■マオリ族がその存在をひた隠す ~ オレンジ・ブレスト・ペンギン
今回はペンギンのUMAです。
オレンジ・ブレスト・ペンギン (Orange-breasted penguin)。
未確認動物学者アイヴァン・T・サンダーソン (Ivan T. Sanderson) 氏が存在を信じた身長4.5メートルのフロリダ・ジャイアント・ペンギンのような痛快さはありませんが、とても興味深いペンギンです。
マオリ族によればこのペンギンはニュージーランド南西部のダスキー・サウンド (タマテア) および南島の南西方向に浮かぶソランダー島のとびきり限定された範囲でのみ目撃される超絶レアな生物です。
歴史学者にして民族学者であるハリーズ・ビーティー (Herries Beattie) 氏がマオリ族からその存在を教えられたものの、オレンジ・ブレスト・ペンギンの唯一の繁殖地であるダスキー・サウンドにある洞窟の場所は教えてもらうことはできませんでした。
しかしニュージーランド滞在中、ビーティ―氏はソランダー島 (Solander Island) に流れ着いたオレンジ・ブレスト・ペンギンの死骸を発見したと主張しています。
「知っている中で最大のペンギン」だったといい、驚くほど胸部は濃いオレンジ色をしておりトサカを持っていました。
オレンジ・ブレスト・ペンギンとは「オレンジ色の胸のペンギン」という意味で、この胸部の特徴的なカラーリングから命名されています。
「知っている中で最大のペンギン」という表現はビーティー氏の動物学の造詣の深さに左右されてしまうため判断に迷います。
(オウサマペンギン)
(image credit by Wikicommons)
身長40センチほどしかないコガタペンギン (Eudyptula minor) しか知らないのと、現生種最大のコウテイペンギン (Aptenodytes forsteri) やオウサマペンギン (Aptenodytes patagonicus) まで知っているのとでは「知っている中で最大」というのは大きく異なります。
ま、本業は生物学ではないので仕方ないでしょう、コウテイペンギンとオウサマペンギンはそれぞれ最大で1.3メートル、1メートルぐらいなので、オレンジ・ブレスト・ペンギンは1メートルぐらいあったと考えてみましょう。
ビーティー氏の証言にある「トサカ」はおそらくマカロニペンギン属 (イワトビペンギン属 / Eudyptes) に見られる冠羽 (かんう) ではないかと思われます。
(キマユペンギン)
(image credit by Wikicommons)
この中でニュージーランドの固有種にして生息域も完全に一致するキマユペンギン (フィヨルドランドペンギン / Eudyptes pachyrhynchus) は稀に英語でフィヨルドランド・クレステッド・ペンギン (「フィヨルドランドのトサカをもつペンギン」の意, Fiordland crested penguin) と呼ばれることもあります。
またマオリ族はこのペンギンを彼らの神話に登場する神、タワキ (Tawaki) と呼ぶこともビーティー氏がマオリ族に繁殖地を教えるのを拒んだ理由と考えれば納得できます。
タワキと呼ばれる所以ははっきり分かっていないものの、タワキは稲妻を身に纏 (まと) うといわれ、キマユペンギンの黄色の冠羽を稲妻に見立てそう呼んでいるのかもしれません。
しかし欠点として、まったく胸部はオレンジ色ではなく、身長も60センチぐらいしかないということです。
そもそもビーティー氏がいうようなオレンジ色の胸部のペンギンは知られていませんが、オウサマペンギンなんかは胸部は幾分黄色味を帯びており、体長も1メートル、トサカの有無を除けばこちらの方がオレンジ・ブレスト・ペンギンに近く感じます。
ニュージーランドはオウサマペンギンのメインの生息地から外れますが、ニュージーランド沿岸にも時々やってくることが知られており、目撃しても不思議ではありませんし、希少性も高いという点で有利です。
但し、今度はトサカがありません。
やはりここはマオリ族の言葉を信じ、超限定的な繁殖地で暮らす未知の巨大ペンギンということにしておきましょう。
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