■未発見の巨大オオコウモリか ~ オリティアウ(オリチアウ)
今回はオリティアウ(Olitiau)。
カメルーンを中心に、コンゴ共和国、ジンバブエ、ザンビアなど中央アフリカ一帯で語られる、巨大な飛翔系UMAです。
黒い影のように空を裂き、水辺をかすめるその姿は、古くから「悪魔」の名で恐れられてきました。
― コンガマトーとの関係 ―
まず、このオリティアウという名称自体に注意が必要です。
「オリティアウ」はイプロ語(Ipulo)に由来し、「悪魔」あるいは「洞窟の悪魔」を意味する言葉とされますが、特定の生物を指す固有名詞ではなく、恐怖の象徴として用いられた一般名詞である可能性も指摘されています。
さらにこの言葉は、単なる動物名ではなく、現地の人々の間では「死者の魂が宿った飛行物体」といった霊的なニュアンスを含んで用いられている可能性も示唆されています。
つまりオリティアウとは、生物としての輪郭を持ちながらも、同時にフォークロア的存在――恐怖や禁忌そのものを空に投影した概念とも解釈できるのです。
そのため、アフリカを代表する飛翔系UMAであるコンガマトー(Kongamato)の地方名、あるいは同一存在とする見方も根強く存在します。
確かに両者は「巨大」「水辺に出現」「人を襲う」という共通点を持ち、伝承の構造としては極めて近いものがあります。
しかし、コンガマトーの目撃は主にザンビアやアンゴラなど南部アフリカに集中しているのに対し、オリティアウはカメルーン周辺の中央アフリカが中心であり、分布には明確なズレが見られます。
飛翔可能な生物である以上、完全に切り分けることはできませんが、別種として扱うほうが整理としては自然でしょう。
― オリティアウの特徴 ―
オリティアウの翼開長は6~12フィート、約1.8~3.6メートルとされ、これは現生のコウモリを大きく上回るサイズです。
全身は光を吸い込むような漆黒で、翼は不透明な皮膜に覆われ、水面近くを滑空するように高速で飛行します。
最大の特徴はその頭部にあります。
コンガマトーが長い嘴を持つ翼竜的なシルエットで語られるのに対し、オリティアウは「猿のような顔」と表現され、突き出さない短い口吻と、半円状に並んだ白い歯を持つとされています。
その歯は均等な間隔で並び、飛行中にカタカタと打ち鳴らされる――まるで威嚇のような音を発するといいます。
体毛は目立たず、滑らかな皮膚のようにも見えたという証言もあり、典型的なコウモリ像とも微妙にずれています。
― サンダーソンの遭遇 ―
最も有名な目撃は1932年、未確認動物学者アイヴァン・サンダーソンによるものです。
彼はジェラルド・ラッセルとともにカメルーンのアッスンボ山地で調査中、浅い川を歩いていた際、突如として異様な飛翔体に襲われました。
それは水面すれすれを一直線に突っ込み、わずか数メートルの距離まで接近。
サンダーソンが目にしたのは、黒い巨体と、開いた顎に並ぶ異様に白い歯でした。
反射的に水中に身を沈めた彼の頭上を、その生物は轟音とともに通過します。
やがて夕闇の中、再び現れたそれは今度はラッセルに向かって急降下。
2人は発砲するものの命中したかは不明のまま、黒い影はそのまま夜の中へ溶けるように消えました。
特徴的なのはその飛行音で、空気を裂く「シュッシュッ」という鋭い音を伴っていたと記録されています。
帰還後、現地の狩人たちはその話を聞くや否や「それはオリティアウだ」と告げ、明確な恐怖を示したといいます。
― オリティアウの正体 ―
サンダーソン自身はこの生物を「巨大なコウモリ」と考えていました。
実際、コウモリ類には水面をかすめるように飛行する習性や、間隔の広い歯列といった共通点も見られます。
しかし問題はそのサイズです。
アフリカ最大のコウモリであるウマヅラコウモリ(Hypsignathus monstrosus)ですら翼開長は1メートル未満であり、オリティアウの報告とは大きく乖離しています。
一方で、小型の肉食性コウモリには攻撃性や俊敏性といった特徴が一致するものの、サイズが決定的に不足しています。
この矛盾から、一部の研究者は「未発見の巨大種」、特にモロッシダエ科(Molossidae)に属する未知の大型コウモリの可能性を指摘しています。
また別の説として、コンガマトー同様に翼竜の生き残りとする見方も存在しますが、サンダーソン自身は最終的にこの説には慎重な立場を取っています。
興味深いのは、彼の証言自体がどちらの特徴にも曖昧に重なっている点です。
コウモリとも翼竜とも断定できない輪郭のぼやけた存在――
それこそが、オリティアウという名の正体なのかもしれません。
黒い影は水面をかすめ、音だけを残して過ぎ去る。
それが動物だったのか、それとも恐怖そのものの形だったのか。
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