■Amphicoelias fragillimus■
ただひとつの脊椎骨の断片でしか知られていない幻の竜脚類、アンフィコエリアス・フラギリムス (Amphicoelias fragillimus)。
恐竜界のUMA的な存在です。
不完全でありながらその脊椎骨は1.5メートルもあり、完全であれば背骨1つの大きさが2.7メートルぐらいと見積もられる超巨大恐竜です。
この骨をアンフィコエリアスと当初同科と推定されていたディプロドクス科 (diplodocid) に基づき計算したところ、全長60メートル超 (最大75メートル)、体重150トンというとんでもない数字が導き出されました。
何かの計算間違いでは?最新の科学的データに基づき計算しなおしてみては?などと思うかもしれませんが、それ以前に現物がありません。
紛失です。
発見・記載したのはオスニエル・チャールズ・マーシュ (Othniel Charles Marsh) 博士との不毛な化石戦争で知られるエドワード・ドリンカー・コープ (Edward Drinker Cope) 博士。
アンフィコエリアス・フラギリムスを知る手がかりは、コープ博士の書いた化石のメモとスケッチに頼るほかありません。
ですが手柄のためなら手段を選ばないコープ博士のこと、でたらめな記録を残したのでは?そう考える人もいます。
しかし不思議なことに、ことあるごとにコープ博士の誤りを見つけては突っ込みを入れていたマーシュ博士が、アンフィコエリアスの化石に対してはそのような事実がなかったといいます。
コープ博士 (というかアンフィコエリアス・フラギリムス) 擁護派としてはこれはポジティブな要素です。
しかし逆にそれはマーシュ博士はその化石を目にしても取るに足らないものと判断した可能性も考えられます。
つまり現物はそんなに人目を引く化石ではなかった?
古生物学者ジョン・R・フォスター (John R. Foster) 氏はコープ博士がこの化石のデータをタイプライターで打ち込む際、1050ミリを1500ミリと単純にタイプミスしたものと考えています。
またスケッチに記載の縮尺記号の間違いも指摘されており、実際には完全でも1.4メートルほどしかないのでは、という考察もあるようです。
つまり実物の化石は記載したサイズよりもずいぶんと小さかったのでは?という説が有力視されています。
コープ博士のコレクションに例の化石が見つからないのは紛失ではなく、実は記載した内容よりも実物があまりに小さすぎて気付いていないだけで、コレクションの中に埋もれているなんてこともありえるかもしれません。
そして2018年、ケネス・カーペンター (Kenneth Carpenter) 博士はアンフィコエリアス・フラギリムスはディプロドクス科ではなくレッバキサウルス科 (rebbachisaurid) の特徴が見られるとし、マラアプニサウルスという独自の属に再分類、現在ではマラアプニサウルス・フラギリムス (Maraapunisaurus fragillimus) が正式な名称です。
さらに同博士はレッバキサウルス科のリマイサウルス (Limaysaurus) でマラアプニサウルスのサイズを再考、さらにコープ博士のメモに上記のようなタイプミス・記述ミスが含まれていることを考慮し、マラアプニサウルス・フラギリムスの体長を31メートルと見積もりました。
それでも30メートル強と巨大であることは確かですが、当初の60メートルからするとずいぶんと縮んでしまいました。
いずれにしても「現物」が存在しないため、現時点ではこれらを証明する術はありません。
現実的な31メートルを信じるもよし、夢を求めて60メートルを信じるもよし。
(参照サイト)
FiveThirtyEight
(関連記事)
0 件のコメント:
コメントを投稿