(image credit: Simon Grove/TMA)
■カタツムリなのかナメクジなのか ~ アッテンボローリオン・ルビカンダス
ミユビハリモグラの記事でザグロスス・アッテンボロウギ (Zaglossus attenboroughi) の種小名はデイビッド・アッテンボロー (David Attenborough) 氏に献名されたということを書きました。
種小名ではなく属名がアッテンボロー氏に由来する腹足類がいます、アッテンボローリオンです。
正直言うとこの学名をどう発声するのか分かりませんが、日本ではアッテンボローリオン・ルビカンダス (Attenborougharion rubicundus) と呼ばれていることが比較的多いようなのでこれにならいます。
アッテンボローリオンはタスマニア島の僅かな範囲でしか生息していないといわれるナメクジです。
アッテンボローリオンは、隠れ家として立派な殻を持つカタツムリと殻を取り去り機動性に優れたナメクジの中間的な姿で、殻を持つものの小さすぎて自分の体を収納することが出来ません。
隠れ家としての機能を持たない小さな殻を持つナメクジたちを英語でセミ・スラッグ (semi-slug) 、すなわち「半ナメクジ」と呼びますが、純粋なナメクジ500種に対しセミ・スラッグはその倍、1000種もいるといわれています。
セミ・スラッグは殻の痕跡を留める程度のものもいますが、アッテンボローリオンのそれはミニチュアながらはっきりとカタツムリの殻を思わせるものです。
(ゲオティス・フラヴォリネアタ)
(image credit by Documentando la biodiversidad de Puerto Rico (YouTube))
セミ・スラッグの中にはプエルトリコに生息するゲオティス・フラヴォリネアタ (Gaeotis flavolineata) のように体が透き通ったとても美しいものも存在します。
アッテンボローリオンの特徴は有毒生物すら彷彿させる毒々しいほどの派手な体色です。
痕跡以上の大きめの貝殻を背負い、ナメクジとは思えない派手な体色はとてもインパクトがあります。
またアッテンボローリオンだけではありませんが、このナメクジは交尾の際、キューピッドさながらに愛の矢をパートナーに打ち込みます。
これは恋矢 (れんし) と呼ばれるもので、ただの交尾の儀式というわけではなく実際にパートナーの体に突き刺さります。
矢が刺さると矢の表面に塗布された分泌液により、精子の生存率が高まるため受精率が上がるというメリットが有ります。
ただしナショナル・ジオグラフィックによれば、コハクオナジマイマイ (Bradybaena pellucida) の場合、恋矢を打ち込まれると寿命が1/4縮まるといいます。(60日→45日)
カタツムリやナメクジは生涯に渡り複数のパートナーと交尾をしますが、矢を刺された個体は寿命が短くなる上、さらに交尾意欲が減退します。
つまり期間の縮小と性欲の低下により次のパートナーと交尾する確率を減らします。
これにより最初に恋矢を突き刺して交尾した個体の遺伝子がより残りやすくなるというカラクリです。
(参照サイト)
National Geographic
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