今回はタイワンアリタケです。
アリタケ、というより冬虫夏草といったほうが通りがいいでしょう。
寄生虫を毛嫌う人は少なくないですが、この冬虫夏草だけは寄生虫の作品でありながら高額な金銭を支払ってでも手に入れたがる人が多いのは皮肉なものです。
冬虫夏草の仲間 (Ophiocordyceps) は非常に多く、分かっているだけでも200種近く知られており、それぞれの冬虫夏草は、それぞれ特定の昆虫を専門に寄生します。
寄生するの相手はアリに限ったことではなく、ガやセミ、バッタ等々、その種類も豊富です。
減速、専門の昆虫にのみに寄生しますが、その専門の近縁種であれば専門外でも寄生することもあるそうです。
ただし、やはり専門外の種ではゾンビ化の成功率は著しく下がるといわれています。
さて今回紹介するのは、タイワンアリタケ (Ophiocordyceps unilateralis) という冬虫夏草です。
(original image credit by David P. Hughes)
寄生し宿主をゾンビ化するものには寄生虫が多いですが、冬虫夏草は菌類、つまりキノコの仲間です。
タイワンアリタケのターゲットはオオアリの仲間で、寄生方法はとっても簡単、かれらの体にタイワンアリタケの胞子が降り注ぐだけです。
胞子は降り注いだ部分の固い外骨格を破壊し体内に侵入、続けて脳内に入り込みます。
ここからがタイワンアリタケの腕の見せ所。
厳密にはマインドコントロールではないらしいですが、アリの意に反した行動を強いるので、事実上、マインドコントロールといっても過言ではないでしょう。
まずは寄生したアリを巣の外へおびき出します。
菌類はそれぞれ、自分たちの成長に適した温度や湿度を持っていますから、今度はそういった場所へ誘導します。
しかし、温度と湿度が適していればどこでもいいというわけではありません。
必ず、ターゲットのアリたちが通る場所である必要があります。
この両方を満たしたすばらしい場所を見つけるや、その付近にある地面から高さ25センチにある葉っぱめがけて登らせます。
目的の葉っぱの上に連れてくると、葉脈をがっちりかじりつかせ体を固定させます。
これはアリが死んでも落っこちたりしないようにです。
この時点ではまだ見た目こそアリの姿をしていますが、体中はタイワンアリタケの菌でいっぱいで、まさに生きた屍 (しかばね)、ゾンビです。
まもなくアリはまもなく絶命しますが、タイワンアリタケはアリの死と入れ替わるように、後頭部付近を突き破って子実体の伸ばします。
頭からキノコをはやすアリ。
子実体からはアリたちにとって「死の粉」である胞子を振り撒きます。
そう、だからアリたちの通る、胞子を振り撒くには高すぎず低すぎず、絶妙の高さの場所を選んで登らせたのです。
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