UMAの正体が恐竜や、恐竜と同時代に生きた海生爬虫類であったり翼竜であったりしたのは一昔前であり、開発が進み未開の地がなくなるにつれ、UMAの正体としてそういった恐竜生存説は沈静化してきてしまいました。
そんな中でアリカ・モンスター (Arica monster) は古き良きクラシックな特徴、つまり恐竜の特徴を備えたUMAです。
しかもみんな大好きティラノサウルス・レックスを代表とする、獣脚類 (じゅうきゃくるい) の特徴を持ちます。
アリカ・モンスターの名は、南米チリ最北端の都市、アリカ (Arica) で目撃されたこと由来しますが、その多くの目撃はチリ最大の砂漠、アタカマ砂漠 (Desierto de Atacama) です。
アタカマ砂漠は、南北に細長いチリの国の形状そのままに、海岸に沿って南北に細長く伸びる砂漠で、年間降水量が極端に少ない地域として有名です。
絶対的に降水量の少ないアタカマ砂漠において、おのずと動植物の数や活動は制限されてしまいます。
とはいえ、完全に干上がって雨が降らない地域では生命活動はどう転んでも不可能ですが、そうでない地域には両生類や爬虫類も少ないながら生息しています。
アリカ・モンスターは獣脚類なんだから肉食獣でしょ?もっとでかいエサがうろついてくれないと、と心配になっているあなたに朗報です。
哺乳類も生息しており、ビスカッチャ (Viscacha) というチンチラの仲間や40センチ程度の小型のキツネ、チコハイイロギツネ (Lycalopex griseus)、もう少しでかいどころではリャマの親戚のグアナコ (Guanaco) なんかがいて、体重100キロ超に成長します。
(グアナコの群れ。恐竜のご飯にどうぞ)
(image credit by Wikicommons)
まあ少ないながらも動物の生息自体はしていますので、恐竜のご飯はなんとか大丈夫でしょう。
ではアリカ・モンスターはどのようなUMAなのか?
アリカ・モンスターの初めての目撃者は2004年、サンティアゴ (Santiago) からはるばるやってきた旅行者たちだったのですが、アリカとイキケ (Iquique) の2つの都市をを結ぶハイウェイを走っている最中に出くわしました。
彼らは地元でその謎の生物の話をすると、アリカの市民たちからも同様の生物を目撃したという情報が続々と寄せられました。
目撃情報によれば、体長 (おそらく体高) は1.8メートルほど、非常に発達した後肢の筋肉でカンガルーのように二足歩行し、鋭い歯を持つ獣脚類のような頭部をしていたとのこと。
足跡も残っており、まるでカンガルーかエミューのような三本の爪の足跡だったといいます。
(小さいぞ!ドロマエオサウルス)
(image credit by Wikicommons)
アリカ・モンスターはその正体として、なぜか北米出身のドロマエオサウルス (Dromaeosaurus) が候補に挙がっていますが、これは地理的にもまあ、アフリカやアジアと比べれば近いですし、名の通った恐竜であること、そして体長が目撃情報と同じ1.8メートルだったことが影響しているのではないかと思われます。
但し、ドロマエオサウルスは体長こそ1.8メートルあるものの、尾が長いですから体高はせいぜい1メートル程度しかありません。
おそらくはドロマエオサウルスのプロフィールの1.8メートルだけで判断してしまったのかもしれません。
尾の長い獣脚類は二足立ちしたとき、体長から受けるイメージよりもはるかに体高が低いので注意が必要です。
大きさは大差ありませんが、せめて南米アルゼンチンで発掘されたドロマエオサウルス科 (Dromaeosauridae) のネウケンラプトル (Neuquenraptor argentinus) とかに差し替えてあげたほうがいいような気がします。
まあ限られたエサのことを考えるとドロマエオサウルス/ネウケンラプトルぐらいのほうが、昆虫やトカゲ、せいぜい家禽類を捕らえて食べれば問題ないだろうと、大きさ的には逆に好都合とみるべきかもしれません。
しかし、こんなクラシック的なUMAが、21世紀に入ってからも目撃は頻発するのは不思議です。
水生生物であれば、大きな波や泡の目撃が巨大水生UMAの目撃にすり替わることがあるのでまだ分かりますが、陸生のしかも恐竜系UMAの目撃が脈々と続いているというのはなかなかのことです。
それでは彼らが見たものは一体?
タラパカ大学の古生物学者、カオデロ・サントロ (Caodero Santoro) 氏は、アリカ・モンスターの目撃者たちと実際にあってデータを収集し、アタカマ砂漠北部は恐竜たちが生息するにあたって環境的に決して悪くなく、細々と生き残っている可能性もある、とリップ・サービスなんだか本気で言ってるんだかわからないコメントを残しています。
そうですね、恐竜が生き残っていたら最高!これがUMAファンたちに向けたアリカ・モンスター正体の第一候補、というか希望ですね。
では現生動物と誤認するとしたら?
やはり、まずはカンガルーでしょう。
詳しくは「宮城の真山で目撃が多発するカンガルー ~ ファントム・カンガルー」の記事を読んでいただくとして、ファントム・カンガルーというのは生息域以外で目撃されるカンガルーのこと。
つまり、オーストラリア以外の地域の自然下で目撃されるものは、原則、すべてファントム・カンガルーとなります。
実際にはカンガルーだけでなく、同種のワラビー、ワラルーも含まれ、要するに動物園等から脱走し野生化したものです。
ファントム・カンガルー現象は世界各地で起きているのであり得なくはないでしょう。
(レア)
(image credit by Wikicommons)
そしてもうひとつの誤認候補は巨鳥レア (Rhea americana) ですね。
チリはレアの生息域から完全に外れていますが、南米の鳥類であり、陸続きの南米ですからファントム・カンガルーよりもむしろハードルは下がるかもしれません。
生息域でないからこそ、見慣れないレアをカンガルーのように二足歩行するラプトルのような小型獣脚類と捉えてしまった可能性もあるのでは?ということで、こちらもアリカ・モンスターの誤認候補に付け加えておきましょう。
(関連記事)
0 件のコメント:
コメントを投稿