■3メートルの巨大モルモット ~ フォベロミス・パッテルソニ
現世の齧歯類最大はカピバラ (Hydrochoerus hydrochaeris) で体長が1メートル以上、体重60キロ以上に成長します。
ネズミが1メートルを超してかわいいかと言うと、皆さんご存じの通りカピバラはこの上なく可愛いです。
では2メートル、いや3メートルに成長してもその感情は変わらないかと言われたらどうでしょう?
今回は3メートルのネズミ、フォベロミス・パッテルソニ (Phoberomys pattersoni) です。
フォベロミスは800万年前の南米のオリノコ川付近に生息していた巨大なネズミで、属名のフォベロミスは「恐怖のネズミ (fear mouse)」を意味します。
フォベロミスは齧歯類の中でも現世のモルモットと遠い類縁関係にあると考えられることから、「巨大なモルモット」と形容されることもあります。
発見当初はゴジラ (Godzilla) のようなラット (rat) という意味でラッジラ (Ratzilla) と呼ばれていましたが、モルモットとの類縁関係が知られると、(モルモットは英語で「ギニー・ピッグ (Guinea pig)」のため)「ギニージラ (Guinea-zilla)」に改められました。
体長は3メートル、モルモットと類縁関係ながら尾のないモルモットと異なり1.5メートルもある長い尾を持ちます。
体重は700キロ、ネズミが700キロ?信じられない重さですが、実は上には上がいてこれでも実は史上最大の齧歯類ではありません。
史上最大の齧歯類はヨセフォアルティガシア・モンセイ (Josephoartigasia monesi) で推定体重は900キロから最大2500キロまでかなり差がありますが、いずれにしてもフォベロミス・パッテルソニよりは重かったと考えられています。
(旧サイトで「ジョセフォアルティガシア・モンセイ」と書いてしまいましたが、ラテン語なので「ジョ」じゃなくてたぶん「ヨ」ですよね)
フォベロミスに話を戻しましょう。
フォベロミスはこの巨体にしてあのネズミの愛らしい仕草、後肢二本で立ち上がることができたと考えられています。
その時の体高は1.3メートル、人間の子供程度の身長しかありませんがそれでいて700キロ、いかにずんぐりした体型であったかがわかるでしょう。
生態は現世のカピバラと似ており、多くの時間を水中で過ごし、目だけを水面から出している姿はその巨体も相まって、カバのようだったかもしれません。
イギリスの動物学者、ニール・アレクサンダー (Neill Alexander) 博士は遠目からは現世のバッファローのようだったのではないかと推測しています。
同時代の南米の河川には10メートルを超す巨大なワニ、プルスサウルス (Purussaurus) や陸上には飛べない巨鳥 (恐鳥類) がひしめき、その巨体を持ってしても一方的に狩られる立場だったかもしれません。
アレクサンダー博士はフォベロミスは足が遅く、また体が大きいために身を隠す場所が限定されるため捕食者にやすやすと捕まってしまったことが滅亡の原因ではないかと推測します。
また巨大な捕食者に対抗するべく巨大化の道を選んだものの、おそらくは性成熟に時間を要し一度に産む子供の数も減っていった可能性も考えられます。
ネズミ最大の長所のひとつである繁殖力の高さを失い、巨体を得た代わりに環境変化への対応が鈍化していったことも滅亡の原因のひとつかもしれません。
(関連記事)
■ 4メートルの巨大亀 ~ スチュペンデミス・ゲオグラフィクス
■ ついに証拠を手に入れた! ~ ブルーマウンテン・パンサー
■ 湖底に眠る財宝のガーディアン ~ チチカカオレスティア
0 件のコメント:
コメントを投稿