■史上最低の復元骨格 ~ マクデブルク・ユニコーン
今回はマクデブルク・ユニコーン (Magdeburg Unicorn)。
マクデブルク・ユニコーンはドイツの都市、マクデブルク (Magdeburg) にかつて「確かに実在した」ユニコーンの特徴を持つ古生物です。
簡単にマクデブルク・ユニコーンの発掘・復元の歴史を見ていきましょう。
(博物館に展示されるマクデブルク・ユニコーン)
(image credit: )
この生物の化石は1663年、ドイツのゼヴェッケンベルゲ (Seweckenberge) で発掘されました。
マクデブルク生まれのドイツの著名な科学者オットー・フォン・ゲーリケ (Otto von Guericke) はこの骨をユニコーンの骨と信じ、発見から5年後ほどして現在知られるマクデブルク・ユニコーンの形に復元したといわれています。
このことからゲーリケの名にちなみドイツ語でゲーリケ・アインホルン (Guericke Einhorn)、つまり「ゲーリケのユニコーン」とも呼ばれることもあります。
しかし復元されたその姿は知られるいかなる生物にも似ておらず、驚くほど珍妙で地球上の生物とはとても思えないものでした。
伝説の幻獣、ユニコーンを彷彿とさせる巨大な角を頭頂部に有するものの、前肢二本しか持たず後肢の痕跡は骨格上では確認できません。(後肢二本で前肢がないという見方もできます)
おそらくは鰭脚類 (アシカ、アザラシの仲間) のように体の後部を引きずるような動きで前進したに違いありません。
巨大な前肢に対し体は極端に短く、また体幅も異常なほど狭く頭部の幅ほどしかありませんが、非常に体高 (身長) のある生物です。
頭頂部までで2メートル以上、巨大な角を含めると3メートルを優に超します。
(マクデブルク・ユニコーンの復元資料)
(image credit: Wikicommons)
実はこのゲーリケによる復元は歴史上、一旦失われてしまい、彼の残されたアイデアの痕跡からこれまた著名な哲学者ゴットフリート・ライプニッツ (Gottfried Leibniz) によって再構築されました。
再構築されたマクデブルク・ユニコーンはライプニッツの著書において「クヴェードリンブルク・ユニコーン (Quedlinburg Unicorn)」と名を変えて登場しました。
(シャルツフェルト近郊の洞窟入り口に展示されたレプリカ)
(image credit: Wikicommons)
ゲーリケにしてもライプニッツにしても、いずれにしても17世紀の話です。
さて現在、図鑑でマクデブルク・ユニコーンもクヴェードリンブルク・ユニコーンも見ることはありません。
どういうことでしょうか?
ただの一個体だけ発見された謎の生物なのでしょうか?
実はその可能性は完全には否定できないと一応言っておきましょう。
現在展示されているマクデブルク・ユニコーンの復元骨格はあくまで彼らが残した資料に基づいて構築された「レプリカ」であり当時組まれた実際の骨で再構築したものではないからです。
とはいっても生物学的にあり得ない骨格の組み方から、この姿のままの生物はあり得ないのは確かです。
結論を言えばこれはケブカサイ (Coelodonta antiquitatis) の断片的に発見された骨格だけで無理矢理復元してしまったため、このような奇妙な生物が出来上がってしまったというのが定説です。
詳細に見るまでもなく、生物としてあまりに骨が少なすぎます。
しかしこの数少ない骨すらすべてがケブカサイのものではなく、いくつかの生物の骨が混ざっていると考えられており、このトレードマークの角も当初はケブカサイではなくイッカク (Monodon monoceros) の角が使われていたと推測されています。
残念ながら現時点では「マクデブルク・ユニコーンを見た!」という目撃事件は報告されていません。
(参照サイト)
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なんかユニコーンを彷彿とさせるけど、こんな生物いないですよね(いたら怖すぎるけど見てみたいです)
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