■幻獣だと思っていたら実在した巨大ヤモリ ~ カウェカウィアウ
マオリの神話に登場する謎の爬虫類カウェカウィアウ (Kawekaweau)、ニュージーランドの北島で目撃されるUMAです。
カウェカウィアウは神話上の動物であると同時に実在する生物であるとの位置付けであり、そういった位置づけにある動物にありがちな非常に捉えどころのない性質を持ち合わせています。
それは爬虫類、特にトカゲに似ており、樹上性であり、水棲であり、陸棲でもあり、飛翔もできる、、、
一体どこに棲んでいるのやら。
しかしこの生物は一般的なUMAにありがちな「あまりに大き過ぎる」という欠点を持っておらず、その大きさは2フィート (約60センチ) ととても現実的なものでした。
それならあれでしょ、あれ、トゥアタラ (tuatara) ことムカシトカゲ (Sphenodon punctatus)。
ちなみに英名の「トゥアタラ」という呼称はマオリ語に由来し「背中の峰 (棘)」を意味します。
ムカシトカゲのオスなら尾を入れて24インチ (約60センチ)、最大で30インチ (約80センチ) ほど、大きさ的にもぴったりです。
しかしカウェカウィアウの正体はトゥアタラではないというのです。
W.ギルバート・メア (W. Gilbert Mair) 少佐は、カウェカウィアウについてマオリの酋長から聞き、1873年にその内容を報告しています。
マオリの酋長によれば、1870年に北島のテ・ウレウェラ (Te Urewera) にあるワイマナ渓谷 (Waimana) でカウェカウィアウを見つけ殺したことがあるというのです。
その生物の体長は2フィートぐらい、胴の太さは人間の手首ほど、体色は茶で身体の縦方向に褐色の縞模様が走っていたといいます。
バカげた大きさではないですし、全然あり得る大きさですが確かにトゥアタラっぽくはない感じです。
でもまあ所詮神話上の動物だし、酋長の話も本当なんだかどうなんだか、、、
結局それってトゥアタラのことだったんじゃないの?
ところが。
マイア少佐がマオリの酋長から伝え聞いた話を報告して100年以上もたった1986年、すっかり忘れられていたころに突如カウェカウィアウが脚光を浴びます。
フランスでもっとも著名な博物館のひとつ、マルセイユ自然史博物館の地下でラベルも何も貼られていない奇妙な剥製が発見されたのです。
それは体長2フィートもある大きなヤモリでした。
(ツギオミカドヤモリ)
(image credit by Wikicommons)
ニューカレドニアに棲息する現世最大のヤモリ、ツギオミカドヤモリ (Rhacodactylus leachianus) の体長17インチ (約43センチ) よりも遥かに大きなヤモリです。
ラベルがないので採取された場所を含め何もかも全てが謎、しかしこれがあの酋長の語っていたカウェカウィアウの正体なのではないか?そう考えられるようになりました。
結論から言うと、この剥製はミトコンドリアのDNA解析からニューカレドニア産のイシヤモリ科 (Diplodactylidae) に属することが判明し、残念ながらニュージーランド産ではないことが判明しました。
(カウェカウィアウことデルコートオオヤモリの復元模型)
(image credit by Wikicommons)
そのヤモリは現在デルコートオオヤモリ (Hoplodactylus delcourti / Gigarcanum delcourti) と命名され世界最大のヤモリと知られていますが、19世紀中に絶滅したものと考えられています。
ではやはりカウェカウィアウは幻獣にすぎないのか?
実はマイア少佐が酋長から話を聞く僅か2年前にもニュージーランドの博物学者ウォルター・ブラー (Walter Buller) 博士がこう記した記録が残っています。
「カウェカウィアウという美しい縞模様をもつトカゲは最大で体長2フィートに達することがありますが、まだ記載されていません。
以前はオークランド北部の森林にたくさん棲息してたものの現在ではほとんど見られなくなってしまいました。
ホキアンガのF.E.マニング氏は雌雄の生きたペアを入手しましたが、科学にとって大変な損失である事実を述べますと、その一匹は猫に食べられてしまい、もう一匹は脱走してしまいました」
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