大好きな映画の一つにティム・バートン監督の映画「ビッグ・フィッシュ (Big Fish)」があります。
ウィル・ブルームの父親エドワードがウィルが誕生する当日、ビッグ・フィッシュ (巨大ナマズ) を釣り上げるシーンがあるのですが、その釣餌にしたがの結婚指輪である金の指輪でした。
エドワードは周囲を楽しませるためにいつもほら話 (もしくは事実を誇張) をしており、このビッグ・フィッシュを釣り上げた話も事実ではありませんでした。
このほら話を唯一快く思っていなかったのが残念ながら愛する息子のウィルでした。
長年音信不通だったウィルでしたが、父親が病に伏し余命幾ばくもないことを母親から告げられるとほら話ばかりでとらえどころのない父親の過去を人づてに探ります。
そこで知ったのはエドワードが誰からも愛され、そして自分や母親のことをこの上なく愛しているということ。
そして父親がなぜほら話ばかりしていたのか、その真意を汲み取ります。
長年のわだかまりが氷解したウィルは危篤の父親のベッドに寄り添い、父親の最期にとっておきのほら話を聞かせてあげます。
(原書まで買ってしまった)
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今回はビッグフィッシュのように金の指輪でのみ釣り上げることができるといわれている魚のUMA、ヴァトゥナゲッダ / ヴァトナゲダ (Vatnagedda) です。
ヴァトゥナゲッダはアイスランドの淡水湖に生息するという猛毒の魚です。
このヴァトゥナゲッダという名は「有毒のパイク (カワカマス)」を意味しますが、名前に反しその姿はカレイやヒラメに似ているいいます。
(オヒョウ)
体長は一般的な数十センチのカレイという説から、オヒョウレベルの数メートルという説まであります。
その姿はいわば「金色のカレイ」
皮膚と肉の両方に毒が含まれていると考えられており、素手で触れることは致命傷になります。
釣り上げることは困難を極め、前述の通り餌には純金の指輪を、釣り上げたヴァトゥナゲッダを触れるために人間の皮膚で編んだ手袋を用意しておく必要があります。
ヴァトゥナゲッダは濁った湖の湖底に生息しますが、それは光を極端に嫌う性質のためであり、光に当たるや死んでしまうといわれています。
それゆえこの魚を目にすることができるのは嵐の前や濃い霧のかかった日に限られます。
しかし危険を冒してまで釣り上げる価値があるのかというと、もちろんあります。
ヴァトゥナゲッダの毒は悪霊すら無効化出来ないことから、悪霊祓いにうってつけだからです。
さてさて、こんな魚が実在するものでしょうか。
金の指輪を餌に、とか人間の皮膚で編んだ手袋といったファンタジー的要素はとりあえず置いておきましょう。
(ヌマガレイ)
(image credit by Dr. Dwayne Meadows/Public Domain)
カレイの仲間はすべて海生ですが、ヌマガレイ (Platichthys stellatus) のように淡水に耐性を持ち一時的に湖に定着できる種もいるため、ヴァトゥナゲッダの正体が湖に生息するカレイであっても問題ありません。
体色に関しても黄化個体であれば黄金色に輝くカレイは存在しますのでこちらも条件はクリア。
問題は「毒魚」という点です。
ヴァトゥナゲッダの特徴を聞いた限り、はオニダルマオコゼ (Synanceia verrucosa) のように毒針 (棘条) を通して毒を注入するというよりは、フグのように皮膚や内臓・筋肉等に毒を有した魚といった印象を受けます。
ではそんなフグのようなカレイがいるのかというと、カレイ科の魚に毒を持つ魚は知られていません。
実在する魚が元になっているとすれば、未発見の毒を有するカレイ科の魚が存在する、もしくはヒラメのクドア寄生虫 (クドア・セプテンプンクタータ:クドア食中毒を引き起こす) のようにカレイ科の魚に寄生する寄生虫により毒魚として認識されている魚が存在する、このいずれかではないでしょうか。
また時点として形状と毒を有するという点で淡水エイも候補に挙げておきます。
とはいえ、もともとファンタジー的側面の強いUMAであり、そこまで実在性に拘る必要はないかもしれません。
こういったUMAの話はビッグフィッシュのほら話のように、そっとしておくのが一番いいかもしれません。
(参照サイト)
A Book of Creatures
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