■16世紀に目撃されたインドの人面トラ ~ タナクト (サナクス)
タナクト (or サナクス, Thanacth)。
16世紀、フランス人司祭にして探検家アンドレ・テヴェ (Andre Thevet) 氏がインドで目撃したとされる謎の生物です。
半人半獣的なUMAで頭部は人間に似て吻が短く顔の周辺は縮れた毛で覆われており、体は黒っぽい毛皮のトラに似た四肢動物として描かれます。
また、前肢は人間の手に似ており、後肢はトラ、しかし尾はないといいます。
インドには大型のネコ科動物としてベンガルトラ (Panthera tigris tigris) もインドライオン (Panthera leo persica) も棲息していますが、目撃者の頭部・前肢の特徴から言ってどちらでもなさそうです。
いずれも人間にとっては大変危険ですが、タナクトにはそう言った記述もないことからあくまで体つきが大型ネコ科動物ほど大きかったか、トラのような模様があったかいずれかでしょう。
これはおそらく決してトラなどではなく霊長類と思われますが、「尾がない」つまり類人猿となると大型のものあオランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボの4種に限られてしまい、いずれもインドには生息していません。
となると小型類人猿、テナガザルということになります。
(オスのフーロックテナガザル)
(image credit by Wikicommons)
インド北東部国境ギリギリのところには世界で二番目に大きな体長90センチのテナガザル、フーロックテナガザル (Hoolock hoolock) が棲息しています。
オスとメスで毛色が異なり、オスは真っ黒、メスは薄い褐色、タナクトは黒いといわれているので、フーロックテナガザルが正体だとすればオスということになります。
ちなみにテナガザルの最大種はマレー半島とスマトラ島に生息するフクロテナガザル (Symphalangus syndactylus) で、大きさ的にはフーロックテナガザルを僅かに上回る程度です。
しかしいずれのテナガザルも大きさ的にも体つきも大型ネコ科動物を全く彷彿とさせない、という欠点があります。
大型ネコ科動物を正体とする場合よりは欠点は少ないですが、それでもこれで決まり!というほどしっくりは来ません。
そういうわけでインド以外の霊長類からも候補が出され、スローロリスやキツネザルらも検討に入れているようですが、スローロリスはあまりに小さすぎますし、キツネザルはマダガスカルにしかいない上に長い尾を持ち、それならテナガザルの方がまだいいのでは?
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モンキーセンターで観察したときにしなやかな体幹の動きがネコみたいと感じました。
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