カタツムリがもっとも住むべきでない場所のひとつは砂漠といえますが、好き好んでこの場所を選んだカタツムリがいます。
スフィクテロキラ・ボイッセリ (Sphicterochila boisseri) というイスラエル南部のネゲブ砂漠 (Negev Desert) に生息するカタツムリです。
和名が分からないのでサバクカタツムリと呼ぶことにします。
そこらへんのカタツムリをこの砂漠に連れて行って放置すれば、いくら殻に閉じこもって耐えようと、内部が沸騰して死んでしまいます。
カタツムリは変温動物ですので、気温に体温がもろに影響を受けます。
恒温動物 (哺乳類や鳥類) のように体温調節は出来ませんから、いかに気温に左右されないようにするか工夫するしかりません。
サバクカタツムリは、まずその殻に秘密があるといいます。
サバクカタツムリの殻の色は白くかつ非常に光沢があり、太陽の熱を効率的に跳ね返すことが可能で、その反射率は95%にも及びます。
砂漠の熱が危険なのは上から照りつける太陽光だけではありません、もうひとつは砂漠の砂です。
砂漠の砂もとんでもない温度になりますが、これは殻に比して小さい開口部で地表からは内部に入リ込む熱を防ぎます。
さらに、サバクカタツムリは軟体部分を殻の一番てっぺんまで避難し、地表から離れます。
殻のてっぺんが一番暑くなりそうですが、前述の通り、反射率95%の殻が守ってくれます。
殻の上部に移動すると、殻の入り口と軟体部分の間に空間が出来ます。
この空間がが断熱材として働き、地面から伝わる熱から軟体部を守ってくれるそうです。
ここまで頑張っても完全に熱をシャットダウンできるわけではありませんから、徐々にカタツムリの体温を上昇させます。
もっとも熱くなるときの体温は50度にも達しますが、なんとサバクカタツムリ、最高で50度強まで耐えられるため、限界ギリギリで持ちこたえることが出来ます。
砂漠に生息するために究極的に環境に適応したサバクカタツムリ、真夏ですら1日の水分消失はたったの0.5ミリグラムと驚異的なディフェンス能力を発揮します。
とはいえ、夏場は防御一辺倒、もっぱら冬眠ならぬ夏眠でやり過ごし、冬場の雨が降るわずかの期間だけ殻から出てきて食い溜めし繁殖活動を行います。
そのため殻から出てくるのは1年間で3週間程度、あとはずっと眠っているそうです。
(参考文献)
極限環境の生命 / D.A.ワートン著
(参照サイト)
Wikipedia
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