アンデスオオカミとは、かつて南米に生息していたのではないかといわれる大型のオオカミです。
1927年、ドイツ人動物商であるローレンツ・ハーゲンベック (Lorenz Hagenbeck) 氏が、アルゼンチンのブエノスアイレスで1枚の毛皮を手に入れたことに端を発します。
その毛皮は見慣れないもので、それを売っていた毛皮商人はこの毛皮はチリのアンデスに生息しているオオカミのものだと主張していました。
それから10年以上経った1940年、この謎の毛皮の鑑定を請け負ったドイツ人、インゴ・クルムビーゲル (Dr. Ingo Krumbiegel) 博士は鑑定の結果、これは新種の動物であると結論付けました。
その後、クルムビーゲル博士は、自らのコレクションにアンデス産の謎の頭骨を発見したことにより、ハーゲンベックしが手に入れたこの謎の毛皮と結びつけ再度の鑑定を行いました。
(タテガミオオカミ)
(image credit: Wikicommons)
頭骨は非常に大きく31センチにも及び、南米に生息するタテガミオオカミ (Chrysocyon brachyurus) のもの (約24センチ) より遥かに大きいことから、これは新種のオオカミであるとの結論に至りました。
1949年、クルムビーゲル博士はこの謎の毛皮と謎の頭骨を「アンデスオオカミ (Andean wolf)」として学会で発表し、その学名を "Dusicyon hagenbecki" としました。
種小名の "hagenbecki" はもちろん毛皮を手に入れた動物商、ハーゲンベックのことで、かれに敬意をあらわし献名したのです。
アンデスオオカミはハーゲンベックの名を冠し、まれにハーゲンベック・ウルフ (Hagenbeck wolf) やアンデス・ハーゲンベック・ウルフ (Andean Hagenbeck wolf)とも呼ばれます。
クルムビーゲル博士がアンデスオオカミを発表した後も、誰一人としてアンデスオオカミを見たものはいませんでした。
それどころか、このオオカミの実在を示す有力な手がかりすらなにも手に入ることはなかったため、ハーゲンベック氏が毛皮を手に入れたころ、すでにアンデスオオカミは絶滅していたか、それに近い状態だったのだろうと考えられました。
しかし、1960年代、毛皮を鑑定した別の科学者は、その毛皮にシェパードの特徴を見つけアンデスオオカミなどもともと存在していなかったと発表します。
そしてDNA鑑定の進歩著しい現代において、毛皮のサンプルから種の特定を試みました
が、毛皮の状態が非常に悪く鑑定は失敗に終わりました。
惜しむらくは謎の頭骨が、大戦の最中に失われてしまったことです。
アンデスオオカミは誰も見たことがなく、誰も知らない謎のオオカミです。
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