■ハサミムシは生きた人間の脳を貪り食う
かつて西洋でハサミムシは強烈な存在であった過去があります。
日本語の「ハサミムシ」という呼び名、その姿を見れば名前の由来は明白です。
一方、英語ではなんと言うでしょう?
甲殻類のハサミ (エビ・カニ、昆虫等) は通常ピンサーズ (pincers) と呼びますから、ピンサーズ・バグ (pincers bug) なんて呼ばれ方をしていると思う人も多いかと思います。
実際はイアーウィグ (earwig) と総称されます。
「ear + wig」で「耳のカツラ!?」と衝撃的解釈をしてしまいがちですが、この「wig」は古英語の「wicga」に由来し「昆虫」の意味です。
なので「耳の虫 (昆虫)」の意味です。
耳の虫?はてなんの話?
「耳の虫」と呼ばれる理由はいくつかありますが、有力な2つを紹介します。
(original image credit by Bugboy52.40)
ひとつはハサミムシは鞘翅 (しょうし) が短く目立たないため「後翅 (こうし) を広げた形が人間の耳の形に似ているから」というもの。
スマートで学術的な説です。
そしてもうひとつが「人間の耳から脳へと侵入し、脳を貪り食うから」というもの。
ばかみたいです。
このバカみたいな方をこの記事ではフィーチャーしたいと思います。
ハサミムシってそんなに怖いんか!?
世界で2000種ほど知られるハサミムシの多くは小柄です。
といっても決して肉眼で捕らえきれない顕微鏡サイズの大きさではなく、誰でもはっきりと確認できる大きさです。
あんなもんが耳の中に入ろうもんなら誰だって気付くはず、そう、これは迷信に決まっておりありえない!と。
そんな人達のために19世紀に書かれた「まじめな」文献の抜粋を以下に記します。
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「ハサミムシもしくはヨーロッパクギヌキハサミムシ (Forficula auricularis) と呼ばれるこの昆虫の名は、人間の耳に侵入することに由来します。
ハサミムシの侵入により耐え難い激痛が引き起こされ、場合によっては死に至ることもあります」(「ドメスティック・エンサイクロペディア」(1803年)ウィリッチ/ミーズ共著)
「ハサミムシが戸外で寝ている人の耳に入り込み、そこから脳へと侵入し死に至らしめることは世界の共通認識です」(「動物の博物学」 (1856年) ウイリアム. F. ダラス著)
「フォルフィキュラ (forficula) もしくはハサミムシと呼ばれる生物が耳内に入り込むことにより難聴になったり、咬みつきにより激痛を引き起こす場合があります。
ある女性の耳内にハサミムシが巣を作ったという記録があります」(「実用外科手術」(1795年) ジェームズ・ロッタ著)
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上記は今から150~200年ほど前のものであり、まじめな文献であっても内容は正しくはありません。
これは2000年近くも前から西洋で代々引き継がれてきた「都市伝説」です。
こんなあり得ないことがなぜ正されず現代まで伝えられてきたのか?
しかしそれは実際に睡眠中の人間の耳の中にハサミムシが侵入する事例があったからだといいます。
本当でしょうか?興味深い記事があります。
医学誌、「ウエスタン・ジャーナル・オブ・メディシン (The Western Journal of Medicine)」1986年8月号に掲載されたものです。
アメリカ、アリゾナ州のジェフリー・F・フィッシャー (Jeffrey R Fisher) 教授の8歳の愛娘が夜中の3時にパニックを起こして目を覚ましました。
「小さな足音」を聞いて目が覚めたというのです。
彼女は左の耳から執拗にその足音の主を取り出そうと試みました。
ジェフリー教授は耳鏡を使って愛娘の耳を確認しその「主」を取り出しました。
それは体長2センチのメスのヨーロッパクギヌキハサミムシ (Forficula auricularis) だったのです。
(参照サイト)
liveabout dotcom
PMC
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