ラクダといえば中東の砂漠地帯に生息するイメージですが、実際は人為的に持ち込まれて中国やオーストラリアなどでも野生化しています。
そうはいっても北米とラクダはやはり結びつきません。
しかし、もともとラクダの祖先は北米大陸から発生しており、体高3.5メートルを誇る絶滅した巨大ラクダ、ティタノティロプス (Titanotylopus) も北米に生息していました。
ティタノティロプスは近いうちに記事にする予定があるのでここでは詳しく書きません。
ティタノティロプスは3万年ほど前に絶滅してしまいましたが、カメロプス・ヘステルヌス (Camelops hesternus) にいたっては更新世の後期、約11000年前まで北米に生息していました。
そんな中、アメリカの南西部、ネバダ州、アリゾナ州、テキサス州といった日本人でも砂漠のイメージのあるこれらの州の砂漠地帯でラクダの目撃情報があります。
民間伝承としても伝えられるこの広範囲で目撃されるラクダたちは、ゴースト・キャメル (Ghost camel) と総称されます、存在するはずのないラクダたちだからです。
正体をめぐりいくつかの説があります。
1つ目は単純に超常的な現象と考えるものです。
ゴースト・キャメルという呼び方はおそらく幽霊船ことゴースト・シップ (Ghost ship) にならった呼び名であり、心霊現象のひとつとしてとらえているのでしょう。
人を乗せたラクダの群れが夜な夜な出没する、などといった目撃情報があるようであれば説明がつかず心霊現象ととらえられても仕方ないことでしょう。
2つ目は絶滅したと思われていたラクダが細々と生き残っていたのでは、という説です?
UMA的にはそういった説が好まれますし、恐竜などと違い「わずか」11000年前まで北米の大地を闊歩していたことを考えるとその可能性も考えたくなります。
そして3つ目は上記2つと比べるとより可能性を感じる説です (といってもかなり確率は低いものですが)。
実は19世紀半ば、アメリカでもヒトコブラクダの導入をしています、ラクダの軍隊、つまり駱駝騎兵 (らくだきへい) を組織する計画があったからです。
2回に分け、計77頭のラクダが輸入されました。
ラクダ軍を組織したのは英雄エドワード・フィッツジェラルド・ビール (Edward Fitzgerald Beale) 中尉、ラクダをカリフォルニアに連れてくると調教師にラクダの調教を委ねます
ビールはラクダ軍の導入は正解だったと宣言するものの、実際はラクダの調教師を蹴る、噛じる、唾を吐きかける等、まったく手に負えない存在だったようです。
ビールは有事 (モルモン教徒との戦争) の際にラクダを使うため、とカリフォルニアに留めたものの、ラクダ軍が戦争に使われることはなかったといいます。
ただし、この後に起きた南北戦争で (運搬や悪路の移動等かもしれませんが) ラクダが戦争に使われた可能性はあるようです。
さて、どうにも使い物にならないラクダですが、導入した手前格好のつかない軍はラクダの有効利用を画策しました、ラクダエクスプレス (camel express) です。
つまりはラクダの宅配便です。
ラクダが重い荷物を物ともせずに運べることに着目したのです。
また、のんびり顔でゆっくり歩いているイメージですが、瞬間的に出せるスピードは凄まじく、時速65キロも出すことができます。
驚異的な積載能力、馬にも劣らぬスピード、砂漠も渡り切る無尽蔵の体力、ラクダの宅配サービスはラクダ導入の失敗をもみ消すに十分です。
ラクダ、それはまるで宅配便をやるために生まれてきたような動物、なぜこんな簡単なことに気づかなかったのでしょう。
しかしラクダエクスプレスが実用化されることはありませんでした。
導入前の試験段階で頓挫したのです。
たしかに瞬間的に速度は出せますが、当然ながら常時出せるわけもなく、スピードを重視し無理やり走らせまくった結果、ラクダエクスプレスの試験に使われたラクダたちは疲労がたたり全滅してしまいました。
人間のエゴに散々振り回された挙げ句、生き残ったラクダたちはもう使い道がないと人知れずそのまま野に放たれたといいます。
それでも20世紀初頭まではなんとか目撃証言があったといいますが、その後目撃は絶えおそらく死に絶えたものと考えられています。
とはいえ、当然ながら野に放ったラクダたちは追跡調査されるわけもなく、その後かれらがどうなったかなど正確に知る人はいません。
そう、ゴースト・キャメルの正体はかれらが野生化に成功した末裔かもしれないのです。
(参照サイト)
Weird California
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