■正体は判明している? ~ グロスター・シー・サーペント (ケープ・アン・サーペント)
今回は古くから知られるシー・サーペント、グロスター・シー・サーペント (Gloucester sea serpent) です。
イングランドのグロスタシャーの州都も同名ですが、こちらはアメリカ、マサチューセッツ州のグロスターです。
ジョージ・クルーニー主演の映画「パーフェクト・ストーム (The Perfect Storm)」の舞台でも知られる寂れた小さな港町です。
ケープ・アン (Cape Ann 「アン岬」) に位置することからケープ・アン・サーペント (Cape Ann Serpent) とも呼ばれます。
もっとも古い記録では17世紀のものがあり、特に19世紀以降に目撃が多発するようになります。
400年近くもの間、多くの目撃情報が報告されていますが、レイク・サーペントと異なり閉ざされた領域での目撃ではないため、そのすべてが同一生物の目撃ということはないでしょう。
概ね、典型的なシー・サーペント (海蛇) タイプで報告されていますが、今回は特に1817年8月6日から1819年の3年間に目撃が集中したグロスター・シー・サーペントを中心に紹介します。
短期間の集中的な目撃であり、同一生物の可能性があるからです。
当時非常に話題になったことにより非常に多くの目撃者がおり、至近距離での目撃者らの報告によれば怪物の体長は50~100フィート (約15~30メートル) と開きはあるものの巨大であることだけは確かです。
体型はまさに「海蛇」
フランスの未確認動物学者ベルナール・ユーヴェルマンス (Bernard Heuvelmans) 氏は当時のグロスター・シー・サーペントの目撃証言等を検討した結果「本物」であったに違いないと結論づけています。
「(存在に) 疑いの余地はありません。
驚異的なシー・サーペントは実在したんです、まさに巨大な怪物がグロスターの港に現れたんです」
頭部は馬の大きさ、からだは樽ほどの太さと、目視であるため身近なものでその大きさを表現されておりおおよその大きさはイメージできます。
ちなみに「樽」といっても大小様々ですが、一般的に目にする酒樽であれば直径23~28インチ (約60~70センチ) 程度ということなのでそれぐらいを想像してみてください。
馬並の頭部に体の直径が70センチ、一見すると大きいですが、これが体長15メートル~となると話は違います。
体の幅の最低でも20倍以上の体長をもつということはかなり細長い体型です。
大抵の場合シーサーペントの正体としてリュウグウノツカイ (Regalecus glesne) はもっとも有力ですが、樽の太さと表現される直径から側扁しているリュウグウノツカイは却下です。
これら目撃情報の寸法を信じれば「未知の海蛇のような生物」に違いない、ユーベルマン氏のようにシー・サーペントは存在する (した) と結論づけたくもなります。
しかし、目撃証言や目撃証言から当時描かれたイラストを見るとからだは上下に波打っており、爬虫類のそれとは異なります。
(バシロサウルス)
(image credit by Dominik Hammelsbruch)
グロスター・シー・サーペントは明らかに哺乳類であり、UMA的にいえばたとえば絶滅種のバシロサウルス (Basilosaurus) 等が候補となるでしょう。
バシロサウルスは体長20メートル近くに対し非常に細身であったことからシー・サーペントの特徴を備えたクジラであるため、哺乳類型 (体を縦にくねらせるタイプ) のシー・サーペントやレイク・サーペントの正体として頻繁に登場するのはそのためです。
ではグロスター・シー・サーペントの正体はバシロサウルス?
UMA的にはそれもありですが、バシロサウルスは3000万年前には既に絶滅したと考えられているため、現実的な説もひとつ紹介しておきましょう。
まず最初期の目撃とそれ以後の目撃では生物自体が異なると考えられています。
発端となった最初の目撃ではおそらくゴンドウクジラの群れを1匹の巨大なシー・サーペントと認識してしまったと考えられています。
それ以降の目撃情報、頭部に角があった、背側が黒く腹側が白かった、丸みを帯びた胸ビレ、海岸近くで4時間もの間静止していた、潜水するときの特徴等々を検討すると、これはイッカク (Monodon monoceros) の身体的・生態的な特徴を示しており、イッカクの群れを一匹のシー・サーペントと誤認したのではないか、と言われています。
(イッカク)
(image credit by NOAA United States/Public Domain)
そもそもグロスターまでイッカクの群れが来るものなのかどうかは分かりませんが、イレギュラーであればあるほど見慣れない生物であり、そういった誤認の可能性が高まることも確かでしょう。
ただし目撃者の全部が全部、複数等のイッカクを連なる一匹のシー・サーペントと認識した、というのに違和感を感じる人も多いかもしれません。
ところで目撃の始まった1817年、グッド・タイミングでグロスターの浜辺に背中にコブを持つ小さな黒い蛇の死骸が発見され、グロスター・シー・サーペントの子供ではないかと大騒ぎになりました。
新種に間違いないであろうと「スコリオフィス・アトランティクス (Scoliophis Atlanticus)」なる学名まで検討されましたが、ヘビを調査した結果、背中に腫瘍のある既知種のヘビであることが判明しました。
怪物を巡って科学会を巻き込んでの大騒ぎ、現代では考えられませんが楽しそうで羨ましいですね。
(参照サイト)
Skeptical Inquirer
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