ミミズは環形動物 (かんけいどうぶつ) に属しますが、その中で毛 (剛毛) が目立たないので「貧毛類」というグループに入ります。
いっぽう、剛毛が目立つ環形動物は「多毛類」と呼ばれ、すべて海に生息します。
多毛類はゴカイやイソメの仲間で、小型のものであれば若干ムカデっぽくなるものの「海のミミズ」といった感じで、ミミズと大差ありません。
しかしその中の最大種のオニイソメ (Eunice aphroditois, ボビット・ワーム) は同じ環形動物とは思えないほどの強烈な姿になります。
生息するのは水深10~100メートルほどの砂の中、からだの大部分は砂の中に隠し、頭部のみ海底から突き出し頭上を通る獲物を待ち伏せします。
大きな鋭いアゴを目一杯に広げ、2の目と5本の触角で獲物を感知します。
「鬼」を冠する和名に恥じない凶暴な姿・性質で、自分よりもはるかに大きな魚やタコ、ウツボなども毒と鋭い牙で一瞬で仕留めることが出来ます。
大きさも鬼的で、2009年1月に和歌山県白浜町、瀬戸漁港に浮かべられていたイカダの発泡スチロール製のウキの中に体長3メートル、幅2.5センチもあるオニイソメが発見されています。
通常寿命は5年程度といわれているものの、これだけの大きさに成長するには最低でも10年以上かかるのではないかともいわれています。
ただし、環境がよければ成長スピードも速いのかもしれません。
さて、オニイソメの英名、ボビット・ワーム (Bobbit worm)、これはロリーナ・ボビット (Lorena Bobbitt) 氏に由来するものです。
ボビット氏はオニイソメの発見者でもなければ研究者でもなく、オニイソメに縁もゆかりもない人です。
彼女は、暴行を受けた夫、ジョン・ウェイン・ボビット (John Wayne Bobbit) 氏への復讐として、彼のペニスをナイフで切り落とし、その裁判は世界に知られることとなりましたす。
(image credit by Xanth Huang/Wikimedia)
だからといってなぜゆえに彼女の名がオニイソメの名に?
というのもオニイソメは交尾後、オスのペニスを食いちぎるという俗説があり、それはまるでロリーナ・ボビット氏の事件を彷彿させるものであることから彼女の名が当てられたというわけです。
しかしカマキリやクモ、サソリなど、交尾後にオスを食べてしまう生物は幾多とあれど、ペニスだけを食いちぎるというピンポイント攻撃なんて聞いたことがありません。
しかも、なぜそこだけ狙う? 黙って食べられるオスもどうかと思います。
オニイソメの摂食風景を見ても、そんな繊細な動きができるとは露思えず、おそらく俗説以上のものではないでしょう。
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