■空を舞った最重量の巨鳥 ~ アルゲンタヴィス・マグニフィセンス
アメリカにはビッグ・バード (Big bird) やサンダーバード (Thunderbird) と呼ばれる巨大な飛翔する生物の目撃があります。
それぞれどういった生物であるか明確に定義されているわけではないため、両者の違いははっきりとしていませんが、概ね鳥的なものがサンダー・バード、コウモリ的なものはビッグ・バードと呼ばれる傾向があります。
よりUMA的に表現すれば絶滅巨大猛禽類がサンダーバード、巨大翼竜がビッグ・バードといった感じです。
両者は混同されがちですが、元来サンダーバードは五大湖周辺のネイティブの神話を起源とする巨大なワシの姿をした神鳥であることから、猛禽類的な特徴を持つUMAをサンダーバードと呼ぶほうが理にかなっています。
さて、今回はサンダーバードの正体としてUMA本でもお馴染みのアルゲンタヴィス・マグニフィセンス (Argentavis magnificens) です。
アルゲンタヴィスは中新世の今から600万年ほど前に現在の南米アルゼンチンに生息していたとてつもなく巨大なコンドルです。
翼開長ではペラゴルニス・サンデルシ (Pelagornis Sandersi) にはわずかに及びませんが、史上最重量の飛翔できた鳥類です。
以前と比べると翼開長、体重ともに最新の研究により縮んでは来ましたが、それでも翼開長6.5メートル、体重72キロと推測される巨体は現世の鳥類と比較するととてつもない数字です。
(ワタリアホウドリ)
ちなみに現生種最大の翼開長を誇るのはワタリアホウドリ (Diomedea exulans) といわれ3.6メートル超の記録があります。
他にもモモイロペリカン (Pelecanus onocrotalus) の3.6メートル、ニシハイイロペリカン (Pelecanus crispus) の3.5メートル、シロアホウドリ (Diomedea epomophora) の3.5メートルと同レベルの記録を持つ巨鳥がいます。
猛禽類としてはアンデスコンドル (Vultur gryphus) の翼開長3.3メートルが最大といわれ、サンダーバード伝説のある北米にも翼開長3.0メートルのカリフォルニアコンドル (Gymnogyps californianus) が生息しています。
(アルゲンタヴィスとアンデスコンドルの大きさ比較)
アルゲンタヴィスの体長はこれら現生種の2倍ほどあります。
ある生物の2倍の体長を持つ生物がまったく同じ体型をしていることなどありえませんが、仮に完全に同じプロポーションを保ったまま2倍になったとします。
体長が2倍になると体重は3乗の8倍になり、表面積は2乗の4倍になります。
筋力は筋肉の断面積に比例します。
体重が8倍にもなっているのに筋肉の断面積は4倍にしかなっていないので、相対的に筋肉の受け持つ負担は莫大に増加します。
おまけにアルゲンタヴィス・マグニフィセンスは翼が長すぎるゆえ、離陸する際に大きく羽ばたこうものなら地面にぶつかってしまうため、ある一定の高さに達するまでは羽ばたくことすらままなりません。
(左よりエピオルニス、ドードー、ダチョウ)
(image credit by Museon/Den Haag)
体重12~15キロの現世のアンデスコンドルですら飛ぶのに一苦労していることを考えると70キロもあるアルゲンタヴィスはジャイアント・モア (Dinornis maximus) やエピオルニス (Aepyornis) のように飛べない鳥だったんじゃないの?そう訝 (いぶか) しく思う人もいるかも知れません。
しかしご安心を。
確かにアルゲンタヴィス・マグニフィセンスはどの時代でも、どんな場所でも生きていけるような巨鳥ではなかったかもしれません。
しかし傾斜の多い地形に強靭な脚力、そして上昇気流を利用し、何ら問題なく空に飛び立ったと考えられています。
一度舞い上がってしまえばほとんど羽ばたく必要はありません、600万年ほど前の南米の大空を大きな翼を広げ優雅に舞っていたことでしょう。
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