このサイトでもいくつか紹介しているフィアサム・クリッター (Fearsome critters)。
1900年前後のランバージャック (木こり) のほら話に出てくる奇妙な生物たちの総称でUMAというより民間伝承的生物です。
今回紹介するスノリゴスター (Snoligoster) もフィアサム・クリッターのひとつに数えられる生物です。
フィアサム・クリッターの生態はあり得ないようなものが多いですが、外見は野生動物をちょっといじったり、複数の動物の特徴を混ぜ合わせたようなものも多く、中には実在してもおかしくないようなものもあります。
そのため架空の生物であるはずのフィアサム・クリッターの目撃もあるほどです。
スノリゴスターはアメリカ南部の沼や湖、特にフロリダのオキーチョビー湖 (Lake Okeechobee) およびその周辺に生息するといわれる生物です。
見た目はワニに似ているものの、四肢やヒレが一切なく背中から垂直に長いトゲをはやしているのが特徴です。
尾の先端には3枚のプロペラ状の骨板があり、見た目だけでなく実際尾を振るとプロペラのように回転するため水中では推進力を生み出し高速で泳ぐことができるといいます。
四肢はないもののヘビのように体をくねらせ陸上でも活動できます。
肉食で人間を好んで捕食しますが、捕まえた人間を尾で持ち上げ背中のトゲに串刺しにします。
これがスノリゴスターです。
こんな妖怪じみた生物が実在するわけはありません。
しかしこの「四肢・ヒレのないワニ」といった特徴はアリゲーターガー (Atractosteus spatula) を彷彿とさせます。
アリゲーターガーの背ビレ・尻ビレは体の後端に集中し、胸ビレ・腹ビレも体に比して小さいことから一見したところではヒレは目立ちません。
体全体はゴツゴツした硬いガノイン鱗で覆われておりまさにワニを感じさせます。
しかしワニに見えてワニではない、かといってこれは本当に魚なのか?
初めてアリゲーターガーを見た人々はきっと驚いたに違いありません。
フィアサム・クリッターの題材にはうってつけです。
スノリゴスターはワニが元になっているのは間違いありませんが、その形成にアリゲーターガーも一役買ったに違いありません。
実際、スノリゴスターが生息しているといわれるオキーチョビー湖にもアリゲーターガーは生息します。
せっかくなので実際のアリゲーターガーを見ていきましょう。
アリゲーターガーはガー最大にして北米最大の淡水性生物のひとつで、最大10フィート (約3メートル)、350ポンド (約159キロ) に成長すると言われています。
いくらなんでも3メートルは大げさでは?と思ってしまいますが、公式記録で8.5フィート (約2.59メートル)、327ポンド (148キロ) というものがあり、十分可能性はありそうです。
魚類とは思えない大きな口の中にはワニさながらに鋭い歯が並んでいますが、この歯列が内側と外側、二重になっているのもアリゲーターガーの特徴です。
(アリゲーターガーの二重の歯列)
(image credit by Atsme (Wikimedia))
性成熟に時間がかかり、オスは5年、メスは10年も要します。
巨大化するだけあって寿命も長くオスで25年、メスは50年以上といわれています。
その見た目から非常に危険な存在と考えらていたため、かつて害魚として駆除対象にありましたが現在ではそれは間違った認識であったことが分かり保護の対象となっています。
成体になるまで時間を要することから極端に数を減らすと回復するのが難しくなりますが、現在の生息数は保護の甲斐あって比較的安定しているようです。
基本的に魚食性で、大型の個体であれば小さな水鳥や哺乳類等も捕食します。
凶暴そうな外見ですが能動的に人間を襲ったという明確な記録は残っておらず (釣り上げた際、針を外すときに咬まれた、とかそういったものは含まず)、人間に対しては概ね安全な生物と認識して問題ないようです。
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