2020年9月19日土曜日

戦時中にひっそりと埋葬された巨大モンスター ~ ゴーロック・シー・サーペント

 (original image credit by Globster, Blob and more)
(ランキン氏によるスケッチ)

■戦時中にひっそりと埋葬された巨大モンスター ~ ゴーロック・シー・サーペント

スコットランドの港町ゴーロック (Gourock)。

ゴーロックとはゲール語で「ニキビ」や「吹き出物」を意味しますが、これは町にある小高い丘を町の「ニキビ」に例えたことに由来します。

この町の人気スポットは海に接した100年以上の歴史のあるゴーロック屋外プールです。

100年以上の歴史があるといっても改修されておりとても清潔感があります。

水温は29度以上に保たれた温水プールで年間を通して楽しめます。

いつも賑わう観光地ですがこれが1940年代ともなればガラリと様子は変わります。

なにせ時代は第二次大戦の真っ只中。

ゴーロックのビーチに一匹の巨大な生物が打ち上げられたのはそんな人々が生きるか死ぬかの大変な時代、1942年の夏のことでした。

現在ゴーロック・シー・サーペント (Gourock sea serpent) と呼ばれるこのUMAはひどく腐敗したウバザメ (Cetorhinus maximus) の死骸だったのではないかといわれています。

UMA好きの方であれば腐敗したウバザメの死骸が数々のUMAの正体であったことはご存知のはず。

しかし当時、この生物の調査に派遣された評議会議員で測量士のチャールズ・ランキン (Charles Rankin) 氏は戦後、幾度かテレビ番組に登場しこの説を真っ向から否定します。

「腐敗したウバザメなんてとんでもありません。

そもそもその生物は全く腐敗なんかしていませんでした、完全な状態、無傷だったんです。

鼻先から尾の先端までおよそ27~28フィート (約82~8.5メートル)、胴体の直径は6.5フィート (約2メートル) もありました。

大別して3つの部位で構成されていました、「首」「胴体」「尾」です。

長い首の先端には比較的小さな頭部があり、アザラシに似ていましたが吻 (鼻先) は尖り頭頂部は平坦でした。

両目は大きくアザラシのそれのようでしたがより頭頂部に位置しており、目のすぐ上、つまり人間で言う眉毛の部分は大きく隆起していました。

上下の顎には鋭く尖った大きな歯が生えていました。

四肢の代わりにL字型の2対のヒレを持っていましたが、前部のものは後部のものより大きく、後部のものはより幅広でした。

尾は長く長方形でした」

この首長竜的な「長い首の先端に小さな頭部」という構図は腐敗し下顎部分が脱落してしまったウバザメの死骸に見られる顕著な姿で、ウバザメが正体であろうといわれるのも頷けます。

ウバザメの下顎が取れてしまうと、頭部先端の吻部が「首長竜の頭部」に変貌し、その頭部から胸ビレにかけて細く残った部分は「首長竜の首」に変貌します。

(ウバザメ)
(original image credit by Greg Skomal/Public Domain)

(上の画像でイメージしづらい人はこちらの画像でイメージしてみてください)

いわゆる「頭部」と思われている部分はウバザメの吻部というわけです。

多くの首長竜タイプの死骸はこれで説明が可能です。

ただしランキン氏の言葉を信じればそれはあり得ないことになります。

なぜならその生物は腐敗などしておらず「無傷」であり、頭部には「口」があり、口中には「尖った歯」が並んでいたというのですから。

ウバザメが正体である場合、その頭部は「ウバザメの吻」であるため、もちろん口はありませんしその部分に当然歯もありません。

そもそもウバザメの歯はというと、プランクトン食であり、歯は6ミリほどととても小さいもので「鋭く尖った大きな歯」ではありません。

またウバザメの下顎部分が脱落し吻部を頭部と考えた場合、目の位置はむしろ頭部の下方に位置していると捉えられるはずです。

繰り返しになりますが、そもそもランキン氏はその生物を「無傷」だと主張しているのです。

(19世紀半ばに描かれた座礁したウバザメの絵画。後肢が描かれています)

惜しむらくは写真が存在しないことですが、これは戦時中ということもあり軍事制限下で撮影が許可されなかったためだといいます。

当時、ランキン氏はスコットランド博物館 (Museum of Scotland) に電話しこのゴーロック・シー・サーペントを調査したほうがいいと何度も説得したそうですが、戦時中ということもありUMAの調査にはあまり乗り気でなかったといわれています。

夏場でありまたたく間に腐敗していく謎の巨大生物の死骸をそのまま放っておくわけにもいかず、切り刻まれ地中に埋められてしまいました。

スコットランド博物館はランキン氏の説得を完全に無視したように長い間伝えられていましたが、最近になって実はランキン氏と当時のスコットランド博物館の前館長A.C.スティーブン博士 (Dr. A. C. Stephen) はこの生物を巡って綿密に連絡を取り合っていたことが判明しています。

また諦めきれなかったランキン氏は埋められる直前にヒレから剛毛のような組織を抜き取り、密かに保管していました。

(ランキン氏が保管していた生物の組織)
 (image credit by Globster, Blob and more)

スティーブン博士はこの組織を調査しサメの鰭条 (きじょう) と断定しており、実はその生物がサメであることが判明していたのです。

ランキン氏はこの生物からサメというよりは爬虫類的な印象を受けてしましたが、それは否定されたことになります。

しかしそれと同時にランキン氏による生物の歯の説明から有力視されていたウバザメの可能性もまたスティーブン博士によって否定されました。

このようなやり取りがあったにもかかわらず、ゴーロック・シー・サーペントの正体が後に「腐敗したウバザメ」と断定されるようになったのは、当時のこういったやり取りが完全に無視され、さらにウバザメと合致しないランキン氏の証言はすべて葬り去られた結果だと考えられています。

つまりウバザメと合致する証言部分だけをつぎはぎしてウバザメ説が作り上げられたというのです。

スティーブン博士はこの生物に大いに興味を持ち、切り刻まれて埋められたその怪生物を掘り起こし頭骨と歯を調査しようと提案しました。

しかし戦時中の混乱期であり、埋められた場所が特定できず結局見つけ出すことはできませんでした。

有力視されていたウバザメも否定され、かといって既知のサメにこのような姿のものは存在しません。

(ラブカ)

爬虫類的な頭部を持つサメといえばラブカがいますが、頭部以外は似ておらず、大きさ的にもあり得ません。

戦時中でさえなかったならば、、、

当時から80年近く経っていますが、なにかの折にこのゴーロック・シー・サーペントの骨が発見される可能性もわずかながらあります。

軟骨魚類であり頭骨等骨格は絶望的ですが「歯」だけは残っているはずですから。

(参照サイト)

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5 件のコメント:

  1. 体表についての記録がないみたいですが、外観の大まかなイメージからすると、未知の海生哺乳類…だといいなあ。
    あと、あれほどこの生物にご執心だったランキン氏が、スケッチを残さなかったのかな?
    解体までしてるんだから、骨格まで記録できたはずなのに…。

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  2. 遊びに来てくれてありがとうございます。
    一番上の画像はランキン氏の直筆スケッチですよ!

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  3. あ!本当だ!ごめんなさい(>_<)。
    それにしても…動かない現物が目の前にあるのだから、もう少し克明なスケッチが欲しかったなあ。顔のアップとか。

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  4. ランキン氏の言う通りなら鮫じゃないかもだから骨が見つかるかもしれん

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  5. それだったら一番いいですね。

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