2022年8月7日日曜日

誰でも知ってる即席ペット ~ シーモンキー

(image credity by Transcience Corporation)

■さあ シーモンキー を飼ってみよう。ところでシーモンキーって?
 
シーモンキー買ったので、シーモンキー知らない人用に書いておきますね。

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「ユダヤ人は商売がうまい」「ユダヤ人には成功者が多い」といったようなことはよく耳にしますよね。

実際、世界の人口比で圧倒的少数派にもかかわらず、世界有数の大金持ちにユダヤ人が多いのは事実です。

1950年代、あるユダヤ人男性がペットショップを訪れ、バケツの中を泳ぎ回る熱帯魚のエサに興味を惹かれました。

その男の名は、ハロルド・ネイサン・ブラウンハット (Harold Nathan Braunhut)、後にハロルド・フォン・ブラウンハット (Harold von Braunhut) と改名し、この「熱帯魚のエサ」で巨万の富を築く人物です。

そのエサとは学名アルテミア (Artemia)、英名ブライン・シュリンプ (brine shrimp) と呼ばれるエビのような姿をした小さな甲殻類です。

アルテミアの卵は何年間も、一説には20年もの長期間、乾燥に耐えることができ、しかも塩水に浸せば24時間以内に孵化するという不思議な特性を備えます。

この乾燥耐久卵はクマムシの無敵形態で知られる、いわゆるクリプトビオシス (cryptobiosis) 状態です。

ブラウンハット氏はアルテミアのこの特性に目をつけ、試行錯誤の上、1957年「インスタント・ライフ (瞬時の生命)」という名でアルテミアの乾燥卵を売り出すことにします。

もちろん商品名は、アルテミアの乾燥耐久卵が「水に浸すと瞬時に生命が孵る」ことに由来します。

インスタント・ライフは爆発的なヒット!、、、とはいかず、目論見は完全に外れまったく売れませんでした。

というより、取り扱ってくれるお店もほとんどなく、売れる売れない以前に、販売すること自体が困難だったといったほうが正しいかもしれません。

アルテミアの卵をインスタント・ライフと言い換えただけでは買い手はつかなかったのです。

「インスタント・ライフ」発表後から5年の歳月が流れました。

(image credity by Transcience Corporation)

ブラウンハット氏はその間、ただ手をこまねいていたわけではありません。

彼はアルテミアが大きくなると、尾がサルのように長くなることに着目し、商品名を「インスタント・ライフ」改め「シー・モンキー (正確にはシーモンキーズ, Sea-monkeys)」にし、さらに当時の売れっ子イラストレーター、ジョー・オーランド (Joe Orlando) 氏に人間のような四肢や頭部を持つ「シーモンキー」をデザインしてもらいます。

そして販売形態の見直しを図り、「浄水器」「瞬時の生命の卵」「成長食品」と書かれた3つの小袋をひとつのセットとすることにしました。

ちなみに、この時の販売方法は現在でも踏襲されており、つまりこの時点でシーモンキーの販売方法は確立されたといえます。

あとは世に出すだけ、1972年、「シーモンキー」を雑誌の通販ページに載せたり、付録につけたりすると空前のヒットを記録します。

この爆発的なヒットは、ペットを小袋で販売するというユニークさ、シーモンキーというネーミングセンス、そしてオーランド氏のイラストの相乗効果によるまさにミラクルで、いずれかが欠けていたら起きなかったでしょう。

シーモンキー、つまり「海の猿」という名前と裏腹に、アルテミアは海の生き物でもなければ猿でもありません。

それどころか猿に似てすらいません。

そんな熱帯魚のエサとして売られていた地味で小さな甲殻類が子供たちのアイドルへと大変貌を遂げたのです。

やはりユダヤ人は目の付け所が違うのかも?と思わせる逸話です。

しかしその後、「全然イラストと違うじゃねーか」「すぐ死ぬじゃねーか!」とイメージ戦略で爆発的なヒットをさせたと同時にクレームも凄かったようで、見た目はどうしようもないですが、脆弱な体質を改善、さらにより大きく育つようにと品種改良を重ねます。

そして誕生したのがアルテミア・ニオス (Artemia NYOS) です。

種小名の "NYOS" はブラウンハット氏とともにの品種改良の協力した ドクター・アンソニー・ダゴスティーノ (Dr. Anthony D'Agostino) 氏の務めるニューヨーク海洋科学研究所 (New York Ocean Science Laboratories) の頭文字で、いわゆる献名といってもいいでしょう。

但し、学術的に認められた種ではありません。

(アルテミア・サリナ)

確実ではありませんが、アルテミア・ニオスの品種改良の元となったのは、アルテミア類の中で比較的体が丈夫といわれているアルテミア・サリナ (Artemia salina) のようです。

1度目は1970年、2度目は1995年、この2回の大きな品種改良により、脆弱だったアルテミアはより頑丈に、より大きく、そしてより長生きするようになりました (と公式サイトには書いています(笑))。

通常、アルテミアの寿命は2~3ヶ月といわれているものの、アルテミア・ニオスは最大2年、非公式ですが、5年生きたという記録もあります。

うまく飼えば2センチぐらいまで成長します。

尚、ブラウンハット氏が「アルテミア・ニオスをシーモンキー」と商標登録したことにより、「シーモンキー」と唱っていいのはアルテミア・ニオスのみで、それ以外のアルテミア類はシーモンキーと名乗ることはできません。

よって現在「シーモンキー」というタイトルで売られているものはアルテミア・ニオスのみ (のはず) です。

日本ではシーモンキーに加え「ホウネンエビ」や「おばけえび」「アルテミア」という名で、シーモンキーに似た生物が売られていますが、アルテミア・ニオスではありません。(そもそもホウネンエビはアルテミア類ではありません)

さあ、皆さんも僕と一緒にシーモンキーに挑戦してみてはいかかでしょうか?

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