■明治時代に捕獲された謎の生物 ~ 章魚人形 (タコニンギョウ)
中世のヨーロッパでは人間と海洋生物のハイブリッド的な生物が文献にたびたび登場します。
代表的なものはビショップ・フィッシュで、残されたスケッチからその正体はカスザメであったりダイオウイカであったと考えられています。
ビショップ・フィッシュは「司教の魚」を意味し、英語ではビショップ・フィッシュ (Bishop fish) の他にシー・ビショップ (Sea bishop) やシー・モンク (Sea Monk) とも呼ばれますがほぼ同義です。
今回紹介するのは日本版のビショップ・フィッシュといえる章魚人形 (たこにんぎょう / Tako-ningyo) です。
(章魚人形の図版)
章魚とはオクトパスのあのタコ (蛸) のことで、章魚人形とは「人間のようなタコ」を意味します。
実は章魚人形は目撃されただけではなく捕獲されています。
東京絵入新聞、1885年7月3日号によれば千葉県木更津沖で勘右衛門という名の漁師により「頭部が人間に似たタコ」が捕獲されたといいます。
新聞によれば頭の長さが4寸 (約12センチ)、胴体が9寸 (約27センチ)、体の周囲が1尺2寸 (約36センチ)、全長が3尺5寸 (約115センチ) ということです。
特徴があまり詳しく書かれていないことから本当にタコなのか?と疑問に思うかもしれませんがスケッチも残されており、足 (腕) も8本、シルエット的にもタコで間違いなさそうです。
ここで新聞のいう「頭」は実際にはいわゆる「外套 (胴体)」であり、「胴体」といっているものは実際には「頭部」となります。
擬人化されたタコのキャラクター外套部分に顔を描かれますが、まさに擬人化されたようなタコこそが章魚人形というわけです。
スケッチこそタコのようですが、やはり外套部分が人間の頭部のように見えるタコなんて見たことがありません。
タコにしては外套が小さく、頭部が長く見えることにより人間らしいシルエットになっているとすると、体全体に比して足が長く、外套がほっそり小さめのタコだったのかもしれません。
但し全体としては1メートル越えとバカでかくはないものの、それなりに大きいタコであるのも確かです。
既知種のミュータント (突然変異手) や怪我等で形状が崩れたものであるかもしれませんし、ふだんあまり目に着かない深海性の未知種だったかもしれません。
特に候補は挙げられませんが、サメハダテナガダコのようなシルエットを持つ、比較的外套が細めで腕 (足) の長いタコではなかったかと想像します。
(参考文献)
「本当にいる日本・世界の未知生物案内」(山口敏太郎著)
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