■1億年前に20メートルのタコが存在した!? ~ ナナイモテウティス・ハガーティ
今回は実在した超巨大頭足類、ナナイモテウティス・ハガーティ(Nanaimoteuthis haggarti)。
古来より語られてきた海の怪物クラーケン(Kraken)。
その正体として有力視されているのが、巨大な頭足類――とりわけ巨大イカや巨大ダコです。
ダイオウイカ(Architeuthis dux)やダイオウホウズキイカ(Mesonychoteuthis hamiltoni)は、長い腕と巨大な外套によって全長10メートルを超えることもあり、伝説の原型としては現実的なラインに位置しています。
さらに日本近海に生息するミズダコ(Enteroctopus dofleini)も、最大で9.1メートル、体重272キログラムという記録が残されており、「巨大なタコ」という発想自体は決して荒唐無稽ではありません。
――ですが。
その延長線上では説明しきれない存在が、かつての海には潜んでいた可能性があります。
常識的な巨大頭足類のスケールを、一段階踏み越えた何か。
― ナナイモテウティス・ハガーティ ―
白亜紀の海。
そこには、現代の基準では測りきれないサイズのタコが存在していたと考えられています。
推定全長は最大で約20メートル。
それはもはやイカでもクジラでもなく、異形の頂点捕食者でした。
― 名前の由来 ―
(メンダコ)
(image credit: Wikicommons)
ナナイモテウティスという学名は、発見地と古典語を組み合わせたものです。
カナダのナナイモ層群(Nanaimo Group)、そしてギリシャ語でイカを意味する「teuthis」。さらに種小名ハガーティは古生物学者ジェームズ・ハガート博士への献名です。
分類としてはタコの仲間ですが、ヒレを持つ原始的なタイプ――いわゆる有ヒレタコ類に属すると考えられています。
推定全長は約6.6~18.6メートル。控えめに見ても巨大イカ級、上限では既知の無脊椎動物の中でも規格外のサイズです。
現生の有ヒレタコ類といえば、見た目のかわいいメンダコ(Opisthoteuthis depressa)やダンボオクトパス/ジュウモンジダコ(Grimpoteuthis hippocrepium)といった小型種が多いので余計にその対比が興味深いと言えます。
― 化石は「顎」だけ、そこから復元された怪物 ―
ナナイモテウティスの正体は、ほとんどが「顎」から推定されています。
タコの体はほぼ軟体で構成されるため、化石として残るのはクチバシ状の硬い部分のみ。日本とカナダから見つかった複数の顎化石が、この巨大生物の存在を示唆しました。
特に注目すべきは、その摩耗の激しさです。
殻や骨といった硬い獲物を何度も砕いた痕跡が残されており、単なる捕食者ではなく「力でねじ伏せるタイプ」のハンターであったことが分かります。
さらに摩耗は左右非対称で、片側を多用していた可能性も指摘されています。
これは現代のタコにも見られる「利き手」のような行動――すなわち、ある程度の知性を持っていたことを示唆します。
― 白亜紀の海で頂点に立った無脊椎動物 ―
当時の海は、モササウルスや大型サメ、魚類といった脊椎動物が支配していると考えられていました。
しかしナナイモテウティスは、その構図を崩します。
長い腕で獲物を捕らえ、強力な顎で砕く。
そして巨大な体躯――これらを兼ね備えたこのタコは、食物連鎖の頂点に位置していた可能性があるのです。
いわば「タコ版クラーケン」。
しかも神話ではなく、物理的痕跡を伴った存在として。
― なぜそこまで巨大化できたのか ―
白亜紀は、生態系そのものが現在とは異なるバランスで成り立っていました。
捕食者の層が厚く、競争は激化し、進化は極端な方向へ振れやすい時代です。
その中で軟体動物は外骨格を捨て、代わりに機動力と知性を獲得しました。
そして一部の系統は、さらに「巨大化」という選択肢を取ります。
ナナイモテウティスはその極端な例であり、脊椎動物と並び立つ、あるいは競合する存在へと到達したと考えられます。
ただし注意すべきは、全長18メートル超という推定には議論がある点です。
化石が顎のみである以上、サイズには不確実性がつきまといます。
かつてメガロドン(Otodus megalodon)が歯の大きさだけで最大40メートル級の巨大ザメと推測されていましたが、現在では10~15メートルと大きく「縮小された」例もあります。
それでもなお、「巨大タコが白亜紀の海を支配していた可能性」にロマンを感じずにはいられません。
― 海の中の“見えなかった支配者” ―
ナナイモテウティスの発見は、単なる巨大生物の追加ではありません。
これまで見えていなかった「軟体の捕食者」が、生態系の重要な一角を担っていた可能性を示しています。
化石として残りにくい存在――つまり、記録から抜け落ちていた支配者。
デジタル解析によってようやく姿を現したそれは、白亜紀の海が想像以上に複雑で、そして歪なバランスの上に成り立っていたことを示しています。
巨大な顎だけを残し、本体は一切消え去った生物。
その欠落した輪郭が、かえってこのタコの存在を際立たせているのかもしれません。
[参照サイト]
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