■海賊の財宝を守る怪物 ~ グロスター・グール
今回はグロスター・グール(Glocester Ghoul)。
アメリカ・ロードアイランド州に伝わる、知る人ぞ知る怪物です。
ロードアイランド州はアメリカ合衆国で最も面積の小さい州ですが、UMAの話となると意外に濃い土地です。
日本のUMAファンにも知られているブロック島の「ブロック・ネス・モンスター」や、ビッグフット型UMAの「ビッグ・ローディ(Big Rhodey)」なども、この小さな州に伝わっています。
その中でもグロスター・グールは少々異色の存在です。
なぜなら、その伝承には海賊の財宝、実在した凶悪犯、怪物、そして怪奇小説家H・P・ラヴクラフトまで登場するからです。
― 海賊の財宝を掘った男たち ―
グロスター・グールの伝説は、1830年代にまで遡ります。
1833年、あるいは1839年頃、ロードアイランド州グロスターのペイジ農場(Paige Farm)付近の森で、数人の男たちが夜中に地面を掘っていました。
彼らが探していたのは、海賊キャプテン・キッド(Captain Kidd)が隠したとされる財宝でした。
暗闇の中でシャベルを使って土を掘り続けていると、突然、周囲に異様な悪臭が漂い始めます。
それは「焦げた羊毛」のような、強烈で不快な臭いだったといいます。
そして次の瞬間、森の暗闇から、金属同士が擦れ合うような不気味な音が聞こえてきました。
ジャラジャラとした音。
あるいは、鋼鉄がぶつかり合うような音。
男たちの前に現れたのは、人間とも獣ともつかない怪物でした。
あまりの恐怖に、男たちは掘り道具をその場に放り出して逃げ出したと伝えられています。
そして、この話をさらに奇妙なものにしているのが、その中にいた人物です。
アルバート・W・ヒックス(Albert W. Hicks)という男でした。
― 悪党さえ恐れた怪物 ―
アルバート・W・ヒックスは、後にアメリカ史上「最後に海賊罪で処刑された男」として知られることになります。
船長らを斧で容赦なく惨殺した冷酷非道な男であり、常人ならざる凶暴性を備えた人物でした。
そんな修羅場をくぐり抜けてきた男が、森の中で遭遇した怪物を恐れて逃げ出した。
これがグロスター・グールの伝説に強烈な印象を与えています。
もちろん、ヒックスとグロスター・グールの遭遇を裏付ける確実な一次資料が残っているわけではありません。
しかし、後世の伝承ではこの実在の犯罪者と怪物の遭遇が結び付けられ、「あのアルバート・W・ヒックスでさえ逃げ出した怪物」という、恐ろしい物語へと発展していったようです。
― 炎の目を持つ怪物 ―
その後に語られた目撃談では、グロスター・グールはさらに異様な姿として描かれています。
大きさは牛ほどとも、1892年の記録では身長10フィート(約3メートル)ほどともいわれています。
頭には雄羊や雄牛を思わせる巨大な角があり、二本足で立つ人間のような姿をしていたという証言もあります。
そして何より奇妙なのが、その体です。
全身が、ハマグリの殻ほどの大きさを持つ硬く不気味な鱗で覆われていたとされます。
目は巨大で赤く輝き、まるで火のついた器のようだったとも伝えられています。
さらに伝承の中には、口や鼻だけでなく、目からも火の玉を放ったという、とんでもない描写まで登場します。
これが単なる野生動物の目撃談なのか、それとも最初から怪談として語られたものなのか。
現在となっては判断できません。
― 60年ぶりに現れた怪物 ―
グロスター・グールは、その後しばらく姿を消します。
しかし1896年、今度はニール・ホプキンス(Neil Hopkins)という地元住民が、夜道を歩いている際に奇妙な獣と遭遇したと伝えられています。
ホプキンスが目撃したのは、まるで全身が炎に包まれているかのような怪物でした。
そして、かつての伝承と同じように、鋼鉄同士がぶつかり合うような金属音を立てながら迫ってきたといいます。
怪物は熱い息を吐きながらホプキンスを追跡しました。
彼は必死に逃げ、なんとか怪物を振り切ることに成功します。
そしてグロスター・グールは、そのまま鬱蒼とした森の中へ姿を消したとされています。
最初の伝承から約60年。
同じような怪物が再び現れたことで、グロスター・グールの伝説は現在まで語り継がれることになりました。
― 財宝の番犬だったのか ―
では、この怪物は一体何だったのでしょうか。
現地で語られている説の一つが、「財宝の守護獣」というものです。
そもそもグロスター・グールの最初の遭遇は、キャプテン・キッドの財宝を探していた男たちによるものでした。
そのため、キッドが財宝を隠す際、誰にも盗まれないように怪物を呼び出し、財宝を守らせたのではないかという伝説が生まれたのです。
いわば、海賊が残した財宝を守る「地獄の番犬」です。
もちろん、キャプテン・キッドが怪物を召喚したという証拠はありません。
より現実的には、夜の森で遭遇した大型のクマなどが恐怖によって異様な姿へと変換され、後世の伝承の中で「鱗を持ち、炎を吐く怪物」へと変化していった可能性も考えられます。
またロードアイランド州には、怪奇現象が多発する地域として知られる「ブリッジウォーター・トライアングル」が存在するため、そこから異次元の生命体が迷い込んだのではないか、というオカルト的な説まであります。
― ラヴクラフトが見た怪物 ―
そして、グロスター・グールの伝説には、もう一人の興味深い人物が関係しているといわれています。
H・P・ラヴクラフト(H. P. Lovecraft)です。
クトゥルフ神話の生みの親として知られるラヴクラフトは、ロードアイランド州プロビデンスの出身でした。
彼は地元ニューイングランドに伝わる古い伝承や、森や墓地、廃墟などにまつわる怪談を好み、そうした土地の雰囲気を自身の作品に取り込んでいます。
そのため、ロードアイランドに伝わるグロスター・グールのような怪物伝説も、ラヴクラフトの創作世界を形作った背景の一つだったのではないかと推測されることがあります。
ただし、ラヴクラフトがグロスター・グールを直接のモデルとして作品を書いたことを示す確実な資料があるわけではありません。
とはいえ、鱗に覆われた異形の怪物、炎のように輝く目、深い森から現れる名状しがたい存在というイメージは、確かに彼の描いた怪奇世界を連想させます。
海賊が隠した財宝を探しに森へ入り、そこで怪物に遭遇した凶悪な海賊。
60年後には別の男が、炎に包まれた怪物に追われる。
そして、その土地からは後にクトゥルフ神話を生み出した作家まで登場する。
グロスター・グールは、実在の歴史と怪談、海賊伝説とUMAが奇妙に絡み合った、ロードアイランドらしいローカル・モンスターなのです。
UMA探しの旅は終わらない (国内外1000体以上のUMAが待っています)
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