■世界で最も希少な霊長類 ~ カイナンテナガザル (Hainan black crested gibbon)
いまだ未発見の霊長類が存在するかもしれませんが、少なくとも現在知られている霊長類の中でもっとも希少なサルといわれているのがカイナンテナガザル (Nomascus hainanus) です。
カイナンテナガザルは名前の通り中国の海南島に生息する固有種ですが、かつては中国本土にも生息していました。
しかし1950年代に本土の個体群は絶滅、それでも海南島に2000匹ほどは生息していたといいます。
しかしそこから坂道を転げ落ちるように個体数を減らします。
1980年代、本土から海南島への移住が激増、当然ながら森林伐採等の開発が行われ、カイナンテナガザルの生息地の95%が失われたといいます。
これによりカイナンテナガザルは激減することになりますが、もうひとつ懸念材料がありました。
もともとカイナンテナガザルは漢方の材料としての価値があったからです。
なんでもカイナンテナガザルを丸ごと煮込んでペースト状にしたものが強壮剤になると信じられているため、個体数の激減がさらにかれらの市場価値を上げてしまう皮肉な結果となります。
(メスのカイナンテナガザル)
(image credit by Tassilo 3 (YouTube))
特に価値があると信じられていたのはメスの個体で当時一匹300ドルという高値で取引されたことから密猟に拍車がかかります。
性的二型が顕著なカイナンテナガザルはオスの毛色が真っ黒なのに対し、メスは黄金の毛色でありいとも簡単に識別され密猟されてしまいます。
気付いてみれば21世紀に突入する頃にはなんと28匹にまでその数を減らしてしまいます。
クリティカルというよりほぼ絶滅は免れない絶望的な数ですが、ここから増えはしないものの安値安定というのでしょうか、低水準で微減微増を繰り返し2020年現在で30匹を維持しています。
非常に繁殖力が弱く繁殖は2年に1度、飼育下での繁殖はすべて失敗に終わっている以上、もはや現在残っている野生のカイナンテナガザルにかけるしかありません。
ナショナル・ジオグラフィックによればモーリシャス島固有のハヤブサ、モーリシャスチョウゲンボウ (Falco punctatus) は1974年で4羽まで減ったものが2019年時点で400羽まで回復しているといい、カイナンテナガザルにも同様の期待をかけられています。
人間ができることは黙って見守るのみ。
(参照サイト)
National Geographic
New England Primate Conservancy
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