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2023年4月17日月曜日

人を喰うタホ湖の怪鳥 ~ オング


■人を喰うタホ湖の怪鳥 ~ オング

アメリカ、カリフォルニア州とネバダ州に跨る楕円形の湖、タホ湖 (Lake Tahoe)。

北米31番目に広い表面積を誇る湖で、なんといってもその特徴は深いこと。

最大水深594メートル、平均水深350メートルを誇るオレゴン州のクレーター湖 (Crater Lake) に続き深い湖で、最大水深501メートル、平均水深300メートルもあるとてつもなく深い湖です。

海において水深200メートル以上を深海と定義されますが、まさに深海といえる深い湖です。

タホ湖という名はこの地の先住民族ワショ族 (Washoe people) が使うワショ語で "Da owaga" と呼ぶことに由来します。

ワショ族に伝わるレイク・モンスターは2種類、ひとつは典型的な水棲のレイク・モンスター、タホ・テッシー (Tahoe Tessie)、そしてもうひとつがモンスター・バードと形容される巨大な怪鳥オング (Ong) です。

今回はオングを取り上げましょう。

オングは具体的な大きさを語られることはあまりないようですが、ワショ族の男性を持ち上げるほどの怪力ということなのでかなり大きいことが分かります。

(ハクトウワシの幼鳥、頭部がまだ白くありません)
(image credit by Wikicommons)

というのも現在確認されているもっとも重い重量を持ち上げた記録はハクトウワシ (Haliaeetus leucocephalus) がミュールジカ (Odocoileus hemionus) の子供を持ち上げた15ポンド (約6.8キロ) が最高だからです。

ハクトウワシの最大クラスの個体の翼開長は8フィート (約2.4メートル)、体重は15ポンド (約7キロ) であり、自分の体重とほぼ同等の物体を持ち上げることができるということになります。

(ミュールジカ。シルエット的には見慣れた日本のニホンジカ (Cervus nippon) と大差ないです)
(image credit by Wikicommons)

人間の生後間もない赤ちゃんであれば連れ去ってしまうことは可能ですが、子供ですら1歳を超えた辺りで既に平均で10キロに達しはじめ、2~3歳ともなるとほぼ確実に10キロ以上になります。

人間の成人ともなると小柄だったり痩せている人でも40キロはあるので、オングがいかに巨大であるか想像がつくでしょう。

日本でも最も見慣れたカラスのひとつ、ハシブトガラス (Corvus macrorhyncho) が自重の1.5倍のものを持ち上げることができるという研究結果もありますが、とはいえ、です。

(北米最大の猛禽、カリフォルニアコンドル (Gymnogyps californianus))
(image credit by Wikicommons)

さてオングとはいかなる鳥なのか。

オングはタホ湖の中央付近にある島に生息していると考えられています。

ワショ族には人食いとして知られ、かぎ爪で連れ去られ巣に運ばれ生きたまま貪り食われると信じられています。

その翼も強力で、羽ばたく力で木が曲がってしまうほどだといいます。

ワショ族に伝わるこんな逸話があります。

毎年夏になるとワショ族はグループでタホ湖周辺に遠征し食料を集めていました。

かれらはオングの奇襲を回避するため、野営地はグループで行動することを規則としていました。

しかしある年の夏のこと、この規則を破り、ひとりの青年がグループを離れ単独で森の中へ分け入りました。

そしてワショ族の間ではパカーガ (pacaga) と呼ばれる黒曜石で矢じりを作ることに夢中になっていたときのことです。

オングは物音ひとつ立てず空から奇襲し、青年を鋭いかぎ爪で掴むと空へ舞い上がりました。

オングはタホ湖の中央にある営巣地へ青年を運ぶと、そこには半ば喰われた状態のワショ族の無残な死体があったといいます。

青年にとどめを刺さず、オングはその場に残っている死骸を食べ続けていたといいます。
青年を殺さなかったのは獲物を新鮮な状態で保存しておきたかったからかもしれません。

しかし青年は逃げることができませんでした。

逃げたとしてもすぐに捕まり今度こそ殺されてしまうに違いありません。

黙って仲間たちの死骸が喰われているおぞましい光景を見ているだけでした。

しかしその光景を何度も見ているうちに青年は気付きました、オングは獲物を食べるときに目を閉じる癖があることに。

青年は目を閉じている隙を狙い、矢じり用のパカーガをオングを投げつけ殺しました。

青年はその島から脱出するために簡易的なカヌーを作り、オングの巨大な羽根をその体から引き抜き櫂 (オール) として仲間たちの元へと戻ったといいます。

部族に伝わる民間伝承以上のものではありませんが、もしかすると巨鳥に子供などが本当に連れ去られたり、連れ去られないまでも急襲されたりしたことが元になっている可能性もあります。

11万年ほど前の巨鳥の巣にネアンデルタール人の子供の人骨が発見されたことから、人間は鳥に食べられていた証拠は実際のところ残っています。

子供の年齢は推定で5~7歳、消化後の骨であり巨鳥に食べられていたことは疑いようがないということですが、その子供が巨鳥によってハンティングされたものか、単に子供の死体 (もしくはその一部) を持ち去って食べたものかは分かりません。

ところでこの話を聞いたら是非そのオングの棲む島に言ってみたいと思う人もきっといるはず。

その島はタホ湖のどこにあるのか?

ワショ族の伝承によれば、残念ながらその島はこの深い湖に沈んでしまったいうことです。

ですが湖底に沈んだその島には、かつてオングが生息していた痕跡が残っているそうです。

(参照サイト・文献)

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