今回はホイ・シー・サーペント (Hoy sea serpent)、ペントランド海峡のシー・サーペント (Pentland Firth sea serpent) とも呼ばれます。
ペントランド海峡とはオークニー諸島とスコットランドに挟まれた海峡で、ホイ・シー・サーペントと呼ばれるのはペントランド諸島のホイ島近海で目撃されたことに由来します。
1919年8月、目撃したのは弁護士のジョン・マッキントッシュ・ベル (John Mackintosh Bell) 氏です。
午前9時半、ベル氏は友人4人と船でホイ島付近にマダラ釣りに出ました。
その移動中、釣り仲間が声を上げました「なにかいる!」
ベル氏が目を向けると、船から25~30ヤード (約23~27メートル)先に見慣れない生き物が水面上に首を出していたのです。
(ベル氏の妻が描いたホイ・シー・サーペント)
水面から見えている部分だけで5~6フィート (約1.5~1.8メートル)
首の太さは象の足ぐらい、小さな頭部はレトリーバーに似ており鼻先に向かって先細り、黒く短いヒゲを生やしていました。
首から下は水中に没していますが体色は茶色~灰色、シルエットから前肢・後肢もしくは四つのヒレを持っているように見えたといいます。
ホイ・シー・サーペントは頭部を何度か水から出したり没したりを繰り返すとやがて水中へと消えてしまいました。
驚いたことに友人たちはこの生物を見たのはこのときが初めてではなく、何度か見ているというのです。
(1906年に出版された書籍に載っていたシーサーペント)
水面から見えている首だけで5~6フィートということで、ベル氏は首の完全な長さは8フィート (約2.4メートル)、首を含めた全長は18~20フィート (約5.4~6メートル)、体重は2~6トンと見積もっています。
ホイ・シー・サーペントは一般的なシー・サーペント (巨大海蛇) と違って体はヘビのように細がなくはなく、ウミガメのようなシルエットであり、いわゆるネッシーの正体の候補に挙がる恐竜と時代を共にした巨大海生爬虫類を彷彿とさせるものです。
首の長い巨大海生爬虫類といえば日本ではエラスモサウルス (Elasmosaurus) やプレシオサウルス (Plesiosaurus) が人気ですが、いかんせん恐竜と共に絶滅して (したと考えられて) おり敷居の高い生物です。
(18世紀に描かれた首の長い鰭脚類)
そんな中、ホイ・シーサーペントの正体のひとつとして「首の長い鰭脚類 (ききゃくるい or ひれあしるい)」があります。
鰭脚類とはセイウチやトド、アザラシ、アシカ、オットセイたちのことです。
ホイ・シー・サーペントも首の長さを無視すれば鰭脚類そのものです。
ネッシーその他のレイク・モンスターの正体として「首の長い鰭脚類」は時折登場しますが、鰭脚類のほとんどは海水性であり淡水生のUMAよりも海水性のUMA、今回のホイ・シー・サーペントのほうがより可能性は高いといえます。
とはいえバイカルアザラシ (Pusa sibirica) のようにロシアのバイカル湖や河川に生息する淡水性の鰭脚類もいますから「首の長い鰭脚類」は淡水では無理、ということではありません。
既に18世紀から首の長い鰭脚類の存在は囁かれており、実在は証明されていないものの似たような生物の目撃が古くから続いていることが分かります。
ベル氏がまったくのデタラメを言っていないのであれば、ホイ・シー・サーペントの正体は未知の鰭脚類の可能性が高いといえます。
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