■人の世の生き血をすする ~ キュウケツガラパゴスフィンチ
吸血する動物といって真っ先に思いつくのはコウモリに違いありません。
実際に吸血するコウモリは1400種以上知られる全体の0.2~0.3パーセントに当たる南米に生息する3種のみ。
ほとんど存在しないにもかかわらず、この3種により甚大な風評被害を受けており、その見た目も相まって人間と同じ哺乳類にも関わらず忌み嫌っている人も少なくありません。
さて今回はUMAではなく吸血する実在する鳥のお話、ガラパゴス諸島に生息するスズメほどの大きさのハシボソガラパゴスフィンチ (Geospiza difficilis)。
フィンチたちは各島の環境に合わせ食性や体つきなど変化させていきました。
その中でダーウィン島 (Darwin Island) とウォルフ島 (Wolf Island) にのみ生息するハシボソガラパゴスフィンチの亜種、キュウケツガラパゴスフィンチ (Geospiza septentrionalis) はなんと吸血します。
英名はヴァンパイア・グランド・フィンチ (Vampire ground finch) で単にヴァンパイア・フィンチとも呼ばれます。
猛禽をはじめとする肉食の鳥は珍しくありませんが、血を吸う鳥は唯一無二です。
初めに誤解なきように断っておくと、彼らの食性は他島のフィンチたちと同じ雑食で、種子であったり昆虫がメインです。
決して吸血一本でやっているわけではないのです。
しかし メインのエサが欠乏する乾季になると、ナスカツオドリ (Sula granti)、アオアシカツオドリ (Sula nebouxii) といった自分たちよりもはるかに大きなカツオドリに近寄りその鋭いクチバシで皮膚を傷つけ吸血します。
圧倒的な体格差でありカツオドリたちは逃げることも追い払うことも容易であるにも関わらずそういった仕草をほとんど見ません。
これは元来、フィンチがカツオドリの羽に就いた寄生虫を食べてあげていた共生関係から進化したのではないかと考えられています。
現状、吸血する代わりに寄生虫を取ってくれているのか分かりませんが (まあ雑食なので見つけ次第食べてはいそうですが)、カツオドリはギブ・アンド・テイクと信じて血液を提供しているようです。
キュウケツガラパゴスフィンチの不埒な悪行三昧はこれだけにとどまらず、カツオドリが卵を産むと、それを岩から転がり落して割って食べるということもします。
カツオドリはなんてお人好しなんでしょう。
桃太郎侍がこれを知ったらカツオドリは確実に斬られていることでしょう。
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