「野生の個体が生き残っていたとしてもそれはせいぜい1950年ごろまでだったでしょう。最後のタスマニアタイガーは森の中で人知れずひっそりと息を引き取ったのではないでしょうか。
タスマニア島では膨大な数のロードキル (轢死する野生動物) があり、その数は年間293,000匹ほどにもなります。
ですが、何十年もの間、ロードキルにタスマニアタイガーはただの一匹も含まれていないんですよ」
背中の縞模様を除けばタイガーというほど虎っぽくはなく、形態は犬 (オオカミ) に似ていますが、虎でもなければ犬でもなく、カンガルーやコアラと同じ有袋類です。
英語圏では日本同様タスマニアタイガーもしくはタスマニアウルフとも呼ばれますが、一般的にはその学名 (Thylacinus cynocephalus) からサイラシン (Thylacine) と呼ばれることが多いです。
タスマニア島は本土オーストラリアが大きすぎるため小さく見えますが、60,637平方キロメートルと想像するより大きいです。
北海道 (78,073平方キロメートル) ほどはありませんが、四国と九州を足した (55,294平方キロメートル) よりも大きいのです。
(最期のタスマニアタイガー、ベンジャミン)
人口は50万人を超えるぐらい、北海道 (500万人超) の約1/10です。
ロードキルの数は人口に迫るほどで人口に対して随分と比率が高く、いかに多くの自然が残されているか分かります。
冒頭のコメントは、このサイトでも何度か引用しているものですが、オーストラリアのクイーンビクトリア美術館アートギャラリーの館長、デビッド・メイナード (David Maynard) さんがタスマニアタイガーが現在生存している可能性はあるか?という質問に対してのものです。
野生の個体は1930年に射殺されたのが最後、タスマニアの首都ホバートの動物園で生き残っていたベンジャミンが1936年に亡くなったのをもって絶滅したものと考えられています。
しかしそれ以後も毎年何十という目撃が報告されることからひょっとしてまだ生き残っているのでは?
こういった絶滅した (はずの) 生物が目撃されるのもUMAとして数えられますが、このタスマニアタイガーの絶滅は思っているよりもずっと後だったのではないかという研究結果が発表されました。
公式的には1936年に絶滅、しかし冒頭のメイナードさんのように1940~50年代までは少数ながら野生の小さな個体群が生き延びていた可能性を指摘する人も少なくありません。
このほどタスマニア大学の研究グループは科学ジャーナル誌、サイエンス・オブ・ザ・トータル・エンバイロメント (Science of The Total Environment) にサイラシンの絶滅時期についての新見解を発表しました。
グループは1910年から現在までの100年以上に及ぶ期間の政府の持つアーカイブ記録、公開レポート、新聞記事、博物館のコレクション、個人のコレクション、書籍等を隈なく調査し、信頼に足る1237件の目撃情報を集めました。
これらのデータを場所や日付、さらに目撃した人物が専門家であるか否か (つまり一般人) でさらに細かくデータベース化することにより目撃地点・目撃数を評価しそれらの収束値から絶滅場所や絶滅日を導き出しました。
この結果、それらの収束値は1999年と2008年の2つが出来上がり、研究グループの見解では1999年が可能性がより高いと判断しました。
これは特に1940~1999年の60年間は安定した目撃数が報告されていたものの、2000年以降は極端に数が減り、この時期から現在に至るまで携帯やスマートホンの普及によって、より写真に収めやすいにも関わらず目撃情報が減少していることを理由としているようです。
UMAの世界ならまだしも、一般的にはとっくの昔に絶滅したと考えられていたタスマニアタイガーが思っていたよりも60年先まで生き延びていたとしたらこれは驚愕の事実です。
1999年あたりといえばわずか20数年前、収束値のもう一つの山である2008年を採用すればわずか15年前、いずれにしてもつい最近まで人知れず生き延びていたなんていうのは夢があります。
そのぐらいまでもし本当に生き残っていたと考えるのであれば、それこそ小さな個体群がいまだにどこかで生き残っているかも?と期待したくなります。
(参照サイト)
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