(image credit by Monterey Bay Aquarium Research Institute (MBARI))
■4年半も絶食し卵を抱き続けるタコ ~ ホクヨウイボダコ
タコに対するイメージが変わる人もいるかも知れません。
2007年3月、モントレーベイ水族館研究所 (Monterey Bay Aquarium Research Institute (MBARI)) がカリフォルニア沖の深海の調査をした際、水深1400メートルの地点で一匹のタコが確認されました、ホクヨウイボダコ (Graneledone boreopacifica) です。
平均外套長が10センチにも満たない小柄なタコで見た目もふつう、深海性のタコという点を除けば、おそらく一般的に興味を引くような特徴は持ち合わせていません。
遠目では分からないものの、ズームした際によく見てみると、岩とタコの間にたくさんの卵があることに気付きます。
どうやらお母さんダコのようです。
青白い体色に大きな黒い目がとても印象的です。
それから数カ月後、モントレーベイ水族館研究所が再度同地点の調査を行うと、驚いたことに彼女はまだ同じ場所で卵を抱き続けていました。
次の調査でも、そしてまた次の調査でも、、、彼女はそこにいます。
最初に彼女を発見してから計18回、4年以上の月日が流れていましたが、彼女はいつもそこにいました。
タコの大好物であるカニなどの甲殻類が近くを通っても興味すら示しません。
それどころか身を固め警戒しているようにすら見えます。
彼女はただ静かに卵を抱き続けます。
少なくとも調査のカメラが潜っている間、一瞬たりともその場を離れたことはありません。
そこはホクヨウイボダコの産卵場所に適しており、実は気付かぬ間に別のホクヨウイボダコと入れ替わったんじゃないの?そう思う人もいるかも知れません。
(腕の2箇所の傷)
しかし腕に特徴的な2つの傷をもつことにより、観察されているホクヨウイボダコは同一個体であることが確認されています。
2011年9月、最初に出会ってから4年半のもなります。
しかし、彼女は当たり前のようにそこにいます。
これだけ長い期間、卵から孵 (かえ) らないのも不思議に思いますが、これだけ長期間、ほとんど絶食に近い状態で卵を守り続けるということのほうが驚きです。
ほとんどなにも食べていないからでしょう、出会ったときより体が縮み色素も薄くなっているように感じます。
擬人化すれば究極の母性愛ともいえます。
そして驚くこともうひとつ、短命で知られるタコやイカといった頭足類が4年以上も生きているということです。
1メートル以上にも成長する大型種ですら1年かそこらで死んでしまうものも多い中、このタコは少なくとも4年半、おそらくは5年以上生きていると推測されます。
きっと冷たい水の中で暮らすことにより代謝が低く抑えられているためでしょう。
2011年10月、彼女に出会ってから19度目の調査です。
彼女の特等席にその姿はありませんでした。
その代わり彼女が居たあの場所には、子供たちが無事に孵った証拠である空の卵がゆらりゆらりと揺れていました。
(空になった卵)
(参照サイト)
Daily Mail
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