいもつことも不可能ではないでしょう。

そのおかげで海の中だけではなく上陸も可能、陸で草を食 (は) み海に戻っていくといいます。

奇妙な姿をしているものの性質は極めて穏和、恐ろしいのはその見た目だけ、捕らえられて食べられていたといい、その味は大変美味で薬効もあったといいます。

(アラフラオオニシ)
(image credit by Love Nature)

んで、こんな訳の分からない生き物いる?

まあこの生物、頭部のシカのように分岐した触覚は説明不可ですが、触角と殻を取ればアシカやアザラシ等の鰭脚類 (ききゃくるい) そのものです。

逆に殻を脱ぎ捨てなければカメの可能性もあります、その場合は頭部の特徴が全く似ていません。

個人的にはおそらく伝聞により鰭脚類とウミガメがごっちゃになってハイブリッド化したように思われます。

まあこんな生物が居たら面白いですけどね。

ちなみにこれを鰭脚類やウミガメではなく伝えられるように巻貝のUMAとして考えた場合、そんなでかいカタツムリが存在できるのかというと実は大きさ的には全然可能です。

(ダイオウイトマキボラ)
(image credit by Wikicommons)

世界最大の腹足類、オーストラリアン・トランペットことアラフラオオニシ (Syrinx aruanus) は最大殻長72センチ、北米に生息するダイオウイトマキボラ (Triplofusus papillosus) も最大殻長60センチと大きさ的には全然いけちゃうのです。

絶滅種のキャンパニレ・ギガンテウム (Campanile giganteum) に至っては殻長が120センチ以上もありました。

もちろんいずれの種も四肢はありませんけどね。

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2024年5月30日木曜日

極寒のシベリアに棲息する謎のウマ ~ ラムート・ワイルド・ホース


■極寒のシベリアに棲息する謎のウマ ~ ラムート・ワイルド・ホース

ラムート・ワイルド・ホース (Lamut wild horse)、もしくは単にラムート・ホース (Lamut horse) と呼ばれるこの謎のウマは、シベリアおよびロシア極東に住むツングース系民族、ラムート人 ((Lamut people) によって伝えられたことにその名を由来します。

ちなみに現在ラムート人はエヴェン人 (Evens) と呼ばれ、ロシア連邦の北島に位置し、ロシア連邦の国土のほぼ1/4を占めるサハ共和国にエヴェン人の半数が住んでいます。

まあエヴェン人の住む地域は大変過酷な地域に集中しているということです。

さてこのラムート・ワイルド・ホースとはどんな生物か?

まずエヴェン人とこの謎のウマの関係ですが、エヴェン人はこの馬を食料として調達しており、先住民族とUMAの関係にありがちな神聖視されるような存在ではない、つまりそれほど珍しい存在ではない、というのが大きな特徴です。

(ヤクート馬)
(image credit by Wikicommons)

この馬の身長は大きくても1.5メートル以下、エヴェン人の住む地域に棲息する野生のウマ、ヤクート馬 (Yakutian horse) と同じぐらいの大きさですが、明確に異なる馬との認識です。

ちなみにヤクート馬は1年の程簿2/3が冬という極寒に耐えうる進化を遂げ、その耐寒性はマイナス70度にも耐えることができます。

地元ではヤクート馬もまた食肉として狩られ利用されますがその耐寒性から脂肪は分厚く珍味だということです。

さて謎の野生馬、ラムート・ワイルド・ホースの毛並みはというとヤクート馬より長く、その色は灰白色、いわゆる芦毛というやつですね。

ロシアの動物学者オイゲン・ヴィルヘルム・ファイゼンマイヤー (Eugen Wilhelm Pfizenmayer) 博士はエヴェン人からこの謎のウマの話を聞き、ヤクート馬とは異なる未知の野生馬が存在すると考えました。

(モウコノウマ)
(image credit by Wikicimmons)

しかしこの推測に同意する生物学者は少なく、ラムート・ワイルド・ホースの正体はモウコノウマ (Equus ferus) に過ぎないのではないかと反論されたりもしています。

実はこのモウコノウマ、野生下では1970年前後で一旦絶滅しており、現在存在するのは動物園で繁殖していた個体を再導入したものです。

シフゾウ (Elaphurus davidianus) なんかと同じですね。

しかしモンゴルの草原地帯に棲息していたモウコノウマがエヴェン人の住むほど極寒の北方で食料になるほど潤沢にいたとは少々考えづらいところです。

またモウコノウマよりもヤクート馬の方が大きく、エヴェン人の証言によればラムート・ワイルド・ホースはヤクート馬よりもさらに大きいということでやはり異なる種である可能性があります。

というわけで未知のノウマということにしておきましょう。

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2024年5月29日水曜日

墓地を見回る不気味なオオカミ ~ スモーク・ウルフ (グリム)


■墓地を見回る不気味なオオカミ ~ スモーク・ウルフ (グリム)

今回はスモーク・ウルフ (Smoke Wolves)。

スモーク・ウルフはアパラチアの墓地を守るというUMAで、少々パラノーマル・宗教色が強めです。

またの名をグリム (Grim) といいますが、この呼び名はイギリスのUMA、チャーチグリム (Church Grim) に由来しているのは確実で、ヨーロッパからの入植者たちが持ち込んで北米中西部に民間伝承として広がったのでしょう。

まずは本家のチャーチ・グリムを見ていきましょう。

イギリス版のチャーチ・グリムは教会を守る黒く大柄な犬で赤い目をしています。

教会近くを彷徨 (さまよ) い、教会を冒涜するものを襲ったり追い払う教会にとって守護霊的な存在です。

この伝説から今日でも実際に黒い犬を飼っている教会もあるといいます。

しかしかつてチャーチ・グリムは単に伝説というだけでなく本気で信じられた守護霊で、なんと教会はチャーチ・グリムを「創っていた」残虐な過去があります。

というのもチャーチ・グリムは霊的で実体を持たない存在であり、そのまま黒い犬を番犬として飼っても肉体を持つ犬にそのスピリチュアルな力は持ちえないからです。

そのため黒犬を教会の礎石 (そせき) の下に生き埋めすることにより、その犬が死にチャーチ・グリムに生まれ変わると信じ、そういった行為を習慣化していたことが民俗学の研究で分かっています。

さてアパラチアのスモーク・ウルフ (グリム) はどうでしょう?

実はアパラチアのスモーク・ウルフもチャーチ・グリムとほぼ全く同じ性質で、飼い犬を墓地に生き埋めにすることにより守護霊として生まれ変わると初期の入植者たちは信じていたといいます。

生き埋めにされて死んだ飼い犬はやはり黒い犬、「グリム」として生まれ変わり、真っ赤な目をしています。

そして墓地の周りを彷徨い不審者を追い払います。

グリムは時が経つとスモーク・ウルフに変わるといいます。

この地域では他にも亡霊犬 (オオカミ)、スナーリー・ヨーの伝説がありますが人間に害を及ぼす真逆の性質でグリムとは異なるUMAと考えて問題ないでしょう。

しかしスモーク・ウルフとなったグリムは非常に凶暴となり、人間にもフレンドリーな存在ではなくなるとも言われています。

北米のこの地域の山に入った際、草や枝で作ったバリケードで侵入が難しい場所に行き当ったらそこから先へは進まない方がいいといいます、なぜならその先はグリムから返信し危険な存在となったスモークウルフのテリトリーと呼ばれているからです。

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2024年5月28日火曜日

幻獣だと思っていたら実在した巨大ヤモリ ~ カウェカウィアウ


■幻獣だと思っていたら実在した巨大ヤモリ ~ カウェカウィアウ

マオリの神話に登場する謎の爬虫類カウェカウィアウ (Kawekaweau)、ニュージーランドの北島で目撃されるUMAです。

カウェカウィアウは神話上の動物であると同時に実在する生物であるとの位置付けであり、そういった位置づけにある動物にありがちな非常に捉えどころのない性質を持ち合わせています。

それは爬虫類、特にトカゲに似ており、樹上性であり、水棲であり、陸棲でもあり、飛翔もできる、、、

一体どこに棲んでいるのやら。

しかしこの生物は一般的なUMAにありがちな「あまりに大き過ぎる」という欠点を持っておらず、その大きさは2フィート (約60センチ) ととても現実的なものでした。

それならあれでしょ、あれ、トゥアタラ (tuatara) ことムカシトカゲ (Sphenodon punctatus)。

ちなみに英名の「トゥアタラ」という呼称はマオリ語に由来し「背中の峰 (棘)」を意味します。

ムカシトカゲのオスなら尾を入れて24インチ (約60センチ)、最大で30インチ (約80センチ) ほど、大きさ的にもぴったりです。

しかしカウェカウィアウの正体はトゥアタラではないというのです。

W.ギルバート・メア (W. Gilbert Mair) 少佐は、カウェカウィアウについてマオリの酋長から聞き、1873年にその内容を報告しています。

マオリの酋長によれば、1870年に北島のテ・ウレウェラ (Te Urewera) にあるワイマナ渓谷 (Waimana) でカウェカウィアウを見つけ殺したことがあるというのです。

その生物の体長は2フィートぐらい、胴の太さは人間の手首ほど、体色は茶で身体の縦方向に褐色の縞模様が走っていたといいます。

バカげた大きさではないですし、全然あり得る大きさですが確かにトゥアタラっぽくはない感じです。

でもまあ所詮神話上の動物だし、酋長の話も本当なんだかどうなんだか、、、

結局それってトゥアタラのことだったんじゃないの?

ところが。

マイア少佐がマオリの酋長から伝え聞いた話を報告して100年以上もたった1986年、すっかり忘れられていたころに突如カウェカウィアウが脚光を浴びます。

フランスでもっとも著名な博物館のひとつ、マルセイユ自然史博物館の地下でラベルも何も貼られていない奇妙な剥製が発見されたのです。

それは体長2フィートもある大きなヤモリでした。

(ツギオミカドヤモリ)
(image credit by Wikicommons)

ニューカレドニアに棲息する現世最大のヤモリ、ツギオミカドヤモリ (Rhacodactylus leachianus) の体長17インチ (約43センチ) よりも遥かに大きなヤモリです。

ラベルがないので採取された場所を含め何もかも全てが謎、しかしこれがあの酋長の語っていたカウェカウィアウの正体なのではないか?そう考えられるようになりました。

結論から言うと、この剥製はミトコンドリアのDNA解析からニューカレドニア産のイシヤモリ科 (Diplodactylidae) に属することが判明し、残念ながらニュージーランド産ではないことが判明しました。

(カウェカウィアウことデルコートオオヤモリの復元模型)
(image credit by Wikicommons)

そのヤモリは現在デルコートオオヤモリ (Hoplodactylus delcourti / Gigarcanum delcourti) と命名され世界最大のヤモリと知られていますが、19世紀中に絶滅したものと考えられています。

ではやはりカウェカウィアウは幻獣にすぎないのか?

実はマイア少佐が酋長から話を聞く僅か2年前にもニュージーランドの博物学者ウォルター・ブラー (Walter Buller) 博士がこう記した記録が残っています。

「カウェカウィアウという美しい縞模様をもつトカゲは最大で体長2フィートに達することがありますが、まだ記載されていません。

以前はオークランド北部の森林にたくさん棲息してたものの現在ではほとんど見られなくなってしまいました。

ホキアンガのF.E.マニング氏は雌雄の生きたペアを入手しましたが、科学にとって大変な損失である事実を述べますと、その一匹は猫に食べられてしまい、もう一匹は脱走してしまいました」

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