タッツェルブルム / タッツェルヴルム (Tatzelwurm) はヨーロッパにおいてもっとも有名な陸生UMAのひとつです。
ドイツのバイエルンをはじめ、スイス、フランス、イタリア、オーストリアのアルプス山中に生息するといわれています。
UMAというのは各国固有であり、いくら陸続きのヨーロッパといえど、同一のUMAが国をまたいで目撃されるのは非常に珍しいことです。
(タッツェルブルム)
(image credit by Mummelgrummel/wikimedia)
ただしタッツェルブルムというのはドイツでの呼び名であり、スイスではシュトレンヴルム (Stollenwurm) やシュトルヴルム (Stollwurm)、フランスではアラッサス (Arassas)、オーストリアではベルクシュトゥツ (Bergstutz) といった感じに各国呼び名は異なります。
少なくとも17世紀、古くから伝わることで目撃証言が多く、それ故、逆にその姿がとらえどころのないものとなっています。
UMAはあまりに目撃例が多いと、複数の既知動物の誤認がそのUMAの特徴に付け加えられていくため、ハイブリッド化、キメラ化が進んでしまうからです。
タッツェルブルムにもそれは当てはまり、爬虫類的であったり哺乳類的であったりとその目撃証言すべての特徴を満たそうとすると矛盾が起きてしまい姿を固定できなくなってしまいます。
一般的に浸透しているであろうタッツェルブルムの姿は「前肢2本だけを持つヘビのような細長い胴体を持つ生物」でしょう。
体長は2~6フィート (約0.6~1.8メートル) とそれほど大きな生物ではありません。
(アホロテトカゲ)
前肢2本だけのヘビのようなトカゲといえばミミズトカゲの一種、フタアシミミズトカゲ (Bipedidae) の仲間がそれに当てはまります。
フタアシミミズトカゲのアホロテトカゲ (Bipes Biporus) の奇妙な姿はまさにタッツェルブルムの正体としてはうってつけですが、生息地 (メキシコ) の問題以上に、直径数ミリ・体長が最大でも24センチ程度とまさにミミズ程度の大きさしかないことがその正体としては障壁となります。
ミミズトカゲ最大種のひとつ、中南米に生息するシロハラミミズトカゲ (Amphisbaena alba) は最大80センチを超すミミズトカゲ界の「巨人」ですが、こちらは前肢が退化しておりその姿は「巨大なミミズ」そのものであり、タッツェルブルムとは少々異なります。
シロハラミミズトカゲ級のフタアシミミズトカゲ (要するに巨大なアホロテトカゲのような姿) がヨーロッパでもし発見されるようなことがあればそれこそタッツェルブルムの正体でしょう。
(シロハラミミズトカゲ)
ところでタッツェルブルムは日本では「ヨーロッパ版ツチノコ」と紹介される場合もありますが、爬虫類的UMAということ以外あまり共通点はありません。
さてタッツェルブルムの姿には上記の特徴に加え「ネコに似た頭部」「(2本ではなく) 4本の (短い) 足」をもつといった目撃情報もあります。
また頭部だけでなく「体の後端が足のないネコ」に似ているという説もあります。
頭部がネコタイプのタッツェルブルムもかなり浸透しています。
こうなってくるとその正体はトカゲ等の爬虫類ではなく哺乳類、細長い体型を考慮すればイタチの仲間を誤認した可能性が高いと言えます。
これはタッツェルブルムが存在するという先入観が既知動物を誤認する原因を作り出していると結果とも考えられます。
ただしそれを考慮しても、やはりタッツェルブルムとイタチとでは姿が異なるため、異常に胴長のイタチ科の未知種が存在している可能性はあるかもしれません。
この他にもその正体としてオオサンショウウオ説もあります。
とはいっても、ご存知の通り、オオサンショウウオの仲間は日本 (オオサンショウウオ, Andrias japonicus) と中国 (チュウゴクオオサンショウウオ, Andrias davidianus) にしか現存しません。
ただし現在ヨーロッパではオオサンショウウオは生息していませんが、化石からヨーロッパにもヨーロッパオオサンショウウオ (Andrias scheuchzeri) がかつて生息していたことが分かっています。
タッツェルブルムとオオサンショウウオは姿が似ているとは言い難いですが、ヨーロッパではオオサンショウウオが生息していないためマイナーな存在であり実在すればタッツェルブルムと混同されても不思議ではありません。
ところで多くの目撃情報がありますが写真撮影に成功した人はいるのでしょうか?
(バルキン氏が撮影したタッツェルブルムの写真)
実はスイスの写真家、バルキン (Balkin) 氏によって撮影されたタッツェルブルムの写真と言われるものが存在します。
バルキン氏の主張によれば、これは1934年、スイスのアルプス山中で撮影したということです。
しかし、伝えられるタッツェルブルム像から完全に逸脱しており別なUMAと考えたほうが無難ですが、そもそもバルキン氏によって作成されたハリボテではないかと考えられています。
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個人的にはホライモリ、あるいは
返信削除ヨーロッパアシナシトカゲ(バルカンヘビガタトカゲ)も推したいところですね。
ただ、ホライモリは洞窟の水中で生活するため、陸で見ることはない点、
アシナシトカゲは山地よりは平野、森林で見ることの多い生き物なので
どっちもタッツェルブルムの正体とするには決め手に欠けますねー。
書き込みありがとうございます。
返信削除長くなるので書きませんでしたがホライモリも候補に上がっていますよ。
山間部での目撃が多いためやはり爬虫類のほうがより可能性は高いかもしれまs年。
『スイスのツチノコ』として日本に紹介された割には、目撃証言からだと『全然ツチノコじゃないじゃん…』となった覚えがあります。
返信削除その後、女子マラソンの野口みずき選手が、サンモリッツ山中での強化訓練中に、ツチノコを目撃した!とのニュースを聞いてビックリ。
やっぱりいたんだ!(しかも2回目撃して、それぞれ形状が別タイプだったらしい)
そのニュース全然知りませんでした、タッツェルブルムの目撃多発地点であるスイスでの目撃となれば、それはツチノコではなくタッツェルブルムかも?って思ってしまいますね。
返信削除私も当時、食事中にそのニュースを聞き、思わず吹き出しながら、『それはツチノコじゃねぇ!タッツェルブルムだ!』と、まるで地元の老人みたいな突っ込みをしました。
返信削除それにしても、バルキン氏の写真生物がキュートです。着ぐるみを作れば、ゆるキャラとして町おこしできますよ!
ツチノコって単語がUMA特番でもない番組から聞こえてきたら、それだけで「えっ!?」って思いますよね。(笑)
返信削除バルキンの写真、やる気なさそうですよね、あのタッツェルブルム。
姿的にサイレンの可能性もあるかもしれません。
返信削除白亜紀~暁新世のHabrosaurusなんかは1.6mほどになったようでサイズも合うように思えます。ただ生息地は異なりますね・・・
両生類では生息域やその姿からホライモリのほうが人気があるようですが、サイレンの絶滅種は1.6メートルですか、大きいですね。
返信削除これぐらいあれば水生ですがタッツェルブルムの候補としてはいいですね。