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2020年3月17日火曜日

4年半も絶食し卵を抱き続けるタコ ~ ホクヨウイボダコ


■4年半も絶食し卵を抱き続けるタコ ~ ホクヨウイボダコ

この話を読めばタコに対するイメージが、少し変わる人もいるかも知れません。

― 深海で見つかった「ふつう」のタコ ―


2007年3月、モントレーベイ水族館研究所(Monterey Bay Aquarium Research Institute:MBARI)が、カリフォルニア沖の深海調査を行った際のことです。

水深1400メートルの地点で、一匹のタコが確認されました。

ホクヨウイボダコGraneledone boreopacifica)です。

平均外套長は10センチにも満たない小柄なタコで、見た目もごくふつう。

深海性のタコという点を除けば、特別に目を引くような特徴は、ほとんどありません。

― 卵を抱く母ダコ ―


遠目では分かりませんでしたが、カメラをズームすると、岩とタコの間にたくさんの卵があることに気付きます。

どうやら、彼女はお母さんダコのようです。

青白い体色と、大きな黒い目がとても印象的でした。

― それでも、そこにいる ―


数カ月後、MBARIが再び同じ地点を調査します。

驚いたことに、彼女はまだ同じ場所で、卵を抱き続けていました。

次の調査でも。
そして、その次の調査でも。

彼女は、そこにいます。

最初に発見してから計18回、4年以上の月日が流れましたが、彼女はいつも同じ場所にいました。

タコの大好物であるカニなどの甲殻類が近くを通っても、興味を示すことはありません。

それどころか、身を固め、警戒しているようにすら見えます。

彼女は、ただ静かに卵を抱き続けます。

少なくとも、調査用カメラが潜っている間、一瞬たりともその場を離れたことはありませんでした。

― 同じ個体である証拠 ―


そこはホクヨウイボダコの産卵に適した場所です。

そのため、気付かぬうちに別の個体と入れ替わっているのではないか、そう思う人もいるかも知れません。

(腕の2箇所の傷)

しかし、彼女の腕には特徴的な2つの傷がありました。

この傷によって、観察されているホクヨウイボダコが、同一個体であることが確認されています。

― 4年半という時間 ―


2011年9月。

最初に出会ってから、4年半が経過していました。

それでも彼女は、当たり前のように、そこにいます。

これほど長い期間、卵が孵らないことも不思議ですが、それ以上に驚かされるのは、ほとんど絶食に近い状態で卵を守り続けているという事実です。

ほとんど何も食べていないからでしょう。

出会った頃よりも体は縮み、色素も薄くなっているように見えます。

擬人化するなら、究極の母性愛と呼んでもいいのかも知れません。

― 「短命」の常識を超えて ―


さらに驚くべきことがあります。

短命で知られるタコやイカといった頭足類が、4年以上も生きているという点です。

1メートル以上にも成長する大型種でさえ、1年ほどで死んでしまうものが多い中、このタコは少なくとも4年半、おそらく5年以上生きていると推測されています。

冷たい深海で暮らすことにより、代謝が極端に低く抑えられているためでしょう。

― そして、席は空いた ―


2011年10月。

彼女に出会ってから、19回目の調査の日です。

彼女の特等席に、その姿はありませんでした。

代わりに、彼女がいたあの場所には、子供たちが無事に孵った証である空の卵が、ゆらり、ゆらりと揺れていました。

(空になった卵)

(参照サイト)
Daily Mail

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