2023年4月4日火曜日

たった一度だけ、生物学者に目撃された幻のガー ~ アビサル・レインボー・ガー


■たった一度だけ目撃された幻のガー ~ アビサル・レインボー・ガー

「途方もない奇跡をでっちあげたり、実際の不思議なことを過って解釈したり、打ち勝ちがたい強さに対して自分の無力さを立ち向かわせたりして、人間はまわる地球にはいつくばり、最終知識というゴールへあらゆる歩みを向けるのだが、今までそれに到達したことはなく、これからも到達することはない。

なぜなら宇宙の不思議には限りはないからだ、、、

生涯に海底で一時を過ごすという経験を超えうる経験はただひとつしか残っていない、それは火星への旅だけだ」

 ― 世界動物発見史より (ヘルベルト・ヴェント著)

北米のUMAに頻繁に登場する、というか自分が登場させているだけかもしれませんが、淡水魚としては非常に巨大なガー (Lepisosteiformes) という魚がいます。

その中でもUMAの正体として登場するのは巨大化する、アリゲーターガー (Atractosteus spatula)ロングノーズガー (Lepisosteus osseus) の2種です。

(アリゲーターガー)

実際のところ、キューバに生息するキューバンガー (Atractosteus tristoechus) も最大2メートルの記録があり、同じ体長であれば体格的にはロングノーズガーよりもボリューミーでアリゲーターガーに次ぐ巨大種です。

但し、キューバから伝えられるUMAの絶対数が少ないこともあり「UMA界では」マイナーな存在です。

さて、今回はアビサル・レインボー・ガー (Abyssal rainbow gar)。

名前の通り「ガー」の仲間と考えられる未知生物です。

アビサル (Abyssal) とは「深海の」を意味し、つまりアビサル・レインボー・ガーとは「深海に棲息する虹のような色をしたガー」という意味です。

この生物は1934年、たった一度きり、深海で観察された魚であり、ガーでありながら海水で目撃されました。

観察したのは冒頭のコメントを遺したアメリカ、ニューヨーク生まれのナチュラリストにして探検家、鳥類学者、海洋生物学者、昆虫学者、と多くの肩書を持つ著名な生物学者のウィリアム・ビービ (William Beebe) 氏です。

(トロピカルガー (Atractosteus tropicus))
(image credit by Wikicommons)

1930~34年にかけて深海探査艇に乗り生物学者初の深海生物の観察を行いましたが、1934年8月11日、バミューダ海域のノンサッチ島 (Nonsuch Island) 沖の深海探索の際に「発見」したのがこの謎の深海魚、アビサル・レインボー・ガーです。

あ!?、なるほど!かのバミューダ・トライアングルなら怪物のひとつやふたつ、、、とオカルト的に有名なためそう思う人も中にはいるかもしれませんが、実際はこの上なくきれいな海域です。

ピービ氏の冒頭の発言をみても少なくとも当時考えられていたオカルト的な生物、クラーケンであったりシーサーペントのようなものに微塵の興味も示していなかったことが分かります。

さてアビサル・レインボー・ガーを見ていきましょう。

ピービ氏によればそれは水深762メートルだったといいます、4匹の見慣れない魚がそこにはいました。

アビサル・レインボー・ガーは頭部が赤、体は尾にかけて青から黄色にグラデーションのように色が変わっていたといい、まさに虹のように輝き、そして吻部が突出しまさにガーそのもののシルエットをした魚だったといいます。

深海に見たこともないような不思議な姿をした魚がいたとしてもなんらおかしくはないのですが、やはり気になるのは基本ガーは淡水域、前出のキューバンガーでギリ汽水域や海水域に進出する程度といったところです。

また、アビサル・レインボー・ガーが目撃されたのは、深海探査艇の黎明期であり、深海を照らす照明の技術も低く、観察窓も現在とは比べ物にならないほど見にくいものであったことは想像に難くなく、実際にピービ氏の表現した通りの魚であったかどうかは少々疑問の余地は残ります。

生物学者のピービ氏といえど、観察環境の悪さから彼の発言通りの生物ではなかったのでは?と疑われているのも確かです。

とはいえ、ガーに似ているというだけでガー目であると断言しているわけでもなく、深海の本格的な探索はいま始まったばかり、アビサル・レインボー・ガーの存在を否定するのは早計かもしれませんよ。

(参考文献)
世界動物発見史 (ヘルベルト・ヴェント著)

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