■メキシコ上空を舞う怪鳥 ~ タマウリパスの巨鳥(リオグランデ・バレーの怪鳥)(セクション1)
今回はタマウリパスの巨鳥(The giant birds of Tamaulipas)。
メキシコ北東部、メキシコ湾西岸の中央部に位置するタマウリパス州で目撃される、飛翔系UMAです。
ただし、この怪鳥にはいくつかの呼び名があります。
海外のUMA文献やUMAコミュニティでは、特に「リオグランデ・バレーの怪鳥(Rio Grande Valley Big Bird)」や「テキサス・ビッグ・バード(Texas Big Bird)」という名称が一般的です。
一方、近年SNSやRedditなどでメキシコ側の目撃談を扱う際には、「タマウリパスの巨鳥(The giant birds of Tamaulipas)」という呼び名も主流になってきています。
本記事では、メキシコ側から語られる「タマウリパスの巨鳥」も含め、この一連の怪鳥伝説を「リオグランデ・バレーの怪鳥」として紹介します。
― SNSから生まれた巨鳥 ―
タマウリパスの巨鳥は、SNSやRedditの「r/Cryptozoology」などを中心に、近年になって注目され始めたUMAです。
そのため、現時点では古くから伝わる地域伝承というよりも、インターネット上で広がった「ネットロア」としての性格が強い存在といえます。
しかし、だからといって完全な創作と片付けてしまうのも少々早いかもしれません。
というのも、メキシコ北東部からテキサス南部にかけては、以前から巨大な飛翔生物にまつわる目撃談や伝承が存在しているからです。
代表的なのが、北米全域で目撃されるサンダーバード(Thunderbird)。
さらに、タマウリパス州と国境を接するアメリカ・テキサス州南部では、前述した1970年代に「テキサス・ビッグ・バード(Texas Big Bird)」と呼ばれる巨大な鳥の目撃が相次ぎました。
この事件は「リオグランデ・バレーのビッグ・バード(The Big Bird of the Rio Grande Valley)」として、現在でも海外のUMA資料などに記録されています。
また、タマウリパス州の近隣に位置するヌエボ・レオン州のモンテレイ周辺や、ハリスコ州などでは、巨大な鳥人とされる「マンバード(El Hombre Pájaro)」の伝承も知られています。
さらに、メキシコ北部からテキサス州南部にかけては、「ラ・レチュサ(La Lechuza)」という怪異の伝承も存在します。
ラ・レチュサは単なる巨大なフクロウではなく、魔女が鳥の姿に変身したもの、あるいは人間の顔や目を持つ魔女の化身などとされる、シェイプシフター的な存在です。
そのため、巨大な鳥というよりも、鳥人や妖怪、魔女の伝承に近い性格を持っています。
このあたりは、メキシコとテキサスの国境地帯で、巨大鳥や鳥人、怪異の伝承が複雑に重なっていることを感じさせる部分でもあります。
このように見ていくと、タマウリパスの巨鳥そのものはSNSで近年注目された比較的新しいUMAである一方、その周辺地域には以前から巨大な鳥や鳥人、巨大なフクロウなどにまつわる伝承が存在していることが分かります。
もちろん、これらがすべて同一の生物を指しているという証拠はありません。
それでも、地理的に近い地域で似た特徴を持つ飛翔系UMAが複数語られていることを考えると、タマウリパスの巨鳥を単純なネットロアとして片付けてしまうのは、少し面白味に欠けるのではないでしょうか。
― 巨鳥の姿 ―
では、実際に目撃された怪鳥はどのような姿をしていたのでしょうか。
海外のUMA研究家や目撃談をまとめると、通常の大型鳥類とは明らかに異なる巨大な姿が報告されています。
最も特徴的なのが、その大きさです。
体長は人間の成人ほど、約1.5~1.8メートルにも達するとされ、翼を広げた長さは3メートルから、場合によっては4.5メートル以上に達したという証言まであります。
この地域で知られている大型の猛禽類としてはイヌワシ(Aquila chrysaetos)が挙げられますが、その翼開長は約1.8~2.1メートル。
つまり、目撃された怪鳥は、それをさらに上回る巨大な鳥だったことになります。
さらに奇妙なのが頭部です。
頭には羽毛がほとんどなく、禿げ上がったように見えたという証言があり、「ゴリラやサルのような顔」「コウモリのような顔」と表現されることもあります。
そして、暗闇の中で特に印象的だったとされるのが目。
複数の目撃談では、血のように真っ赤に光る巨大な目が語られています。
また、泥地などから直径約20センチメートルにもなる、3本指の巨大な足跡が発見されたという話もあります。
中には警察や専門家が調査したとされる事例もあり、単なる「空を飛ぶ巨大な鳥」というだけではなく、地上に降り立つ巨大生物として語られているのです。
― リオグランデ・バレーの怪鳥事件 ―
この怪鳥伝説を語るうえで欠かせないのが、1975年末から1976年にかけてテキサス南部で起きた「ビッグ・バード騒動」です。
リオグランデ川はアメリカ・テキサス州とメキシコの国境を形成しており、その南側にはタマウリパス州が広がっています。
つまり、この地域は国境こそ存在するものの、生態系や人々の生活圏としては連続した地域です。
そのため、巨大鳥の目撃談もアメリカとメキシコの双方にまたがって語られてきました。
1976年1月には、パトロール中の複数の警察官が、車のライトに照らされた異常に巨大な翼を持つ生物を目撃したとされています。
現職警察官による「あり得ないほど巨大だった」という証言は地元メディアでも取り上げられ、『ザ・ブラウンズビル・ヘラルド(The Brownsville Herald)』などの新聞を通じて広く知られることになりました。
また、テキサス州ハーリンゲンでは、14歳と11歳の従姉妹が住宅の裏庭で奇妙な巨大生物を目撃したとされています。
2人は双眼鏡越しに、こちらをじっと見つめる巨大な存在を目撃し、恐怖のあまりパニックになったと伝えられています。
当時の騒動は単なる新聞記事だけにとどまりませんでした。
地元のラジオ局は、この事件を題材にした『ザ・レジェンド・オブ・ザ・ビッグ・バード・オブ・ザ・リオ・グランデ・ヴァリー・オブ・テキサス(The Legend of the Big Bird of the Rio Grande Valley of Texas)』というレコードまで制作。
このレコードは2万枚以上を売り上げるヒットとなり、「リオグランデ・バレーのビッグ・バード」という名称が、アメリカのUMAファンの間にも広く知られるきっかけになったとされています。
このときの怪鳥には「ビッグ・アビー(Big Abby)」という愛称まで付けられました。
この呼び名については、1976年1月に襲われて負傷したとされる男性、アル・アプレビー(Al Appleby)の名前や、当時の目撃地などが混ざって生まれた通称ともいわれており、1976年の騒動を象徴するユニークな呼び名として知られています。
また、メキシコ国境地域という土地柄から、スペイン語で「巨大な鳥」を意味する「エル・パハロ・ヒガンテ(El Pájaro Gigante)」と呼ばれることもあります。
セクション2へ続く。
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