中国の白亜紀前期の地層から発見された非常に保存状態のよい大型のクモの化石、モンゴララクネ・チャオヤンゲンシス (Mongolarachne chaoyangensis)。
これはクモの巣を張るタイプの最大のクモの化石種、ネフィラ・ジュラシカ (Nephila jurassica) を凌ぐ大きさで世紀の大発見と騒がれました。(ネフィラ・ジュラシカの体長は2.5センチ)
興味ないと思いますが、話の便宜上、ネフィラ・ジュラシカの属についてちょっとだけ説明させてもらいます。
ネフィラ・ジュラシカは当初はこのネフィラ属で記載されたものの、2013年に独自のモンゴララクネ属に再分類されモンゴララクネ・ジュラシカ (Mongolarachne jurassica) になりましたが、再々分類によりネフィラ・ジュラシカに収まったという経緯があります。
(image credit by IFL SCIENCE!)
要するに、モンゴララクネ・チャオヤンゲンシスはこの化石種最大のネフィラ・ジュラシカと同じモンゴララクネ属に分類されていたものです。
その流れからモンゴララクネ・チャオヤンゲンシスはネフィラ・チャオヤンゲンシス (Nephila chaoyangensis) にるはずですが、そうはなりませんでした。
誰も想像すらできない驚愕の分類になります。
やつは新種でもなければ世界最大でもない、そんなクモは地球が誕生してから一瞬たりと存在したことのない「幻のクモ」だったのです。
しかし化石は確かに存在します。
これこそこのクモが地球上に存在した動かぬ証拠なはず。
このクモの化石はクリコイドスケロスス・アエスス (Cricoidoscelosus aethus) だといいます。
クリコイドスケロススとは?
クリコイドスケロススはクモではなく、なんとザリガニの絶滅種。
しかし一見したところではどうみてもクモの化石に見えます。
実はこれ、不完全なクリコイドスケロススの化石に長い足を書き込んでクモの化石に仕立て上げたのです。
(蛍光顕微鏡でフェイクをあぶりだした画像。Bの茶色の部分が書き足した部分)
(image credit by IFL SCIENCE!)
この地域で発掘しても珍しくもないザリガニの化石、これじゃ高く売れません。
「なんだよ、またザリガニの化石かよ」
「親分、でもこれ、クモっぽく見えません?」
「そういやクモの化石はすんげぇ高く売れてたぞ」
「じゃあ、足を書き足しちゃいましょうよ、親分!」
そんなやり取りがあったかどうか知りませんが、考古学者すら騙す高等技術で足をつけたし、高額で研究所に売り払うことに成功。
その道のプロも気付かず論文を作成、世界最大のクモ化石、モンゴララクネ・チャオヤンゲンシスとして華々しいデビューを飾りました。
(当時の論文はここで確認できます (英語))
この時代のクモにしては大きすぎるんじゃないか、目も大き過ぎるんじゃないか等、当初から疑惑の目で見られていたそうですが、まさかザリガニだったとは。
発掘した人、そんなに器用なら仕事変えたほうがいいです。
(参照サイト)
IFL SCIENCE!
(関連記事)
0 件のコメント:
コメントを投稿