(image credit: ati)
■大木の内部で発見された犬 ~ スタッキー
南アフリカには、木の周囲が47メートルもある、樹齢数千年(※注)とされる巨大なバオバブ(Adansonia digitata)の木があります。
(※注:推定1000~6000年と、研究者によりかなり開きがあります)
このバオバブはサンランド・バオバブ(Sunland Baobab)と呼ばれ、巨大なウロ(自然にできる木の内部の空洞)の内部には、つい最近までビッグ・バオバブ・ツリー・バー(Big Baobab Tree Bar)というバーとワインセラーが存在していたほどです。
(サンランド・バオバブのバーの入り口)
(image credit: Wikicommons)
バーは15席もある本格的なもので、内部は年間を通じて室温が22度に保たれる、まさに快適空間でした。
しかし近年(2016年~)、経年や気候変動の可能性が示唆される謎の急激な枯死により、全体の約2/3が倒壊してしまいます。
― ウロという「隠れ家」 ―
さすがにこれほど巨大なウロは例外中の例外ですが、ウロ自体は野生動物にとって格好の隠れ家です。
多くは昆虫や小鳥、リスといった小動物ですが、ときにヘビなどが潜り込んでいることもあります。
しかし、もし伐採された木のウロの中に「犬」がいたとしたらどうでしょうか。
― 木の中で見つかった子犬 ―
そんな信じがたい出来事が起きたのは1980年代のことです。
ジョージア・クラフト社(Georgia Kraft Corp)が伐採した一本の木のウロの内部から、ミイラ化した子犬が挟まった状態で発見されました。
その地点は、地上から28フィート(約8.5メートル)の高さでした。
木は特別なものではなく、ごく一般的なホワイトオークの一種、チェストナットオーク(Quercus montana)です。
― 立ち往生の推定経緯 ―
おそらく子犬は、リスのような小動物を追いかけ、根元付近に開いたウロから木の内部を上方へと進んでいったのでしょう。
しかし、次第に先細りになる空洞に完全にはまり込み、そのまま「立ち往生」してしまったと考えられています。
専門家によれば、この子犬は狩猟犬であり、閉じ込められたのは1960年代にまで遡る可能性が高いと推定されています。
つまり発見当時、すでに死後10~20年が経過していたことになります。
― 完璧なミイラとなった理由 ―
不思議なのは、自然界で死んだ動物でありながら、食べられることも腐敗することもなく、ほぼ完全なミイラと化していた点です。
(実際の博物館での展示風景)
(image credit: Wikicommons)
これには3つの偶然――あるいは奇跡――が重なったと考えられています。
まず一つ目は、子犬が非常に高い位置で立ち往生したことです。
肉食動物に臭いを気付かれなかった、あるいは気付かれたとしても、あまりに高く、かつ狭いため到達できなかったのでしょう。
二つ目は、このチェストナットオークがタンニンを多く含む木であったことです。
タンニンには動物の皮や毛を腐敗させにくくする作用があり、剥製の作成にも用いられます。
そのタンニンが木の内部から子犬の体へと染み込み、腐敗を抑えたのです。
そして三つ目が、このウロ内部の乾燥した環境でした。
自然が生み出した一種の真空効果により、時間をかけて体内の水分が奪われ、最終的に完璧なミイラが完成したと考えられています。
― スタッキーという名前 ―
ミイラ化しているとはいえ、歯をむき出しにしたその形相からは、生前の闘志がはっきりと伝わってきます。
なんとしてでも脱出しようと、最期まであきらめなかった執念。
そして同時に、想像を絶する苦しさと痛々しさもまた感じ取れるのです。
この子犬のミイラは、挟まっていた木ごと、ジョージア州のサザン・フォレスト・ワールド(Southern Forest World)という博物館に寄贈され、現在も展示されています。
ところで、この子犬はなぜ「スタッキー(Stuckie)」と呼ばれるのでしょうか。
それは「スタッキー」が、「立ち往生したもの」を意味する言葉だからです。
自然の大木の内部で、文字通り「立ち往生してしまった」小さな命。
その姿は、いまも静かに、そこに眠り続けています。






















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