■身長4.5メートル!? ~ フロリダ・ジャイアント・ペンギン
今回はフロリダ・ジャイアント・ペンギン(Florida Giant Penguin)。
スコットランド生まれのアメリカ人未確認動物学者、アイヴァン・T・サンダーソン(Ivan T. Sanderson)氏、ベルナール・ユーヴェルマンス(Bernard Heuvelmans)氏と並ぶ、未確認動物学の草分け的存在です。
当サイトでも頻繁に登場する、腐敗して正体不明になった肉塊「グロブスター(Globster)」や「場違いな工芸品(out-of-place artifacts)」こと「オーパーツ(OOPArts)」、降るべきでない「空からの落下物(falls from the skies)」を指す「ファフロツキーズ(fafrotskies)」など、これらの言葉はサンダーソン氏による造語です。
(かつてオーパーツだったカブレラストーン (イカストーン))
そもそも日本語の未確認動物学に該当するクリプトゾオロジー(Cryptozoology)という言葉も、サンダーソン氏とユーヴェルマンス氏によって広められたものです。
両者はともに未確認動物学者ですが、ユーヴェルマンス氏が動物学を基本とした研究者であったのに対し、サンダーソン氏は超常現象研究家としての側面も強く、未確認動物学はその活動のひとつに過ぎませんでした。
それ故、ユーヴェルマンス氏なら一蹴しそうな超常的UMAに対しても比較的寛容で、よほど奇妙な存在であっても頭から否定しない姿勢を見せています。
そんなサンダーソン氏が、その存在を真剣に検討したUMAのひとつが、フロリダ・ジャイアント・ペンギンです。
― フロリダに現れた巨大ペンギン ―
このUMAには、2つの点で異様な特徴があります。
まずひとつは目撃場所。
現存するペンギンはすべて南半球に分布しており、唯一の例外であるガラパゴスペンギン(Spheniscus mendiculus)も、ほぼ赤道直下に生息しています。
ところがフロリダ・ジャイアント・ペンギンは、その名の通り完全な北半球に位置するアメリカ・フロリダ州で目撃されたのです。
そして、もうひとつがその大きさです。
現生最大のペンギンはコウテイペンギン(Aptenodytes forsteri)で、立ち上がった状態で約1.3メートルになります。
(左からアンスロポルニス、人間、コウテイペンギン)
一方、絶滅した巨大ペンギン、いわゆるメガペンギンの仲間には、パレユーディプテス・クレコウスキイ(Palaeeudyptes klekowskii)やアンスロポルニス・グランディス(Anthropornis grandis)のように、1.7メートル前後に達した種類も存在しました。
ところが、フロリダで目撃されたという怪物は、それらさえ遥かに上回ります。
その身長は15フィート、約4.5メートル。
コウテイペンギンの3倍以上という、まさに怪物級のペンギンだったのです。
― 砂浜に残された「3本指」の巨大な足跡 ―
1948年2月から3月にかけて、フロリダ州クリアウォーター・ビーチの海岸で奇妙な事件が起こりました。
砂浜に、巨大な3本指の足跡が残されていたのです。
しかも、その足跡は海から現れ、再び海へと戻っていくように続いていました。
その後、メキシコ湾から約40マイル(約64キロメートル)内陸にあるスワニー川沿岸でも、よく似た巨大な足跡が発見されたといいます。
さらに「巨大な鳥のような生物を見た」という目撃談まで現れ、事件は一気に注目を集めました。
ボートから海上に浮かぶ巨大なペンギンのような生物を見たという証言や、飛行機の乗客がスワニー川付近で巨大な鳥を見たという証言も伝えられ、新聞各紙がこの奇妙な怪物を取り上げました。
サンダーソン氏も現地を調査し、この生物について「自然の生息域から離れてしまった巨大ペンギン」という仮説を真剣に検討しています。
― 40年後に判明した「巨大ペンギン」の正体 ―
しかし、現在ではこの事件の核心部分について、ほぼ決着がついています。
1988年4月11日、新聞『セントピーターズバーグ・タイムズ(St. Petersburg Times)』に掲載された記事によって、巨大な足跡の正体が明らかになりました。
仕掛け人だったのは地元の男性トニー・シゴリーニ(Tony Signorini)氏と、1969年に亡くなった地元のいたずら好き、アル・ウィリアムズ(Al Williams)氏でした。
2人は恐竜の巨大な足跡の写真などに触発され、3本の巨大な指を持つ足を模した鉄製の靴を製作。
それを履いて夜の砂浜を歩き回り、巨大生物の足跡を残していたのです。
シゴリーニ氏はその「ペンギンの足」を記念品として保管しており、1988年の取材では実物を記者に披露しています。
こうして、少なくとも有名な巨大足跡については、正体が明確な悪戯だったことが判明しました。
つまり、フロリダ・ジャイアント・ペンギンは現在では科学的根拠のないUMAであり、その象徴だった「巨大な3本指の足跡」も人間によって作られたものだったのです。
ただし、ここで少し気になることがあります。
足跡事件が完全な悪戯だったとしても、それと同時期に報告された「巨大な鳥のような生物」の目撃まで、すべて同じ悪戯だったと断定できるのでしょうか。
― 巨大ペンギンを見た人々は何を見たのか ―
巨大ペンギンの目撃談の多くは、海上で泳ぐ姿だったとされています。
海面から身体の一部だけが見える状況では、実際の大きさを正確に判断することは困難です。
比較対象がほとんどない海上では、動物との距離を誤認するだけでも、そのサイズは簡単に巨大化してしまいます。
もちろん、実物のペンギンをほとんど見たことがないフロリダの人々が、仮に大型のペンギンを見れば実際以上に大きく感じた可能性も考えられます。
しかし、フロリダは野生のペンギンが自然に到達できる場所ではありません。
しかも、コウテイペンギンを4.5メートルの怪物に見間違えるというのも、さすがに無理があります。
そこで私が候補として挙げたいのが、ザトウクジラ(Megaptera novaeangliae)の幼体です。
(ザトウクジラ)
ザトウクジラは白と黒のツートンカラーに近い体色を持ち、大きな胸ビレが特徴です。
背ビレは比較的小さく、背中は概ね滑らかなため、表層近くを泳ぐ個体を特殊な角度から見れば、確かに奇妙な鳥のようなシルエットに見える可能性があります。
通常であれば、ザトウクジラを巨大ペンギンと誤認するとは考えにくいでしょう。
しかし、当時のフロリダではすでに「巨大な3本指の怪物」が話題になっていました。
巨大ペンギンがいるかもしれないという情報を先に与えられていれば、海面から姿を見せた未知の生物を、そのイメージに引っ張られて解釈してしまうことは十分にあり得ます。
つまり、そこにいたのは「巨大ペンギン」ではなく、巨大ペンギンを探していた人々が見つけてしまった別の巨大生物だったのかもしれません。
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これ地元民のいたずらって報道ありましたよ
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