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2023年1月30日月曜日

ベトナム近海のシーモンスター ~ コン・リット (ムカデクジラ)


■ベトナム近海のシーモンスター ~ コンリット(ムカデクジラ)

今回はベトナム近海で目撃の多いシー・モンスター(海の怪物)、コン・リット(Con rit)。

コン・リットとはベトナム語(con rết)で単に「ムカデ」を意味します。

シー・モンスターなのにムカデ?と不思議に思うでしょう。

実際はムカデのようなシーサーペントという意味で、コン・リットはメニー・フィンド・シー・サーペント(「多数のヒレを持つシーサーペント」Many-finned sea serpent)の一種とされます。

ちなみに日本ではコン・リットと同義で「ムカデクジラ」という呼び名もあります。

(中世に描かれたシーサーペントは体節のようなものも確認できるものもあります)

― 多数のヒレを持つ海蛇 ―


シーサーペントとは巨大な海蛇を意味し、通常はヒレが明確に確認されることはあまりありません。

稀にウナギのような背ビレや尾ビレが描写されることもありますが、それらはリュウグウノツカイRegalecus russellii)の誤認とされる場合が多い存在です。

それではコン・リットはどのようなUMAなのでしょうか。

細長い体型を持つ点は典型的なシーサーペントと同様ですが、ムカデ(con rết)の名の通り、体の左右側面に無数のヒレが並んでいるとされます。

足は存在せず、その代わりに「ヒレの列」が体節のように連なっているイメージです。

UMAファンであれば、スカイフィッシュのシルエットを想像すると分かりやすいでしょう。

実在(あるいは化石)生物で近い印象を挙げるなら、アノマロカリスAnomalocaris)が思い浮かびます。

(アノマロカリス)
(image credit: Wikicommons)

― 打ち上げられた異形の死骸 ―


目撃は19世紀から始まり、最古の記録は1833年に遡ります。

このとき砂浜に打ち上げられた死骸は、全長60フィート(約18メートル)、幅3フィート(約90センチ)と、極端に細長い体型をしていたと記録されています。

目撃者は実際に死骸に触れたともいわれていますが、遺体は激しく腐敗しており、その外見をそのまま生前の姿と断定するのは危険です。

海岸に打ち上げられたクジラや巨大ザメの死骸、いわゆるグロブスターは、腐敗により脂肪組織が露出し、それがまるで「足」や「ヒレ」のような奇妙な輪郭を作ることがあるためです。

(グロブスターのひとつ)
(image credit: Wikicommons)

― 軍艦が目撃した生きた怪物 ―


一方で、腐敗死骸では説明できない「生体」の目撃例も存在します。

1899年、イギリス海軍の軍艦HMSナルキッソス(HMS Narcissus)の乗員が、ケープ・ファルコン近海でこの生物を目撃しました。


いずれも「イギリス海軍とシーサーペント」という興味深い一致を示す事例です。

報告によれば、その生物は約30分にわたり観察され、体長は135フィート(約40メートル超)。

軍艦と並走できるほどの遊泳力を持ち、体側には夥しい数のヒレが確認されたといいます。

― 正体の仮説 ―


ではコン・リットの正体は何なのでしょうか。

証言通りの特徴を備えた生物は、現生種はおろか化石記録にも見当たりません。

現実的な解釈としては、弱ったリュウグウノツカイが横たわるように泳ぐ姿を誤認し、その背ビレを複数のヒレと見間違えた可能性が挙げられます。

一方で、より大胆な仮説も存在します。

いわゆる「装甲クジラ説」です。

ムカデやヤスデは多足だけでなく、体節と硬い外皮(クチクラ)に覆われた構造を持ちます。

もし体表が節状に区切られ、装甲のような外皮を持つ細長いクジラが存在したとすれば、それこそがコン・リットではないか、という考えです。

細長いクジラといえば、UMA界隈でも知られるバシロサウルスBasilosaurus)が挙げられます。

(模式種バシロサウルス・ケトイデスBasilosaurus cetoides))

もっとも、装甲を持つクジラの存在は確認されていません。

ただし20世紀初頭には、化石の誤認などから「装甲を持つクジラ」が存在した可能性が議論されたこともあり、完全に荒唐無稽とも言い切れない歴史があります。

― 海に残された余白 ―


あの巨体に装甲を纏えば、まさに無敵の存在でしょう。

しかし現時点で、そのようなクジラや巨大ザメは発見されていません。

それでもなお、海には未確認の空白が残されています。

もしその空白のどこかに、節を刻んだ体と無数のヒレを持つ捕食者が潜んでいるとしたら。

コン・リットという名前は、その輪郭をかろうじて言葉にしたものに過ぎないのかもしれません。

(サメとは思えないラブカの体型は大きさはともかくシーサーペントとして申し分ありません)
(image credit: Wikicommons)

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