(image credit by ati)
■大木の内部で発見された犬 ~ スタッキー
南アフリカには、木の周囲が47メートルもある樹齢数千年 (※注) のバオバブ (Adansonia digitata) の木があります。
(※注:推定1000~6000年とかなり開きがあります)
このバオバブはサンランド・バオバブ (Sunland Baobab) と呼ばれ、巨大なウロ (自然にできる木の内部に出来る空洞部分) の内部にはつい最近までビッグ・バオバブ・ツリー・バー (Big Baobab Tree Bar) というバーとワインセラーがあったほどです。
バーは15席もある本格的なもので、内部は年間を通じて室温が22度に保たれるまさに快適空間。
近年 (2016年~)、謎の急激な枯れ (経年・気候変動の可能性が示唆されています) により全体の2/3 が倒壊してしまいました。
さすがにこれほど大きなウロは例外中の例外ですが、ウロは野生動物たちにとっては格好の隠れ家であり、利用する動物たちもたくさんいます。
多くは昆虫、小鳥やリスといった小動物ですが、中にはヘビなどが潜り込んでいる場合もあります。
しかし、伐採された木のウロに犬が居たとしたら?
そんな信じられないことが起きたのは1980年代のこと、ジョージア・クラフト社 (Georgia Kraft Corp) が伐採した一本の木のウロの中に、ミイラ化した子犬が挟まっているのが発見されました。
木自体は珍しくもないホワイトオークの一種、チェストナットオーク (Quercus montana)。
おそらく子犬はリスのような小動物を追いかけ、根の辺りに開いたウロから木の上方に向かって追跡を続けたものの、先細りの空洞に完全にはまってしまい「立ち往生して」しまったものと考えられています。
専門家によれば子犬は狩猟犬であり、閉じ込められたのはおそらく1960年代に遡 (さかのぼ) るものと推測されています。
つまり発見当時、子犬が死んでからすでに10~20年経過していたことになります。
不思議なのは自然界で死んだ動物が食べられもせず、腐敗もせず完璧なミイラと化したことです。
これには3つの偶然が重なったと考えられています。
まず一つ目、それはかなりの木の上方で子犬が立ち往生したことです。
あまりに高く肉食動物たちにその臭いを気付かれなかった、もしくは気付かれたとしてもあまりに高く (そして狭く) 到達できなかったのでしょう。
そして二つ目、この何の変哲もないチェストナットオークですが、この木はタンニンを多く含む木だということです。
タンニンには動物の毛皮を腐敗させない効果があり、剥製の作成に使用されます。
そのタンニンが木の内部から子犬の体にしみこみ腐敗を妨げたのです。
そして三つ目、このウロ内の乾燥した環境です。
自然が生み出した一種の真空効果により、最後の仕上げとして徐々に子犬の体内から水分を吸い取り完璧なミイラを完成させたのです。
ミイラ化しているとはいえ、その歯をむき出した形相は、生前の闘志そのままに、なんとしてでも脱出しようと最期まであきらめなかった執念、そして同時に痛々しさが伝わってきます。
子犬のミイラは挟まった木ごとサザン・フォレスト・ワールド (Southern Forest World) という博物館に寄贈され、現在でも展示されています。
この子犬の愛称はスタッキー (Stuckie)、「立ち往生したもの」といった意味です。
(参照サイト)
ati
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